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【茅ヶ崎中央病院】心臓リハビリテーションの夜明け

 去る6月23日金曜日、心臓術後リハビリを専門にしている理学療法師(PT)の徳田雅直くんに当院リハビリスタッフ40名の前で講演を行ってもらいました。
 こうした勉強会での講師経験が豊富な彼ですから、流石の語り口でした。スライドや資料も非常に充実しており、特にこれから心臓リハビリについて勉強を始めるスタッフにとっては、とても濃密な2時間だったと思います。


 ひとくちに外科手術といっても、術式ごとに特徴があります。悪性腫瘍を取り除く手術、損傷を修復する手術、失われた機能を補填する手術、美容的に外観を変更する手術など様々です。心臓手術は心臓そのものに手を加え、色々な原因で低下してしまった心臓機能を出来るだけ元通りにしようとする機能再建手術です。
 心臓血管外科は手術をする前に心不全で息が上がっていた患者さんが、ときにジャンプしながら退院することもできる魅力的な診療科です。

 心臓手術を受けた患者さんが元気になるかどうか。このことを検討するためには、大きくふたつの要素に注目する必要があります。

 ひとつは心臓手術そのもののクオリティ。手術にかかった時間や出血量など、執刀医の技量に関わる領域です。そして、もうひとつは心臓リハビリテーション。質の高い心臓外科治療を実現するためには、このふたつのどちらも欠かすことはできません。

 心臓外科手術を受けることで、患者さんの身体は少なくないダメージを受けてしまいます。手術の対象となるのは、心不全でもともと心臓の機能が低下していたり、ただでさえ高齢で体力が低下していたりする患者さんです。胸骨を切って胸を開け、ときに心臓を止めながら切った貼ったするわけですから、どうしたってすぐに元通り、というわけには行きません。

 当然、手術をする以上、外科医としては患者さんに少なくとも術前より元気になっていただくことを意図しています。弱った状態から、手術侵襲でさらに弱らせた上で、最終的には術前より元気にしてご自宅に帰っていただく。この無理難題に取り組んでいるのが、心臓外科術後のリハビリテーションです。

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 さて、徳田雅直くんに出会ったのは、東京ハートセンター(THC)に入職して間もなくのころでした。

 徳田くんは大和成和病院で多くの経験を積んだこの道のプロです。南渕先生の移籍に合わせて、THCで再結成された南渕先生のチームに加わるべく、異動してきたのです。とても気さくな人柄で、以前からの知り合いだったかのように話しかけてくれました。
 毎日の朝回診にも参加し、よく患者さんについてディスカッションをしました。生まれの年度が同じということもあり、気軽に相談に乗ってくれました。一方で徳田くんとしても、同じ理由で偉い先生方に比べて平沼は声を掛けやすかったのかもしれません。
 いずれにせよ、心臓血管外科について学び始めたばかりだった平沼は、おおいに勉強させてもらいました。

 沖縄県・大浜第一病院での心臓血管外科立ち上げに際しては、視察のときに同行してくれました。開設後も何度か来沖して、現地のリハビリスタッフに心臓術後のリハビリテーションについてアドバイスをくれました。病院主催のラジオ番組に一緒に出演したのはいい思い出です。

2014/04/18 国際通り「てんぶす那覇」にて

 その後は沖縄での生活が長くなるにつれ、中々連絡する機会が少なくなってしまってはいました。新横浜の循環器クリニックで心臓術後患者さんのリハビリテーションに取り組んでいましたが、ご家庭の事情で故郷の熊本に戻った、と人伝てに聞いたのもそうした状況の中でした。

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 ふれあいグループは医療大学や専門学校を擁していることもあり、リハビリテーションの体制はかなり充実しています。ところが、当院においては心臓リハビリテーションの経験があるスタッフは多くありません。現場のスタッフからは高いモチベーションを感じます。これは徳田くんしかいないと思い、すぐに連絡をして講演をお願いしたところ、ふたつ返事でOKしてもらえました。

 法人側に講演会の開催について伺いを立てたところ、当初はあまり前例がなく手続き上の整備が必要とのことでした。リハビリスタッフの要望の高さを伝えたところ、事務長が方々に掛け合ってくださり、この度実現に至りました。
 ひとつのことをやるにも、色々な人に助けてもらって初めて実現する、ということを強く実感した出来事でした。

 こうして、本講演によって茅ヶ崎中央病院における心臓術後リハビリテーションの幕が上がったのです。

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