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心臓手術リハビリの秘密道具(1) 「フィジオロール」

 患者さんに元気になっていただくため、「良い手術」を行うことは当然です。しかし、患者さんを元気にするのは手術だけではありません。その前後のリハビリテーションも同じくらい重要です。
 心臓手術のような比較的大がかりな手術を受けた患者さんの体は少なからずダメージを受けます。順調な回復のために、適切なリハビリが欠かせません。

 「無気肺」は術後にしばしば起こりうる合併症のひとつです。術後になるべく早く身体を起こすことは 無気肺 を予防する上で、とても重要です。
 普段、私たちは肺への空気の通り道である気道に粘液や埃が溜まると、無意識のうちに咳ばらいをするなどして、排除しています。術後の患者さんは手術のキズに響くことを嫌って、そうした行動を制限しがちになります。その結果、痰や粘液が気道に滞り、吸い込んだ空気が肺の隅々に行き渡りにくい状態になります。これが 無気肺 です。
 酸素を体内に取り込むという肺の機能が低下するとともに、そうした領域では雑菌が湧き、しばしば肺炎に進展します。術後の弱った状態で肺炎にかかってしまうと、重症化しやくなりますので、是非とも予防したい合併症です。

 そこで、重要なのが「早期離床」です。手術後はなるべく早く身体を起こすことで、痰の排泄がよくなるからです。これは無気肺や肺炎に対する最も有効な予防策となります。

 また、ベッドのフチに腰をかける「端座位」も効果的です。リハビリとして「端座位」を行うときに役立つのがギムニク社の「フィジオロール」です。

ギムニク社のウェブサイトより

フィジオロールはピーナッツあるいは鉄アレイのような形をしたバランスボールで、真ん中のくぼみのところで背中を支えると安定した端座位の保持が可能になります。
 当院では術後の患者さんにフィジオロールを使っていただき、なるべく身体を起こしておいてもらうようにしています。

フィジオロールの使い方(写真の使用にあたり、患者さんの許可を得ています)

 フィジオロールにはいくつかの種類がありますが、端座位保持のリハビリには黄色のもの(長径55cm)の大きさがベストになります。

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