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ジョナス・メカス 『リトアニアへの旅の追憶』 感想


・音 
今の時代では再現できない音質だった。
柔らかくこもるような音で、はじめは何の音なのか認識できなかったが、ピアノかオルガンの音ではないかと思った。途中から完全にピアノの音としてきこえた。
途中で少し聞こえた調律の合ってないピアノの音とときとぎ唸るような不均衡な大きさの音も相まって時代の空気感を感じた。
第2部までは繰り返される主題(ここでいう主題というのはクラシック音楽の用語を指す)のような単一のピアノ(あるいはオルガン)のメロディーか、少数の楽器のアンサンブル(子供たちがその場で演奏)、民謡のような歌(農作業しながら大人たちが歌ってた)、メカスの語りなどといった音がきこえてきた。暮らしは農村、自給自足の生活
第3部(ハムブルク郊外、エルムスホルン)からはオーケストラと讃美歌、途中でメカスの語りなどといったように前半と比べて明らかに音の厚みが変わって驚いた。(はじめはその形態からオペラかと思ったが途中の歌詞で”アヴェ・マリア"という単語が聞こえたため讃美歌ではないかと判断した)
暮らしは近代的、都市部の生活
第3部は映し出される映像も音楽も宗教的な雰囲気だった
・フィルム 質感が柔らかく立体的
手を伸ばせば肌に触れそうなくらい
映し出される自然の風景などからミレーの絵画やモネ、フィルメールなどの絵画を想起した 油画的な質感や色味もあるかも?
その当時の画家たちは本当に目の前に広がる景色を絵に起こしていたのだと感じた(なぜそれらを描いたのか確信がもてなかったため。カメラの客観性みたいなもの、事実が確かにそこにあったのだという信頼感があった)

全体的に時代の空気感がそのまま現代の会場で息を吹き返しているように感じた。
音と映像が同期していないことにより独特の時間軸の流れで進んでいた。
劇映画ではなくこのようなインディペンデント映画を鑑賞するとき、映画を通して自分を見つめ直す時間になる。かといって画面に集中していないというわけではなく、話の流れや場面や音は頭の中に記憶されていくが、それとは別の思考が絶えず動いていて、商業映画にはあまりないある種の余白ようなものがそうさせるのだと思う。今回の上映ではそれが特に顕著で、数多の思考の流れとともに映像が進んでいった。

芸術作品の「本物」である確からしさはどこからきているのか気になった。

2024.02.23
S.Hanatsuki 


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