『未来』2024年6月号詠草
『未来』2024年6月号
氷点下また戻りくる三月にみずうみまで、とUberに告ぐ
推理小説の結末だけを思いだす地下鉄、地上に出る瞬間に ※ミステリー
これほどに水族館を求めつつあなたは青い傘をたたんだ
ハンカチを開いてはまた折りたたむ海を言葉に閉じ込められず
うつつにも伝えたサルバドール・ダリ、そのやわらかな時計のことを
白鳥を生み出せそうにひらめいてあなたのうつくしい箸づかい
角ざとう紅茶に落とし訥々と起こらなかった不幸を言った
花嵐あかるく筆者の死をもって未完のままに終わる小説
霧深い朝は続いてそれぞれに覚える長い明晰夢のこと
船のように近づく春よ方形の皿にはパンとひかりを乗せて