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『未来』2024年8月号詠草

『未来』2024年8月号詠草
踏まれては朽ちる花びら ほんとうを告げたとしても後悔のなか
海中の深くに沈みゆくほどの眠けのなかに過ごす春の日
“住む”よりも“棲む”が似合えりサラダ菜を木皿に盛って暮らすふたりの
くちびるを呼ぶかたちしてうす紅の躑躅は朝の庭にたゆたう
膝の上きみが広げるナフキンにたちまちひらく菜の花ばたけ
昨日からギャング映画を生きている冷めたキッシュにフォークを刺して
後ろ手に髪を結うとき流星は朝のつめたい海へと落ちる
水を含む髪の重さよ一瞬のめまいを花の嵐と喩え
観覧車ふうわりと立つひと日ごとみどり深まる五月の庭に
森で暮らす その一生を思いつつ花の紅茶をゆっくり淹れる

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