ゲームの音楽に惚れた作品の話:2作品目 世界樹の迷宮V 長き神話の果て
どうも、S(h)inと申します。
この記事は、私が「音楽に惚れ込んでから買ったゲーム」について話していくものです。2作品目は「世界樹の迷宮V 長き神話の果て」です。
1.作品の概要
このゲームは少々ゲームに詳しい人ならご存じの株式会社アトラスが作ってます「世界樹の迷宮シリーズ」の5作品目です。
本シリーズはどの作品も「世界樹」という謎多き存在に体当たりで挑むコマンドバトル型RPGです。プレイヤーは世界樹へ向かう前にギルドで冒険者の登録、もといキャラ作成を行って今後の探索を行う探索するパーティを編成します。迷宮は3Dダンジョンで描画され、プレイヤーはこれを3DSの下画面でマッピングして進みます。様々な危機を乗り越え、世界樹の先にある何かを探すという部分までがワンセットです。
こうやって書き連ねるだけだと普通のRPGのように聞こえるのですが、実際はとても人を選ぶゲームだと思います。「面白いからやってみようぜ!」などと気軽に言えるゲームではありません。私はとても言いたいのですが。
では本シリーズにおける「人を選ぶ要素」とは何か、このゲームの音楽の前に本シリーズ特有の癖についてお話いたします。
2.世界樹シリーズの「癖」
2.1.キャラメイク
世界樹シリーズの特徴の1つ目は「キャラメイクできる」という部分です。キャラクターの名前と職業&外見の設定をする行為ですね。この作品はあなたが作ったキャラクターでロールプレイ(役割を演じること)を行い、楽しむゲームなのです。
自分の好みにキャラを作れますから、自分の脳内設定をガンガンに盛り込んでパーティを組めます。自分の理想を詰め込んだ1人とその仲間を理想的な異性で固めてもいいですし、好きなアニメキャラの再現キャラを作ってもOKです。これを凝ってやりこむと迷宮探索の前に3時間とか溶かすことになりますが。
なお、キャラクターデザインは日向悠二氏です。日向氏が描いたキャラクターのイラストから自分のパーティメンバーを構成することとなります。かわいらしい絵柄も多いのですが、マッチョがすごい主張をしてたり、歴戦の老兵的なイラストもあるのでお好みでチョイスしてください。本作ではキャラクターにケモノ要素もあるので刺さる人には刺さるかもしれません。
そして、キャラ作成の後の探索ではさまざまな選択が発生します。「なんか高いところに光るものを見たから探ってみないか?」とか「広くて休憩できそうなスペースがあるから休んでみない?」などです。そのたびにキャラクターの心情を加味して決断を行うのも一つの楽しみです。「高いところへ手を伸ばしてでも探してみよう」や「奇襲があるかもしれないから休憩は避けよう」という風に単純な損得以外で選ぶ選択は冒険を楽しくするでしょう。
この要素上記のように評価点でもあるのですが、逆に言えば作品内での「主人公やその仲間」がプレイヤー間で固定されていないので「あのキャラのこのシーンが好き」みたいなものが生まれにくいです。NPCがそういう場面を作ってくれますが、あまり期待はしないほうがいいでしょう。誰かの物語をなぞるのではなく、あなたの物語として楽しむことが肝心です。
2.2.マッピング
世界樹シリーズの特徴の2つ目は「マッピングを行いダンジョンを進む」という部分です。DSの上画面で3Dマップを視認し、下画面のタッチ機能を使ってマップを書いていくというこのシステムは本シリーズの醍醐味といえます。
マッピングを行っている下画面(1)
このシステムは非常に重要です。例えば、本システムの戦闘は基本ランダムエンカウントですが、フィールド上を歩き回る敵である「F.O.E」というものは例外で、接触すると戦闘になります。このF.O.Eとの戦闘を避けるにはその歩行ルートを観察して堅実にメモを取ることが重要です。この時マッピング機能が生かされるのです。これを繰り返すことで「自分だけのダンジョン攻略マップ」を作成することも本シリーズの楽しみの1つなのです。
ですが、このシステムは思いっきり賛否が分かれます。もっぱら「めんどくさい」という否定意見があるからです。まぁ基本的に壁に線を引き、床に色を塗る作業を続けるわけですし、単純にRPGやりたいという部分をメインに据えたプレイヤーからは嫌われるかもしれません。幸い新しめの作品にはオートマッピングシステムが搭載されているのでこれを利用する手もあります。まぁ既存プレイヤーからは「タコ焼き頼んでタコ抜いてもらう」くらいのシステムなどと言われていますが、選択は人それぞれだと思います。
2.3.戦闘の難易度
世界樹シリーズの特徴の3つ目は「戦闘における高い難易度」です。もう、なんというか高いですし、なんなら唐突な理不尽が襲ってきたりして奇声を上げることもしばしばです。
本作はのバトルシステムはコマンド選択式のターン性です。つまり「ポケモン」や「ドラクエ」といった作品と広いくくりでは同じです。ただ大きくちがうのがその難易度です。例えば通常戦闘に入ったとき、ポケモンならとりあえず適当な攻撃技を選びますし、ドラクエなら通常攻撃を選択して様子見をする感じだと思います。ですが、本シリーズは違います。普通に通常戦闘で全滅します。
どのように難易度が高いかといいますと、
・通常攻撃で沈まないのは当たり前なくらい敵が固い
・属性耐性を見抜かないと突破が難しい
・敵の攻撃の一発が重い
・倒された時に発動する効果でこちらを削っていく
・毒のダメージ1回で体力の5割持っていかれる
などの要素が豊富に存在する感じで、枚挙に暇がありません。なお今挙げた要素は本当に一部にすぎません。つまり、通常戦闘の一手一手に熟考を要求されます。そしてキャラクター達も初戦闘から使えるスキルを駆使して戦わねばなりませんから、すぐガス欠に陥ります。そして拠点に撤退し、回復してからまた迷宮に挑むのです。
このように気が抜ける戦闘がないことが大きな特徴であり、難点です。前述したように難しい、というより理不尽が飛んでくることもあります。これに対して悔しい!もう一回!となるか、ならないかが分岐点だと思います。ゲームになっている以上、攻略する方法があるのですから、そこを探るのが楽しく感じることができる人におすすめです。
3.本シリーズの音楽面
少々ゲーム面の説明が長くなってしまいました。続いて音楽面の話です。本シリーズのBGMを担当していらっしゃる方は古代祐三氏です。ゲーム音楽に詳しい人でないと知らないかぁと思われます。
手がけた作品のなかでも有名なものは1990年発売の「アクトレイザー」です。本作品の音楽は「FFシリーズ」の音楽を担当しておられる植松伸夫氏が大きな影響を受け、制作終盤のFF4のサウンドドライバーを作り直すほどだったといいます。
などとご説明しても、ぴんと来ない方はいらっしゃると思います。そこでわかりやすい例でご説明しますと、「大乱闘スマッシュブラザーズ for NINTENDO 3DS」に収録されました『戦闘!トレーナー(ポケットモンスター X・Y)』のアレンジを担当された方です。この曲は当時話題になったゲッコウガ参戦のPVにおいて流れていたので聞き覚えがある人も多いのではないでしょうか。現在の最新作「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」でも聴くことが可能ですので是非。
このアレンジでは、まず原曲に比べ1ループが長くなっています。そのため原曲にあるフレーズを何度も使用しているのですが、その使い方がとてもうまいのです。特に原曲における1ループ分が終わった部分で、曲を終わらせずに展開をしつつ、オリジナルフレーズを混ぜてもう一度盛り上げているところが素晴らしいです。そして実際のループに差し掛かる部分で溜めに溜めてからイントロに戻ります。とってもかっこいいですね。
この曲でもわかるのですが古代氏の楽曲はとてもループが美しいです。そもそもループという概念自体ゲーム音楽特有のものであり、それを生かした音楽を作ってくださるのが古代氏です。わかりやすい例を挙げますと「世界樹の迷宮IV 伝承の巨神」の戦闘曲『戦場 双眸爛爛と』では、世界樹シリーズでもかつてないインパクトのイントロが流れます。デン!デン!デン!デン!としか呼称しようのないイントロです。それ以降も戦闘の危険性をにおわせる曲調で、緊張感を煽りに煽ってからイントロに戻るのです。デン!デン!デン!デン!
また古代氏の楽曲はゲームとのマッチ具合が素晴らしいです。「世界樹の迷宮II 諸王の聖杯」の『迷宮IV 桜ノ立橋』は名前に違わず桜が舞い散る迷宮を進みます。このイントロがとても美しい。桜吹雪をイメージしたとされていますが、完璧ですね。曲全体としても、桜の温かみやその迷宮を踏みしめて進みゆく情景を浮かばせます。
このような音楽面の話を方々で聞いていたため、私はかねてから「世界樹シリーズをやりたいな」と思っていました。そこで、当時の最新作であるVを購入し、初めての世界樹ライフを開始したのです。
4.実際にプレイして聴いた曲の感想
実際にゲーム内で聴いてみましたところ「このゲームの曲、無限に聴けるな!」という感想を抱きました。
まずダンジョン曲ですが、そのほとんどがとっても落ち着く。特に『迷宮III 晦冥ノ墓所』はギターがしんみりと鳴くかっこいい曲で、すごい哀愁を感じてお気に入りです。曲名にある通り迷宮は墓所で、全体的に暗い場所ですがこの曲のおかげで暗くなり過ぎず、探索していくモチベーションが保たれます。でも第三階層の「首刈りの断罪者」は絶対許さない。
加えて、『迷宮V 円環ノ原生林』もかなりよかったです。終盤の迷宮の曲ですが、物語の核心に触れるような迷宮内で流れる音楽であり、それにマッチした静けさを備えた曲です。マップ自体の構造もギミックが多く長く滞在するだけあってよく聴く曲ですが、まったく飽きません。確認してみれば1ループが5分でした。これだけ作りこまれていることに感謝です。
続いて戦闘曲についてです。そもそも本作では通常戦闘曲において「通常時」「先制時」「奇襲時」の3パターンがあり、通常時以外は曲の開始前にフレーズが追加されているという特徴があります。これによって何度も聴く戦闘曲も新鮮に味わえます。
そんな通常戦闘曲でよかったと感じたのは「戦場 明日を掴むは死闘の先」です。ゲームの後半戦に差し掛かると聴くことができる曲ですが、これがとてもかっこいい。前半戦よりギターが強めに効いた曲調で盛り上がりますし、1度目のサビが終わったタイミングでソロパートまで用意されています。初めて聴いたときとてもテンションが上がったと同時にパーティが半壊した思い出があります。そして、先制時には「場は整った、戦闘開始!」といったフレーズが、奇襲時には「ギターによる咆哮」のようなフレーズが追加され一層没入感を増してくれます。
また、クリア後ダンジョンの通常戦闘曲「戦場 刀光剣影」もかなり好みです。変拍子でかつギターがばりっばりに活躍する曲で、戦闘が危険であることをわからせてくれますし、実際にこの階層の敵は理不尽の塊です。ラスボスを倒し「もう敵はないのでは?」というプレイヤーをこの曲をバックにした通常戦闘が一発で打ち砕いてくれます。でもそれらを攻略するのが楽しいのでOKです。特にこの曲は敵に先制時を追加フレーズが「ギターによるサイレン」となっており、プレイヤーが「先制取られた、終わった…」と思ったところに届く救急車じみており素晴らしい絶望感を与えてくれます。
そして、ボス戦闘曲の「戦場 空は鳴り、地は裂けて」もとても好きです。イントロに響く低音が敵の壮大さを引き立てますし、じっくりと進む曲調の途中に管楽器が戦闘の激しさを表すようにテンポを上げてくるのにはグッときました。そして盛り上がったのち少し落ち着いてから尊大なイントロに戻るのはもう天才としか言いようがないですね。普通のゲームではそんなに聴く機会のないボス戦の曲ですが、本作ではリトライのためにいっぱい聴くことができます。そして飽きないからすごい。
5.まとめ
総評として「めっちゃいい曲が聴けるし楽しかったが、絶対に人を選ぶ」といった感じです。繰り返しですがこのゲームシリーズは簡単に全滅できます。それに耐えられる人、むしろ楽しめる人に適正があると思います。私自身は「世界樹V」をやってみて十分楽しめました。初めてプレイした世界樹ですが、ちゃんと裏ボスの討伐までやりこんだくらいです。今でも数々の全滅劇が思い返せます。
本シリーズは試行錯誤のゲームなのです。ですが、アクションやシューティングなどにも試行錯誤の要素はあります。私はそれらがあまり得意ではないためにハマった感じがあります。自分の作ったパーティで挑戦して、だめなら対策を考え挑む。毎回の戦闘が爆弾処理のようなものです。そのスリルがたまらなく楽しいのです。
ですが、本作が初世界樹というのはやや難しいかと思います。既プレイヤーさんからは「世界樹のIVがおすすめ」とされていますので、クリアまで行きたいのであればそちらをお勧めします。気になる方はとりあえず体験版をやってみるというのも手かと思います。
前回の作品とは打って変わって万人受けではないゲームだとは思いますが、そういうゲームにこそ、まだ見ぬ名曲があるやもしれません。そう思って飛び込んでみることで、ゲーム音楽の見分を広めるのもいいことだと思います。
今回は作品の紹介というよりシリーズの説明になってしまった気もしますが、ここまで読んでいただきありがとうございました。また次回お会いいたしましょう。
画像出典
(見出し画像)
世界樹の迷宮Ⅴ 長き神話の果て | ニンテンドー3DS | 任天堂
https://www.nintendo.co.jp/titles/50010000040860 (2019/11/03閲覧)
(1)System丨世界樹の迷宮V 長き神話の果て - 公式サイト
http://sq-atlus.jp/sq5/system/ (2019/11/03閲覧)