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止まらぬ円安、イタリアで感じた円の弱さ

2024年春ごろ、イタリアに旅行に行った時に感じたことを綴っていく。


美食の国イタリア

ピッツァ、パスタ、肉、海鮮、そしておいしいエスプレッソ....
イタリアといえばヨーロッパで1番料理が美味しい国。
私はフィレンツェとローマに約1週間ほど旅行に行った。ダヴィンチやミケランジェロが生きた中世イタリアの街並みや、映画テルマエ•ロマエで見たような古代ローマ帝国の面影を残す風景を観ながら想いに耽る。そしてもちろん、お楽しみはグルメである。

トリュフカルボナーラ(一皿約3400円)
カフェにある四角い形のピッツァ(1きれ700円くらい)

うまい!!
さすが本場イタリア。何を食べてもうまい。
日本でも馴染みのあるカルボナーラ、マルゲリータなどの味も、本場で食べると一味違う。
チーズの濃厚さやトマトの風味が濃い気がする。
「こういうのでいいんだよ〜」と脳内で某孤独の中年サラリーマンの声が響いていた。

フィレンツェ名物のビステッカという料理も良かった。イタリア語でBisteccaというと英語のSteak(ステーキ)と同じ意味だが、イタリア風Tボーンステーキといった感じのメニューだ。
芸術の街として知られるフィレンツェで伝統的に愛されている肉料理。

ビステッカ•アッラ•フィオレンティーナ(約10000円!)

日本では脂がたっぷりのったジューシーな肉が良しとされる風潮があるが、このビステッカは赤身が強く、歯応えのある食感だった。肉肉しいという表現がピッタリで、噛めば噛むほど肉の旨みが染み出してきた。味付けはシンプルな岩塩とオリーブオイルというのも良かった。

イタリアレストラン全てに言えることだが、大体全てボリュームが多い。一皿頼むと2〜3人前必ず出てくる。外食は1人ではなく数人でするのが普通、ということだろうか?大飯食いの私にとっては最高だったが。

そんな感じでイタリアングルメに舌鼓を打ちながら1週間を過ごした。そしてふとお財布をのぞくと、そこには驚くべき光景が。

なんか金足りなくね?

お金が減ってる。
スリにやられたのか?と思うくらいユーロの札が減っている。せっかくのヨーロッパだしちょっと贅沢しようと、行きしな結構な額を換金しておいたにも関わらずだ。

私が行った時の為替レートは1ユーロ=169円程の時だ。1999年にユーロという通貨が作られてからユーロ/円のレートが史上最高値を更新して突き抜けようとしている時だった。つまりめちゃくちゃ円安ということだ。(2025年2月現在は1ユーロ=159円程)

日本円の価値はこんなに低いのかというくらい、あっという間に現金不足になってしまった。
イタリアをはじめヨーロッパはコロナ禍以降のインフレに加えてウクライナ•ロシアの戦争が長引き、ただでさえ物価が高止まりしているのに加えてこの円安攻撃ときたもんだ。日本人にとってみたらとんでもない事態だ。

イタリアの街を歩き、買い物をしながら気付かされた。円は弱いと。ハァ...ひもじい。かつての円高に悩んでいた日本はどこへ行ってしまったのか?

ただ、今回はフィレンツェとローマという首都,観光地の旅だった。当然、現地の食事やお土産品などは観光地価格で高めに設定されていたかもしれない。イタリア人たちはこんな高いレストランには普段来ないのかもしれない。イタリア人は普段どんな生活をしているんだろうか?そんな疑問が湧き起こって来た。

日本では賃金が上がらない、若い労働力がない、高齢化などが社会問題だが、イタリアは実際どうなんだろうか?そこで、旅行から帰って実際に調べてみることにした。

イタリア人のお財布事情調査

まず、イタリア人の平均年収はISTATの2023年度の報告によれば約27000ユーロ。
1ユーロ=169円とすると大体年収456万円というところ。それに対して日本人は2023年の国税庁の報告によると約460万円だという。
※参考URL:https://www.istat.it/wp-content/uploads/2024/10/INCOME-AND-LIVING-CONDITIONS-2023.pdf

…あれ?あんまり変わらないのか。
むしろ日本の方がちょっと高い?
物価が高い国は年収も高いイメージだったがそんなこともないのか。他にも色々と調べてみたら、意外な事実が判明してきた。

  • 2023年度のデータでは、イタリアの人口の22.8%が貧困状態にある。

  • 平均年収は増加しているが、インフレ率を考慮した実質賃金は2023年時点で-2.1%とマイナスである。

  • 前年比物価上昇率(CPI)は2022年8.74%、2023年5.9%、2024年1.27%。

  • 年収27000ユーロ以下の世帯が大多数を占める。

  • イタリアの南北で賃金や失業率の格差があり、南の方が貧困率が高いという。これは、北部のミラノなどは経済都市として発展し工業化が進んで豊かになったが南部のナポリなどは観光業などに依存していて工業化が遅れているためだという。

  • 30歳以上で親と実家暮らしをしている成人の数はイタリアが最も多い(経済と関係あるのかは不明)

なるほど、日本も大変だけどイタリアもいろいろ大変そうだ。隣の芝は青く見えるが、どの国にも悩み事はあるものだ。

収入が日本並みだとしたら、この高い物価の中でどうやって暮らしているのだろうか。イタリアではないが、ヨーロッパに住む私の知人に聞いたところ、一般市民はまずほとんど外食しないとのことだ。通勤の時にカフェでエスプレッソと甘い菓子パンをかじるくらいで、観光地のレストランにいるのはだいたい観光客らしい。

そうか...
みんな節約してるのか。
日本人だけが苦しいわけではないということが分かって、少し安心(?)した。

それでも、円は弱かった

にしてもだ。海外旅行で音速で所持金が消えていくのは辛い。円は今どれくらい弱いのか、通貨強弱チャートを見てみた。以下のチャートはFX LABOというアプリで見れる、他通貨に対する通貨の変動率を表したものだ。日本円はJPY(水色)。

アプリ "FX LABO"より

ゲレンデみたいな下り坂の日本円。
この近年の弱すぎる円の動きは一体なんだろうか?
どうすれば止められるのだろうか?

このまま日本円が最弱通貨になり続ければ、
再びフィレンツェでビステッカを食べることができなくなるかもしれない。心配で和食しか喉を通らない。

通貨の強弱を決めるのは、主には国の中央銀行の政策金利だ。日本の場合は日銀がその手綱を握っているが、この円安を作っている原因はどうやら日銀の政策だけではないようだ。

だいぶ底が深いようなので、それに関してはまた今度考察していこうと思う。

またイタリアにいって舌鼓を打てる日が来ますようにと祈りを捧げておく。

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