考察『明日カノ』萌編〜わきまえる女と搾取〜

2022年も色んなエンタメ作品を鑑賞しましたが特に印象に残った漫画『明日、私は誰かのカノジョ』


明日、私は誰かのカノジョ

パパ活女子、整形依存、ホスト、風俗、バンギャ、スピリチュアルにハマる人…


複数の女性が代わる代わる主人公になって物語が展開される「明日カノ」。  

特に印象に残っているのは、女子大生がホストに嵌り、ジワジワと搾取されていく様子を描いた「萌編」だ。

以下、ややネタバレのあらすじと感想です!




"わきまえる女“萌

大学生の「萌」は自分のルックスにちょっとコンプレックスを持っている女の子。そのコンプレックスが、自身のファッションや振る舞い、特に恋愛相手との接し方などに大きく影響を及ぼしている。

同級生・リナのようにキラキラした女の子らしい人を見ると劣等感を刺激される。内心では卑屈になりながらも、仲間内では何事もないようサッパリと振る舞っている。

自分は”わきまえてる女”だからって…


心の隙間をジワジワ侵食するホスト

そんな彼女でも魔が刺してしまう時がある。

ある日、仲間との飲み会で孤独を感じて、店からひとり飛び出していく萌


そんな時、タイミングよく連絡してきたのがホストの楓だ(このタイミングがまた絶妙)

この出来事をきっかけに、ホストの楓は萌の心の隙間に入り込み、次第に萌はホストに夢中になっていく。


店での会計額も徐々に増えていき、萌は遂に風俗で働くことに。

夜の店で働くために「自分には似合わない」と思っていた女の子らしい派手なメイクやファッションでイメチェンすると、「自分じゃないみたい…」と目を潤ませて感激する萌。皮肉というか何というか、色々と考えさせられてしまう…

もうひとりの主人公「ゆあてゃ」と仲良くなり、ゆあてゃの担当ホストも交えて4人で店外Wデートするシーンも印象的だった。

あの時の萌とゆあてゃは本当に幸せそうでキラキラしていた。

あくまで仕事の楓とハルキに対して、萌とゆあてゃだけが、あの場を心から楽しんで確かに通じ合っていたと思う。


しかし、楓のバースデー当日に事態は急変。


些細なきっかけで「自分は大勢いる客のひとりに過ぎないんだ」と目を覚ました萌。


バースデーをすっぽかし、楓のために使う予定だった数百万単位のお金も、とある別のことに使われる。(この伏線回収もスッキリ!)


華やかな成功の裏で誰かが泣いてる

ホスト通いと風俗を辞め、新たな道へと踏みだした萌は、ラストシーンで1台の宣伝トラックとすれ違う。そのトラックには楓の顔写真と「売上No. 1!」の文字が。

"わかりやすく華やかに見える成功は、実は誰かの搾取をもとに作られているのではないか"

そんなことを考えさせられるラストだった。


明日カノ考察・感想まとめ

刺激的な展開にハラハラしながらも「でも、きっと大丈夫だろう」という安心感を持ちながら読み進められる、不思議な作品『明日カノ』。

何故かというと『明日カノ』の主人公たちはみんな、根っこに芯の強さや優しさ、思いやりを持ち合わせているから。

自分や他人の欲望、見栄、プライド、ルッキズム…

(そして、マジョリティ男性の加害への無自覚、狡さ。風俗などの性産業をトップで束ねているのも男性だ。自分の手は汚さずに一番儲けている人がいる)


様々な事情に引き裂かれながらも、ラストは収まるところに収まる納得の着地点。


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