男闘呼組 「男闘呼組」に見る、80年代後半の"作曲家が作ったロック"の特徴
昨年2022年に"29年ぶり"の復活を果たしたジャニーズ事務所のロックバンド「男闘呼組」。
メンバーは成田昭次さん(Gt)、高橋和也さん(Ba)、岡本健一さん(Gt)、前田耕陽さん(Key)の4名です。
そんな「男闘呼組」の楽曲ですが、アルバムの曲はシングルの曲に比べて結構ハードロックに近かったり、色んなジャンルに挑戦されていたりします。
また、後期になるとメンバーの自作曲が増えてきますが、初期のアルバム曲は全て"作曲家さんの手によるもの"です。
今回の記事では、男闘呼組の1stアルバム「男闘呼組」をもとに、
・近い時期のロックとの比較も交えた
"初期の男闘呼組の音楽性"
・80年代後半の作曲家さんの作ったロックの特徴
について書いていこうと思います!
男闘呼組 「男闘呼組」 全曲レビュー
①OVERTURE〜ルート・17
馬飼野康二さんがシンセで制作されたフューチャー感のあるOVERTUNEから疾走感のあるルート・17に切り替わります。8ビートにドラムに激しい刻みギターのリフが絡むハードロックナンバーです。
男闘呼組の映画「ロックよ、静かに流れよ」の挿入歌でもあります。
②別離のハイウェイ
爽やかであり、情熱的なミディアムバラードです。コードが少し洋楽っぽさがあります。
"80年代後半感のあるクリーンギターの音色"が良いですね。僕もこの頃に発売されたマルチエフェクターを持っているのですが、こんな感じのクリーンの音色がたくさん収録されています。
③RUN RUNAWAY
またしても疾走感のある刻みロックギター主体のロックナンバーなのですが、曲の展開や合間のキーボードソロはポップスを感じますね。
この曲は掛け合いやコーラスがある分複数人ボーカルがいないと雰囲気が出ないと思います。
④KIDS
岡本健一さんのソロ曲。
イントロがフューチャーシンセから始まるなど、少し空間系サウンドを得意とする90年代V系バンド感のある始まり方をします。
テンポがゆっくりなミディアムロックナンバーなのですが、曲全体のリフがかなりディープ・パープル等のU.K.のバンドの影響を受けている気がします。
ギターソロ前の掛け合いのパートはもろU.K.ロックですね。
⑤この夜にすべてを
爽やかで軽やかな音色によるロックナンバー。
"歌謡曲的なコード"や"シンセを中心とした全体楽器のポップなサウンド作り"、"爽やかな曲調"からして、このアルバムで一番ポップな曲だと思います。
それでいてちゃんとR&R感を感じます。
リードギターのフレーズがクセになりますね。
⑥ROLLIN' IN THE DARK
成田昭次さんのソロ曲。
この曲も「ロックよ、静かに流れよ」の挿入歌です。
疾走感があり、激しいロック曲です。
ずっと疾走する感じではなく、サビで一旦落ち着くのがカッコイイですね。
僕的には楽器のリフや曲調がANTHEMやDEAD ENDなどの影響をかなり受けているように思えますね。特にギターのリフは顕著です。
「このあたりのハードロックとかジャパメタを研究して制作された曲なのかなー」と思います。
⑦CARRY ON
前田耕陽さんのソロ曲。
唯一ディスコサウンドな曲なのですが、ちゃんとバンドで演奏出来る感じの曲です。
LIVEでも踊らずにしっかり演奏しています。
耕陽さんがキーボーディストだからこういう曲になったのでしょうか?
打ち込みシンセを中心としたダンサブルなサウンドなのですが、歌声が情熱であり、かつギターソロとかは凄いロックですね。
恐らくこの時期(ラビリンスとかに出演されてた頃の)のデヴィッド・ボウイさんなどの影響をかなり受けて制作されたように感じます。
⑧明日への暴走
テンポがゆっくりのミディアムロックです。
この時代でサビから曲が始まるという構成はなかなか珍しいです。
この曲もギター主体ですが、曲を通してタイトなドラムが目立っていて、Bメロは歌とキーボードが際立って立っているように感じます。
ギターソロもかっこいいです。
「♪CAN YOU TAKE CHANCE〜」というサビのフレーズが凄い耳に残りますね。
僕的には馬飼野さんが"この曲のコンセプトをもとに、もっと売れるように曲調を練り直した曲"が代表曲となる「TIME ZONE」なのではないかと思います。
⑨MEN'S BUGI
高橋和也さんのソロ曲。
サウンドは80年代ロックなのですが、曲調は和也さんのルーツであるカントリー調というか、もっと言うと"ロカビリー"ですね。
ギターソロはめちゃめちゃロックのそれなのですが、曲調や曲の構成や楽器のリフ(特にバッキングとドラム)は、もろロカビリーです。
エルヴィス・プレスリーさんなどの影響を感じます。歌詞はかなりメッセージ性が高いです。
⑩不良
成田昭次さんのソロ曲。
静かながら激しいロックバラードです。反抗的な歌詞がカッコイイです。
AメロやBメロはシンセやオルガンが中心とした音数がかなり少ない構成なのですが、サビから音数が多くなりロックになります。
歌詞の内容とリンクするようにサビのドラムが暴れまくっています。
実はギターソロがめちゃめちゃU.K.ロックです。
アルバムを締めくくるのに相応しい良い曲ですね。昭次さんが今でもこの曲を好んで歌われる理由も分かります。
それでは解説に移ります!
近い時期のロックとの比較も交え、初期の男闘呼組の音楽性について考える
ここ2,3年周りには「BOØWY」「ZIGGY」「BUCK-TICK」「DEAD END」「X JAPAN(当時はX)」などのロックバンドが活躍しています。
まさにバンドブームの時期ですね。男闘呼組が世に出たのは80年代後半のバンドブームの影響も勿論あると思います。
①初期の男闘呼組の音楽の特徴
初期の男闘呼組の音楽の特徴をまとめてみたのがこちらになります。
・歌詞や歌声がロック
・他のロックバンドと比較して「キーボード」のサウンドが大きく出ている
・コードが歌謡曲に近い
・刻みギター主体のサウンド
・メンバー全員が歌うために全員でのコーラスワークが行われている (ソロ曲でもある)
・疾走感あるロック曲はちゃんとロック
・ディスコやロカビリーもロックに昇華している
それらを歌とサウンドに分けて解説していきますね。
・歌や歌詞について
歌に関してはリードボーカルの和也さんと昭次さんを中心にロックな歌声で歌われています。
またジャニーズ事務所のグループなので、"バンドでありながらメンバー全員が歌う必要性"があったのか、
他のロックバンドと比べてメンバー全員での掛け合いやコーラスワークをかなり行っています。
これはほぼ全ての曲で行われていて、ソロ曲でも行われています。
この点はグループ・サウンズっぽいですね。
歌詞の傾向は「R&R!」という感じで同時期のZIGGYなどに近いですね。
メッセージ性があり反抗的な歌詞は尾崎豊さんなどにも近いと思います。
・サウンドについて
サウンドの最大の特徴としては、「他のロックバンドと比べてキーボードのサウンドが全面に出ていること」ですね。
また、サウンドはロックなのですが、コードが歌謡曲っぽいです。それはBOØWYなどもそうなのですが、その方がキャッチーでヒットしやすいのかもしれません。
加えて、殆どが"刻みギターによるリフが主体の楽曲"で、近い時期の"HR/HMの影響"を感じますね。
HR/HM調で疾走感のある楽曲は結構しっかりロックしています。
また、ディスコやロカビリーといった"ロックとは違うジャンルの音楽"もサウンドやリフを工夫してロックに昇華していたりします。
これは当時としては斬新だと思います。
※HR/HMバンドがダンス調のロックナンバーを作るというのは今は結構あることで、X JAPANも「Rockster」というダンス調の曲を制作していたり、それこそTHE LAST ROCKSTARSのデビュー曲はガッツリダンス調ですね。
②"作曲家さんたちが作ったロック"とは
この時期の男闘呼組の楽曲を作曲編曲されているのは、ポップスやアイドルソングやアニメソングといったジャンルで"職業作曲家"として活動されている方々です。
ほとんどが日本人の作曲家さんによる作品ですが、外国人の作曲家さんによる作品もあります。
恐らく、職業作曲家の方々が
"近い時期のロックを吸収して、自分たちなりにアウトプットしたもの"
が男闘呼組の曲になっているんですね。
そのため、リフなどは当時のHR/HMっぽいですが、キャッチーにするためにコードを歌謡曲っぽくしたり、キーボードが全面に出ていたりするのだと思います。
キーボードに関しては、耕陽さんというキーボード担当のメンバーがいることに加えて、
作曲家さんがロック曲を制作していて、なおかつ売るためにキャッチーにするには必要だったのかもしれません。
※しかし耕陽さんは当時楽器が弾けず、設定上は何でもよかったためキーボードを担当することになったそうです。
"ディスコやロカビリーなどのジャンルをロックに昇華出来る"ことに関しても、音楽のボキャブラリーが豊富な作曲家さんが曲を制作しているからこそ出来ることだと思います。
編曲者を比較してみると、
戸塚修さんが編曲された曲は、"かなりリフや曲調が当時のHR/HMっぽい"ですが、
馬飼野康二さんが編曲された曲は"シンセを多用する傾向があり、音作りもポップス寄り"ですね。
そのため"幅広いロックな曲"が収録されているのだと思います。
まとめ
・初期の男闘呼組の音楽性は"ロック"かどうか
結論から言うと、"ロック"だと思います。
アルバムのHR/HM調の曲はしっかりロックですし、"色んなジャンルをロックに昇華するという試み"もロックだと思います。
当時は"ロックじゃない"と言われていたかもしれませんが、ロックの多様性が進んでいる現代においては"最高にロック"だと思います!
この1stアルバム「男闘呼組」はリイシューされてほしい1枚です!
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