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僕が高校の文化祭で鋼メンタルになった話

みなさんこんにちは。突然ですが、前回の記事で自分がかなり硬いメンタルの持ち主だということを話したが、鋼メンタルになる方法を知っているだろうか。
今回は僕が鋼メンタルを手にいれざるを得なかったエピソードを紹介したいと思う。

時は2014年の秋、当時僕は高校生で文化祭のシーズンだった。うちの高校は男子校だったため、文化祭といえば学校に女子が来ると言う一大イベントであった。そして文化祭といえば出し物である。うちのクラスは当時どんなノリで決まったかは覚えていないが、なぜか桃太郎の劇をやろうということになった、普通にやるのではしょうもないので、セットも一から作り、ストーリーを書ける奴が上手いオリジナルストーリーを作ってかなりそれっぽく。劇となると重要なのは配役だ、クラスのひょうきんものや陽キャ達が桃太郎や鬼などの主要キャストを埋めていくなか、キジが余った。確かにキジという生き物は桃太郎に出てくる生き物の中で一番イメージがなく、情報としても「ケーン」と鳴くこと以外有名なものがない。そしてその白羽の矢が立ったのが僕だった。当時クラスではいじられキャラ的な立ち位置だったため、半ば押し付けられる形で、僕は劇の主要キャストとなった。

ただ個人的にそれは対して苦ではなかった。目立つことは好きだったし、舞台に立ってなにかやることにもある程度経験はあったため、「まぁやるかー」くらいの気分だった。

ただそんな自分の甘い考えはすぐになくなった。それは衣装合わせの日のことだ。衣装合わせと言っても小道具係がドンキで300円くらいで買ってきたであろう衣装を渡すだけのものなのだが、そこで僕は戦慄した。桃太郎役にはドンキクオリティの立派な陣羽織とハチマキ、鬼役には赤の全身タイツとトイレットペーパーの芯かなにかを工作した角、犬役には茶色の全身タイツと犬のお面などそれらの役にふさわしい衣装が渡されていくなか、キジ役の僕に手渡されたものは紫の全身タイツとパーティーなどで使うモールだった。

ツッコミどころは無限だった。「キジは紫ではないだろ」「このモールの使いどころはどこ?」「そもそも鳥のアイデンティティーたる羽根は?」など考えればいくらでも出てくる。衣装係に聞いても「ドンキにこれしかなかった」の一点張りで明確な理由はでなかったので僕も追及を諦めた。いじられキャラだった俺への遊び半分のいじりなのか、ほんとにこれ以上にキジらしいものがなかったのかはわからないが、とにかくこうして本来の桃太郎には出てくるはずもない「紫色のUMA」が爆誕した。

ちなみに余談だが、衣装の中のモールは練習中にアクションやお供3匹の見せ場である「名乗りからの組体操」の場面で邪魔だという理由からなかったことになりいよいよ僕は「ただの紫色の全身タイツを来た人」に成り下がった。

クラスは大爆笑だった。謎の紫全身タイツを着て演技をしていること、明らかにキジではないそのフォルム、笑わない要素がない。僕も最初は恥ずかしかったし、これで不特定多数の前に立つのが怖かった。

しかし、人間の適応力とは恐ろしいもので練習を続けるうちに恥ずかしさなどはとうに消えた。そして、クラスもその紫色のUMAを見慣れてしまい、その見た目を笑うものはいなくなった。あきらかに桃太郎には出てくるはずのない謎の生き物をクラス全員がキジだと信じて疑わない集団催眠状態に陥っていた。

そして本番のとうとう日を迎えた。思春期特有のやつと「とはいってもおかしいだろこの衣装」という一縷の正気から親には絶対来るなと釘を差し、きた場合には10万の罰金というわけわからない不平等条約も取り付け、準備万端だった。

本番前になっても我々は集団催眠が解けず、「全身タイツで股間膨らんだらやばくね?」なんて男子校全開の雑談で和んでいた。いざ本番、全4公演中、3公演、お客さんの入りこそ微妙だったがそれ以外すこぶるうまくいった。親も来てないし、とくに劇で問題も起こらず、「意外と余裕じゃん」そんな気分だった。

そして迎えた最終公演、お客様も今までより多く入り盛り上がっていた、しかも最前列には誰かの彼女なのかしらないが、女子高生グループが座っていた。男子校ではツチノコレベルに珍しい存在に、僕を含む男子校のサルどもは色めき、沸き立ち、張り切っていた。

そして物語はクライマックス、我々お供3匹の見せ場、「名乗りからの組体操」になり、我々は華麗に決めて見せた。
その瞬間、最前列から小さい声でボソッと女子高生の声で「あの紫キモ…」と聞こえた。一瞬脳内がバグったが、瞬時にそれがこの「紫色のUMA」に向けて発された一言だと理解した。僕の中の催眠は一瞬で吹き飛び、我々がキジだと信じて疑わないこの生物は一般の女子高生から見れば「あの紫」と解釈されるのだと理解し、とても耐えがたい恥ずかしさ、悔しさなど入り交じった気持ちになり今にも組体操が崩れそうなくらい力が入らなかった。もしここで腕を折っていれば今の僕はいなかっただろう。だが僕は耐えた。圧倒的屈辱を耐え、演技を見事にやりきった。
この時僕は悟った。今後これより恥ずかしいことなんてないだろう。俺は無敵だと。そう思うとともに僕の股間は少し膨らんでたとかいないとか。



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