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恋人と恋人の聖地へ

私には“恋人としてみたいことリスト”がある。出不精の彼と4年以上付き合っていた所為か、関西に住んでいて、一番目にリストアップされた“USJに行ってみたい”が叶わなかった可哀想なリストである。彼が“行ってみようか”とようやく心変わりした頃には、この不毛な関係を終わらせようと別れの言葉を練っていた。

先週の日曜日、恋人と和歌山にあるマリーナシティへ行ってきた。快晴。小学生の頃に一度、家族に連れられて行き、とてつもなく楽しかった思い出があった。発案者はもちろん私だ。勢い余って開園前に到着したのは良いが、園内マップを見て拍子抜けした。広大であるかのように思えた園内は狭く、試運転中のジェットコースターはとても大人が乗りたいとは思えなかった。唯一、望みのあった急流滑りのアトラクションは運行休止であったし、開園早々に飛び込んだ昆虫展の生きたカブトムシ達は、造花と共にじっとしていた。先行き不安なスタートであった。しかし、そこそこ賑わいを見せていた黒潮市場で、ホタテのバター醤油焼きを食べてようやくエンジンがかかった。

話は冒頭に戻る。私の“恋人としてみたいことリスト”に挙げていた一つがこの度のデート~マリーナシティ編~で叶ったのである。それは、恋人たちがイチャイチャしながらハートの南京錠に鍵をかけ、「またいつかここに来て開錠しようネ…」というアレである。マリーナシティに、これができる“恋人の聖地”なる場所が存在したのである!これは偶然だった。園内マップを見て発見し、恋人に猛烈に行きたいアピールをしたところ、近くにあったホテルの売店で憧れの南京錠を買ってくれた!いや、これは妄想で、実は自分で買った。1000円。南京錠の真ん中には“Syogo Kariyazaki”の文字が…。仮屋崎省吾…。ロマンチックな2人の間に割って入るかのような仮屋崎…。あと、この南京錠を開錠できる小さな鍵が二つ付いてきた。この仮屋崎南京錠を恋人の聖地にガシャンするまでが、私の理想だったが、先人の恋人たちがガシャンした錠は雨風に曝され、塗装が剥げて可哀想な姿になっていたので恋人と相談してガシャンせずに持ち帰ることにした。

夢が叶ったのは良いが、思ったより南京錠買うのって恥ずかしいんだな、としみじみと思った。今回はガシャンしていないが、もし恋人の聖地で、恋人と南京錠にマッキーで名前なんて書いたりしてウフフとか言いながら施錠していたら…その空気に私は耐えれなかっただろう。安心する反面で、この南京錠はどこにガシャンすれば良いのか。これに今、悩んでいる。どこかにガシャンして、2人で鍵を分け合うのが良いのであろうが、もし、この鍵がいつか2人が別れることになったとして、彼の足枷にならないだろうか。もし、彼に鍵を預けた時、ずぼらな彼が紛失してしまったら、私のささやかな夢を蔑ろにされたようで怒ってしまわないだろうか。そもそも、この南京錠自体が私のエゴの塊であって、恋人には何の思い入れもないのでは?だって全額、私が出してるし?と何故か悲観的な思いが止め処なく溢れてきてしまい、今は二つの鍵ごと南京錠は私が保管している。

恋人と、恋人の聖地に行って、南京錠を買う。ここまでが私の“恋人としたいことリスト”に挙げられた願いであったことにしよう。この先、南京錠に愛を誓うか、鍵を2人で分け合うかどうかは、要検討である。

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