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HTLVキャリアと告げられて
私はHTLVキャリアだ。これは、HTLV-1ウイルスを保有しているが発症はしていない人のことであり、キャリアの5〜10%が、40歳以上、多くは60〜70代で、成人T細胞白血病(ATL)を発症する。
私は、高校2年生の夏、父親から自分がHTLVキャリアであること、そして、それは母からの感染であることを告げられた。
母は小学生の頃、頭を打つ怪我をした。治療のため輸血をしたその中に、HTLV-1ウイルスが入っていたと予測されている。今でこそ輸血前にHTLVキャリアでないか確認があるものの、その当時はそれが行われていなかった。
母の怪我から数年後、HTLVキャリアの有無を、輸血で確認するようになったそうだ。
だが、母親がキャリアだからといって、子どもに感染する確率はとても低い。母乳をあげていた場合の感染率は18%程、人口ミルクだと3%程だ。
母は妊娠した際に自分がHTLVキャリアであることを知りかなりショックを受けたそうだが、母乳をあげなければほぼ子どもに感染しないことから、人口ミルクだけが救いだったそうだ。
だが私は、その3%になってしまった。
母と私がHTLVキャリアであること、輸血システムの進歩があと少しだけ早ければ防げたということ、母乳を飲んでいないのに母子感染してしまったこと、、
一気に全てを聞かされた私は、情報処理ができず、心が追いついていかなかった。重い話を聞かされているということしかわからなかった。
人口ミルクでの母子感染3%を引いた私は、5〜10%で発症するATLも患ってしまうのではないだろうか、私は子どもを産んでもよいのだろうか、そもそもこの話をどこまで重く受け止めるべきなのか、と、沢山の考えが頭をよぎった。
だが、治療法もない、発症予防もできない私は、ただ迫ってくるかどうかもわからない、発症する可能性も高くない病気を、受け入れて待つことしかできない。
両親には、
「どうせ今は発症しないんだし、一生発症しない可能性の方が高いんだし、どうでもいいよ。そんな重く捉える話じゃない」
と言っていた。
それはきっと、私に感染させてしまい責任を感じている母の気持ちと、まだ混乱してどうすれば良いのかわかっていない自分自身の気持ちをなだめるためであったと思う。
そうやって、私はHTLVキャリアとしての人生を歩み始めた。