こども本の森 中之島
アラフォー女性建築士の『さわ』です。
主に関西で住宅を設計しています。
久しぶりに建築レビュー記事なのですが・・・
実は以前にも一度記事にした、『こども本の森 中之島』です。
以前の記事はこちらです。
初めて訪れた時の記事です。
それ以降も何度か行く機会があり、さらに設計の安藤忠雄さんの講演で聞いた話もあったので改めてまとめる事にしました。
建物の概要
所在地 大阪府大阪市北区中之島1丁目1番27号
設計者 安藤忠雄
開館日 2020年7月5日
建物の構造 鉄筋コンクリート構造 地上3階建て
建物は川側が下がっているため3階建てですが入口側から見ると2階半ぐらいの高さしかありません。
入口は2階部分です。
エントランス前には安藤忠雄氏の美術館のモチーフである青りんごもあります。
建物の内部空間
何度か訪れていると気になるのが室内の高さや寸法関係です。
今回の記事では雑誌からの情報や私の間隔で高さや寸法について考えてみます。
まず入口をはいってすぐある川沿いのガラスに沿った机と椅子。
こども本の森は子供の為の図書館なので椅子と机はこどもサイズです。
お子様優先で大人もご利用できます。
この建物の最大の特徴は大階段だと思うのですが、入口からすぐには見せずにちょっと狭いなと感じる通路をぬけていく通路にちょっとしたわくわく感を感じます。
大階段に行く前にもうひとつ好きな場所が大階段の下を活用した空間です。
大階段の下の低い部分をあえてこどもの身長で楽しめる空間になっています。
体感でいうと身長155センチの私が首を曲げればぎりぎり立てるぐらいなので1300ぐらいですかね。
この低さや尾籠感はこども時代にあえて狭い場所に秘密基地をつくったりした気持ちを思い出させてくれます。
その反対側が2階3階をつなぐ大階段です。
正確な寸法は新建築2020年9月号掲載からの引用です。
講演でこの建物について安藤忠雄さんはどこでも本を読める空間を造りたかったと言っていました。
そのひとつがこの大階段です。
おとなもこどもも本を手に取ってその場にすぐ腰掛けられる階段。
1階から3階までの天井高さはこんな感じです。
3階だけ少し低く造られていますが、この吹抜けのお陰で狭くは感じません。
壁面いっぱいの本棚って本好きには憧れの空間ですが…上の方の本はどうするの??っという疑問があります。
ここは繰り返して申し上げるようにこどもの為の図書館。
ですので、5段目より上にある本は飾りで、読むように同じ本は下段に並べられています。
インテリアと実用を兼ね備えていますね。
1階には小さな部屋がふたつあります。
ひとつは円形閲覧室。
こちらも他より少し天井が低めです。
展示されている本が『生と死』に関する本なので、一人ゆっくりじっくり考えられるように造られた空間なのかなと感じています。
実はこちらの図書館は本の検索方法も特殊なのです。
図書館では本を主にジャンルで分類されていますが、分かりにくくないですか?
自分の探す本がどのジャンルなのかまず分からない事も。
こども本の森ではこどもでも分かるように分類されています。
大きなジャンルでは『動物が好きな人へ』そこからさらに猫が好きな人、犬が好きな人などと分類されていきます。
魔女の本なんていうジャンルも合ってね。
こどもが魔女について知りたかったら、魔女の小説も、漫画もこの本棚に一緒に並んでいるので興味のあることから自分が入門しやすい本を見つける事ができますね。
そしてもう一つ1階には休憩室と呼ばれる円筒の空間があります。
そこでは本の一部をプロジェクションマップングで紹介しています。
紹介している本は最後に保管場所も紹介しています。
新しい本に出会える新しい休憩室です。
建物の屋外空間
実はこの図書館の本は中之島公園内に限り屋外で読書をする事も出来ます。
これは先に書いたように安藤忠雄さんがどこでも本を読めるようにという事がこの図書館のテーマだからです。
実は数年前までこども本の森の前、中島公会堂の前から堺筋まで車道があったのです。
結構長い間、中之島公会堂の前で工事しているな~って思っていたら、いつのまにか車道が無くなっていました。
これは安藤忠雄さんが図書館の本を持って外にでて安全に本を読めるように道を無くしてよって大阪市に言ったのがきっかけだったようです。
道ってつくる事はあっても無くすって今までなかったようで大阪市で初の試みだったようです。
という話を安藤忠雄さんの講演会で大阪市長から伺う事ができました。
自転車専用通路と区画されていて歩行者専用通路は中之島公園の一部としてイベントなども行われる広場になりました。
館内の利用方法
基本的には今も事前予約システムでの予約制です。
ただし、日によってはフリー入館できる時間帯もございます。
また予約の空きがあれば当日入館できる場合もございます。
予約の混雑具合は私が初めて行った時に比べてかなり落ち着いていて、平日なら大体空きがあります。
しかし、確実なのはやはり事前予約するのがおススメです。
本を読む
ついつい建物を見に行ってしまうのですが、図書館としてゆっくり利用してみるとやはり私は建築の本の分類に惹かれますね。
気になる本棚はここですね。
その中で先日知る機会があったこの絵本を見つけました。
絵本なのだけど、建築に携わる人には読んでほしい絵本です。
孫の、さらにその孫の世代まで住める頑丈なおうちを建てるのだけど、周りの環境が変わっていくことでその世代が住むころにはちいさなおうちは街に飲み込まれそうになっていくのです。
都市開発で街が発展していくのはいい事だけではないなと思わさせられた一冊でした。
中之島公園に新しい建物が建つという事でこども本の森の建築には様々な反対意見もありました。
しかし、こども本の森の建築をきっかけに車道を無くす事ができ公園として新しく生まれ変われたのではないかと個人的には思います。
何が正解かは分かりませんが、是非この夏休みに親子で一度訪れてほしい大阪の施設です。
記事参考文献:新建築 2020年9月号
さわ。
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