映画レビュー: まだスカイツリーがない頃の東京『ロスト・イン・トランスレーション』その②
昨日書いた『ロスト・イン・トランスレーション』の感想その①のつづき。どうして約10年ぶりに観たくなったかというと……
最近の自分の「心境」と初めて映画を観た時に感じた東京の街の「印象」が交差したからだった。
まずはじめにいうと、実は最近までずっと実家に帰っていた。
緊急事態宣言が始まる前、本当に久しぶりに戻った実家に(リモートワークの恩恵を受けて)約一ヶ月滞在した。
今までならそんなことはできなかった。社会人になってから忙しない日々を過ごして、帰省といえば飛行機に乗らなきゃいけない場所なのに、滞在するのはほんの数日。
だからいつも駆け足で家族といろんな場所へ出かけては、嵐が過ぎ去るかのようにまた東京へ戻った。
でも今回は違った。ゆっくり、あたたかい時間をたくさん共有できた分、別れ際にはじんわりとした寂しさが押し寄せてきて、心の奥底に染みていった。
その感覚が昔、『ロスト・イン・トランスレーション』を観て感じたものに似ていた。もう10年ほど前なのに、その感覚は確かに私の中に残っていた。
だから帰省から帰って寂しさが募ったその日に映画を観たのだ。
観終わったころには、飛行機から降りて感じていた張り詰めた孤独は、輪郭もないあたたかな感情となって流れ始めた。
「あぁ……やっぱり東京はいいな」そう思った。
この街は孤独なのにあたたかい。
この映画は、どれだけ時間が経っても私に今もそう教えてくれる。
みんなにもどうかこの感情を味わってもらいたい。観て欲しいから全く内容を書かない謎のレビューその②になってしまったけれど、どうか繰り返し言うので観てください。
きっとみなさんが知らなかった「東京」が、たくさん詰まっているはずだから。
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