はげひげ(菊仙人)

篠原菊紀。人システム研究所長。公立諏訪東京理科大情報応用工学科教授。ここではギャンブリ…

はげひげ(菊仙人)

篠原菊紀。人システム研究所長。公立諏訪東京理科大情報応用工学科教授。ここではギャンブリング障害、ゲーミング障害、危うい遊び方について書きます。ICD-11(02/2022)で軽々に障害、依存症、および疑いは言えなくなりました。これまでの調査はおおむね「危うい遊び方」疑い調査です。

最近の記事

ギャンブリング障害の介入法に関するメタ解析で12ステップはほぼ出てこない

2023年のギャンブリング障害への介入法の効果等について、メタ解析にたる研究の質を持つ30の研究をまとめ評価した研究。 Eriksen JW, Fiskaali A, Zachariae R, Wellnitz KB, Oernboel E, Stenbro AW, Marcussen T, Petersen MW. Psychological intervention for gambling disorder: A systematic review and meta-a

    • したり顔で「それ依存症」と言いたがる人はWHOのICD-11(国際疾病分類第11版)での物質使用系と行動嗜癖系の違いくらいは理解しておきましょうね。

      たとえばアルコールではdependence(依存)がいまだに使われており、アルコール依存症の診断必須要件は以下。 以下のうち2つ以上によって示されるアルコール使用の調節障害の証拠を伴う、再発性のエピソード的または継続的なアルコール使用のパターン: アルコール使用のコントロール障害(すなわち、アルコール使用の開始、頻度、強さ、持続時間、終了、状況);健康維持、日常生活や責任など、生活の他の側面よりもアルコール使用の優先順位が高くなっており、害や否定的な結果(例えば、度重なる人間

      • ②がっかりを加味した演出設計の仕方

        高信頼度の演出では、はずれたときにガッカリします。 このガッカリ度を報酬予測によるドーパミン増分のマイナスとすれば(他の過程も可能です。最近の傾向は損失忌避性が大きいくガッカリ期比が増していると見るべきかもしれません)、演出によるドーパミン増幅とがっかりによるマイナスが計算できます。 以下の表で、ある信頼度群の大当たりに占める割合を決めると(制約はありますが)、演出全体が与えるたとえば2000回転遊技でのドーパミン比(ただのあたりを1としたときのドーパミン量)が計算できます。

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        • ①ある信頼度の演出によってドーパミンの増幅がどのくらいおきるか推定したい

           腹側被害野から側坐核を経て前頭前野に向かう報酬系(おおむねドーパミン神経系)の活動は、快感の中核であり、稼働維持にとって重要な因子になります。  この神経系の活動は予告信号の信頼度に応じて、下図のように変わります。 下のエクセル程度の計算式で、任意の信頼度でのドーパミン増幅比(ただのあたりを1とした場合の)を算出できます。 先バレやら、先読み熱、やらでは他の演出の信頼度が無視されるレベルになります。 計算できるエクセル表はこちら↓

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        ギャンブリング障害の介入法に関するメタ解析で12ステップはほぼ出てこない

          ギャンブル等依存症疑い調査での数や率、ゲーム依存症疑いの数や率は、WHOの定義から見れば、依存「症」疑いとは言えない。せいぜい、病気や障害とは言えない、危ない遊び方、の数や率です。

          WHOは2022年、ICD-11(国際疾病分類第11版)1)でgambling disorder(ギャンブリング障害、ギャンブル症)においてDiagnostic Requirements(診断必須要件)をはじめて記載し、「ギャンブリング行動のコントロールが障害されている」「ギャンブリング行動が他の生活上の出来事より優先されている」「ネガティブな事柄が続いているにもかかわらずギャンブリングが継続または拡大している」の「すべて」を満たし、かつ他の精神的な障害では説明できず、個人、

          ギャンブル等依存症疑い調査での数や率、ゲーム依存症疑いの数や率は、WHOの定義から見れば、依存「症」疑いとは言えない。せいぜい、病気や障害とは言えない、危ない遊び方、の数や率です。

          いわゆるギャンブル依存症の結果として、反社会的な行動が起きるかのように説明されるときがあるが、まあまあ共通の遺伝的脆弱性によって説明できる、という研究。

          Slutske WS, Eisen S, Xian H, True WR, Lyons MJ, Goldberg J, Tsuang M. A twin study of the association between pathological gambling and antisocial personality disorder. J Abnorm Psychol. 2001 May;110(2):297-308. doi: 10.1037//0021-843x.110.

          いわゆるギャンブル依存症の結果として、反社会的な行動が起きるかのように説明されるときがあるが、まあまあ共通の遺伝的脆弱性によって説明できる、という研究。

          スマホ依存の説明問題

           今日、テレビ局から電話があった。依存がらみなのか、スマホ依存についてドーパミン神経系から説明してくれないかという話。 「快感でドーパミンが放出されると癖になって依存する」とかいうアホっぽい説明をしてほしいらしい。 「そりゃ、無理だ」と答えた。    そもそもドーパミン神経系は、報酬に対しても活性化するが、報酬が得られそうなトリガーでも活性化する。その程度は実報酬以上になる。だから、人はドーパミンにハマるといわせたいのだろうが、ドーパミン神経は報酬予測誤差を計算する。機械

          スマホ依存の説明問題

          「(いわゆる)ギャンブル依存症」だから、・・・・という説明は、二重に間違っています。

           コロナに感染したから熱が出る、だるい、せき込む、という話と、「ギャンブル症(☆)」だからギャンブリングをやめられない、問題がおきていても続ける、という話は同じではない。  コロナ感染症は原因によって病気が定義されているが、「ギャンブル症(☆)」は状態によって定義されているだけ。だから「ギャンブル症(☆)」を原因のように語る説明は間違っている。もしそういう説明に出会ったら、「ああ、わかってないな、この人」と思えばいい。  さて、「ギャンブル症(☆)」の必須な特徴(Essent

          「(いわゆる)ギャンブル依存症」だから、・・・・という説明は、二重に間違っています。

          ゲーム障害の必須要件(ICD-11)

           ゲーム行動(「デジタルゲーム」または「ビデオゲーム」)の持続的なパターンで、主にオンライン(すなわち、インターネットまたは類似の電子ネットワーク経由)またはオフラインである可能性があり、以下のすべてによって明らかになる: ①ゲーム行動(例えば、開始、頻度、強度、継続時間、終了、文脈)の制御障害 ②ゲームが他の生活上の関心や日常活動よりも優先される程度までゲーム行動に与えられる優先度の増加 ③否定的な結果(例えば、ゲーム行動による家族の対立、学業成績の低下、健康への悪影

          ゲーム障害の必須要件(ICD-11)

          The Jonsson-Abbott Scale (JAS)のギャンブル障害予測性

          Jonsson J, Abbott MW, Sjöberg A, Carlbring P. Measuring Gambling Reinforcers, Over Consumption and Fallacies: The Psychometric Properties and Predictive Validity of the Jonsson-Abbott Scale. Front Psychol. 2017 Oct 16;8:1807. 以下がJAS (1) I

          The Jonsson-Abbott Scale (JAS)のギャンブル障害予測性

          ゲーミング障害(ゲーム行動症)のリスク要因

          Ivan Ropovik, Marcel Martončik, Peter Babinčák, Gabriel Baník, Lenka Vargová, Matúš Adamkovič, Risk and protective factors for (internet) gaming disorder: A meta-analysis of pre-COVID studies, Addictive Behaviors, Volume 139, 2023, 107590, 

          ゲーミング障害(ゲーム行動症)のリスク要因

          ギャンブリング障害(ギャンブル症)のリスク要因

          Moreira D, Azeredo A, Dias P. Risk Factors for Gambling Disorder: A Systematic Review. J Gambl Stud. 2023 Jun;39(2):483-511.から  「ギャンブル依存症は誰でもなりうる病気です」という主張がしばしば行われる。どんな病や障害も誰でもなりうるといえば、その通りなのだが、他の病気や障害と同様、いわゆるギャンブル依存症にはリスクの濃淡があることが繰り返し報告され

          ギャンブリング障害(ギャンブル症)のリスク要因

          「ゲーム行動症」も「ギャンブル症」も「こすっからしい」用語だと思っています。

          わたしは「ゲーム行動症」も「ギャンブル症」も「こすっからしい」用語だと思っています。 アメリカ精神医学会のDSM-5TRやWHOのICD-11での表現通り「ギャンブリング障害(gambling disorder)」「ゲーミング障害(gaming disorder)」が正しい。 「障害」は響きが強いから「症」で、という議論があるそうですが、少なくともICD-11での定義ではそのくらい強い用語です。 たとえばゲーム障害(gaming disorder)のICD-11での診断要件

          「ゲーム行動症」も「ギャンブル症」も「こすっからしい」用語だと思っています。

          これが2023年の記事か!唖然!PRESIDENT ONLINE 2023/08/18 17:00「パチンコ依存→借金→コンビニ強盗」という悪循環…世界でも類を見ない「ギャンブル大国・日本」という現実

          わたし、たまにPRESIDENTから取材を受ける。信頼しているメディアだが、この記事にはおどろいた。「パチンコ依存→借金→コンビニ強盗」という悪循環、と記載しながら本文にその記述はなく、あおりコピーだ。こういう議論をしたいならデータを示しつつでないと偏見(スティグマ)を生み出す。実際、このような犯罪との関連が一般以上に有意に強いことを示したデータはないはずだ。 また「世界でも類を見ない「ギャンブル大国・日本」という現実」の根拠として示した数字は以前対策会議などで参考資料として

          これが2023年の記事か!唖然!PRESIDENT ONLINE 2023/08/18 17:00「パチンコ依存→借金→コンビニ強盗」という悪循環…世界でも類を見ない「ギャンブル大国・日本」という現実

          香川、ネット・ゲーム学習シート(中学生版)について。今後、この手の学習ツールを作ろうとする場合の注意点。

          香川県では「ネット・ゲーム依存予防対策学習シート」を作って学習しているそうです。 これがそれ↓ https://www.pref.kagawa.lg.jp/kenkyoui/gimukyoiku/syokai/sonota/internet/gakusyusheet.html その中学生版を覗いてみました。 https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/17874/cyugakkou_worksheetr5.pdf まあ、批判が多かった、

          香川、ネット・ゲーム学習シート(中学生版)について。今後、この手の学習ツールを作ろうとする場合の注意点。

          いわゆる依存症、雑感

          私の立場はこれまでのいわゆるギャンブル依存症、ゲーム依存症うたがい調査は、ICD-11基準なら「障害」や「疾病」ではない「危ない遊び方」やそこにすら至らない場合を大量に含むので、「依存症」「障害」「症」を使うべきではない、というもの。 SOGSで調査すると当該行為をしている人の十数%は疑いになる。そんなのICD-11いうところのギャンブリング障害(ギャンブル症)のわけがない。疾病や障害ではない危険な遊び方すらこのうちうち。嗜癖過程をカウントするのはうまくない。 「ゲーム等

          いわゆる依存症、雑感