慢性腎臓病の治療目的
慢性腎臓病(CKD)の治療目的は、進行を抑え、末期腎不全や脳・心血管疾患の発症を防ぐことです。末期腎不全になると、腎臓の機能は失われ、それを代行する治療が必要になり、日常生活にも影響が出てきます。またCKDが進むと高血圧症が悪化することで、動脈硬化を促し、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血など命にかかわる病気の発症リスクが高まります。CKDは、知らぬ間に進行する可能性が高い病気ですが、病期(ステージ)の早いうちに治療すれば、末期腎不全に至らなくて済むでしょう。早期に発見し、早期から治療を開始することが重要で
ステージ1と2 ~早期発見で回復の余地あり
病期(ステージ)分類によると1は「腎臓に障害はあるが、働きは正常」、2は「軽度の機能低下」で、自覚症状はほとんどありませんから健康診断などで発見されることが多い段階です。しかし、回復の余地があるこの段階できちんと治療を始めることは、非常に重要です。
治療は、危険因子を減らす健康管理が基本となります。危険因子とは、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧、肥満、喫煙などであり、食事療法、特にエネルギー制限と塩分制限が重要になってきます。たんぱく尿が多い場合(目安は0.5g/日)は、たんぱく質の摂取制限も必要です。食事療法だけで改善しない場合は、薬物療法が行われ、血圧管理のための薬、脂質管理のための薬、糖尿病管理のための薬などが処方されます。以下に食事療法のポイントを紹介します。
エネルギー制限
1日の摂取エネルギーの目安は、標準体重×30~35kcal。
標準体重は、22×身長(m)×身長(m)で計算します。
肥満かどうかは、BMI(体格指数)を求めることで推測できます。その計算式は、BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))。BMIが25以上であれば、肥満ということになります。この場合は、1日の摂取エネルギーを標準体重×25kcal以下に抑えましょう。
たんぱく質制限
たんぱく質の摂り過ぎは、腎臓に負担をかけます。たんぱく尿0.5g/日なら、1日に標準体重1kgあたり0.6~0.8gになるようにします。ただ、たんぱく質摂取を制限すると、エネルギー不足になることがありますので、かかりつけの医師や栄養士に相談しながら行いましょう(前述した1日の摂取エネルギーの目安を参考)。
塩分(食塩)制限
1日の塩分摂取量の目安は6g。醤油小さじ一杯が約1g、味噌大さじ一杯が約2gになります。
漬物、塩漬け食品を控えるようにし、ラーメン、うどんなどの汁は飲み干さない、味噌汁は具だくさんにするなど、減塩を心がけましょう。高血圧の人は、特に注意が必要です。
ステージ3は、腎臓の機能が健康時に比べ半分近く低下している段階です。むくみや尿の異常、疲れやすいといった自覚症状も現れ始めます。ここからは、腎臓専門医の治療が必要となります。治療の柱は、原因疾患の治療と生活習慣の改善(食事療法を含む)、薬物治療の3つです。透析療法が必要な末期腎不全に至らないためには、ここで治療を徹底し、進行を食い止め、改善の方向へ導くことが大切です。
カリウム制限
前述のエネルギー、塩分(食塩)、たんぱく質の制限に加えてカリウムの制限が必要になってきます。ステージ3ではカリウムの排出が行われにくくなり、血液中のカリウム濃度が高くなる高カリウム血症のリスクが高まるからです。カリウムは生野菜、果物、芋類、豆類などに多く含まれているため、生野菜はゆでて食べるなどの工夫が必要です。
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