再現性危機の記事がバズっていることについて所感
以下の記事ですが、私が想像していた1000倍以上の反響をいただいています。全くの想定外です。面白かったとか、何かしら役に立ったという感想を嬉しく思っています。何かしらお役に立てたならば幸いです。
心理学・行動経済学等の著名な研究論文が次々に追試失敗【心理学】
https://note.com/s1000s/n/na0dbd2e8632d
ただし、(こんなことを書く方が失礼な気もしてしまいますが)私は知的なことに興味があるだけの学問素人です。心理学に関してもまたズブの素人なので、私の記事自体もまた批判的に読んでくださいね。
ちなみに上記記事は、以下の記事の続編として書いたものなのでした。心理学自体は構造的な問題が指摘されていたのですが、その問題を認識し、危機を乗り越えていこうとしています。科学としての立て直し運動が進んでいるんですね。この点、オカルトや疑似科学の態度とは全然違っています。
心理学は信頼できるのか? 再現性の問題【心理学】
https://note.com/s1000s/n/n535be7155581
その上で、ちょっと思った点を書いたので公開しておきます。
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再現性危機については、私のように一般書をよく読むタイプの人こそ衝撃を受けると思っている。ピンカー、サンデル、サンスティーン、アリエリー、カーネマン、ガザニガその他超一流とされている人たちのベストセラーに出てくる情報もまた問題になっているんだから。
これらの人たちの一般書は、その他の一般書でももちろん引用される。それらをもとに私たちのような素人も考えたり、情報をまとめたり、人に伝えたりする。心理学の専門家(の多く)が思っているよりも研究は一人歩きしているのではないかなぁと思う。
発信した情報を制御することは難しい。この点は私も今回痛感したところ。私は科学としての心理学についても人文学としての心理学についても必要派なので、心理学への単なる悪口を誘発した様をみると「悪いことしたなー」とは感じる。全然知らんけど、ラカンとかだって良いとこあると信じているし。
もちろん、記事はこうすればよかったかなという反省点はあるけれども(後知恵バイアス?)、公開しない方がよかったとは思えないなぁと。多くの人は心理学という学問自体は今後も必要だと考えるだろうし、そういう反応もしっかりある。そして、研究を信頼している側の心苦しさというのもあるのだ。
メモをとりながら読んだレインやマーシュの本も、念のために記事にするのはやめた。私が前に紹介したニスベットやポラスの本とかも何とも言えないんだろう。記事はとりさげていないが、ちょっと後ろめたい。学問はそんなものだと思う反面、ズーンとする心理は何だろう(やっぱり心理学自体は必要だ)。
本を批判的に読むのは当たり前ではある。でも肩書の立派な専門家が書いて、同業も褒めていて、翻訳までされて、ベストセラーになっていて、別分野の本でも引用されている本を素人が批判的に読むと言うのは正直難しい。記事でとりあげた研究に関しても、私は鵜呑みにして色々力説していた時期もある。
そんな状況で、たまたま心理学のちゃんとした教科書を読んで、「再現性の危機」が深刻なのを知った。怪しいのはごく一部の研究だけだと思っていたのに、そうでもないのだ。そして疑義が呈されている有名研究がまとまっている日本語の記事は見当たらなかった。あったのかもしれないけれど。