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【ゲームレビュー】ゼルダの伝説 夢を見る島

『ゼルダの伝説 夢をみる島』Switch版というゲームをやりました。

一言で表すなら「素敵」である。小学生時代の隠れていた気持ちが戻ってきた。

だってゲームボーイ時代にやってたのはこれだよこれ。

だいぶ進化したよね。嬉しい。

ざっくり書くとこんな感じ

コホリントというこぢんまりとした島で展開するこの冒険は、可愛らしいキャラクターや摩訶不思議なイベントで彩られている。常にピュアで美しく、ときとして滑稽だったり、ちょっぴりえっちだったり、人間味溢れるキャラクターとそのウィットに富んだ台詞回しがまた面白い。

そもそもこの作品って

これは1993年の、それもゲームボーイ向けに作られたゲームのリメイクだ。もちろん、ビジュアルとサウンドは一段と「素敵」になっている。任天堂が『ヨッシークラフトワールド』で用い、来年発売の『あつまれ どうぶつの森』でも使われるのと似た、まるで粘土やおもちゃのようなビジュアルは、僕が想像していた以上に2Dゼルダとの相性が良かった。

やってみて

ゲームの世界を俯瞰視点でプレイしていると、まるでジオラマを見下ろしているような気がするのである。床や木などに反射する光がいかにもおもちゃっぽい質感を表現しており、巧妙に取り入れられたぼかしのエフェクトがそんな世界に臨場感をもたらす。カラフルな色合いのフィールド、空を舞う青い蝶々、敵まで大きな目の愛くるしいキャラクター……すぐにこの「夢のような世界」の虜になった。リンクが勇者の目をしていないことなど、いざゲームを始めるとまったく気にならない。

ゲームはプレイしている間、フルオーケストラによって奏でられる音楽にも癒やされた。ダンジョンの中であってもどことなく優しいその音色は常にプレイヤーを応援してくれるようであった。冒険をスタートするメーベの村のほのぼのとした曲から、言葉をしゃべる動物たちが住まう「どうぶつ村」のちょっと滑稽な曲まで、各々のロケーションにぴったりマッチした曲選びも素晴らしい。もちろん、本作のヒロインであるマリンの素敵な歌声も忘れてはならない。彼女が「どうぶつ村」を訪れて動物たちに歌を聴かせる光景に思わず見とれてしまい、しばらく動物たちと一緒に聴き入ってしまった。なんて素敵なゲームだ。あ、ちなみにBGMは下に。


何かが閃いたときや謎が解いたときなどのゼルダらしい効果音も健在で、これらも音色がより温もりのあるものにアレンジされている。まるで自分でからくりのおもちゃを動かして、何かがカチッとはまったような音だ。要するに、電子的な感じがしない、手作り感のある音だ。この音が病みつきで小学生時代からどハマりしていた記憶がある。

『夢をみる島』はSwitchに登場した2本目のゼルダだが、『ブレス オブ ザ ワイルド』とは対照的なゲームと言える。後者はすべてにおいて「ゼルダの当たり前」を見直し、革新的なアイディアの数々でゲーム業界全体に大きな影響を与えたと言えるだろう。対する『夢をみる島』は良くも悪くも90年代のゲームであり、極めてクラシックなゼルダとなっている。Switch版はそのビジュアルやサウンドこそ新しいが、根本となるゲーム体験は26年前とほとんど同じである。

良くも悪くも90年代のゲームで、極めてクラシックなゼルダ。
だからこそ、こんなにも面白いことが不思議と言えるかもしれない。確かに、『夢をみる島』に革新はない(期待した方がおかしい)が、謎解きのデザインの秀逸さや、ゲーム全体のバランスの良さは脱帽ものである。

画像1

もちろん、細かいところではいろいろと改善もされている。ボタンが2つしかないゲームボーイ版では頻繁にスタートボタンから装備するアイテムを切り替える必要があったが、Switch版では剣や盾を常備しており、他のアイテムをXとYボタンに割り当てられる。重いものを持てるようになるパワフルブレスレットや、ダッシュができるようになるペガサスブーツといったアイテムは、一度入手してから装備する必要がなく、常に使える仕様に変わっている。

50個も隠されている「ヒミツの貝ガラ」が近くにあると反応する「貝がらセンサー」のおかげで、これらを探すのもより快適な体験となった。

フィールドはスクリーンごとにスクロールするのではなく、リンクが歩くとリアルタイムで少しずつスクロールするようになり、このおかげでコホリント島はより一体感のあるフィールになっている。ダンジョンでは基本的に部屋ごとにスクロールする仕組みだが、ここもより広い部屋では自動的にスクロールしている。


『ブレス オブ ザ ワイルド』の広いオープンワールドにおいて、リンクはすべての山を登ることができ、そこからパラセールで飛び降り、他にも様々な能力を活かして、移動そのものが謎解きと言えた。まったく違ったスケールとプレイスタイルで、『夢をみる島』もまた、移動が謎解きそのものとなる。コホリントの狭いマップはコンパクトにデザインされており、プレイヤーは常に「どうしたらここへ行けるだろうか?」という疑問を持ちながら探索し、様々なことを試みる。ダンジョンなどで入手したアイテムを活用して、進めなかったエリアへ移動できるようになると、メトロイドヴァニアと似たような達成感を味わう。

踏んでいないマスが1つもないような気がしてくるくらいの密度。
メインクエストはもちろん、「ハートのかけら」や「ヒミツの貝がら」を始めとした隠し要素がマップの全体に散らばっている。行き止まりだと思っていた狭い通路や入り江を渡る橋の下まで、必ず何かが隠されている。ゲームをクリアして、すべての隠し要素を集めた頃、踏んでいないマスが1つもないような気がしてくるくらいの密度だ。極めて狭いフィールドをここまで作り込む職人芸はオープンワールドとはまた違う意味で凄味を感じさせる。

フィールドやダンジョンを探索していると、ときどきストレスを覚えるのも事実だ。90年代のゲームは、良くも悪くも最近のゲームほどプレイヤーを誘導してくれない。ときどき、次に進むべき場所へたどり着く方法がわからなくて困ることもあるだろう。ダンジョン内では、1つ見落としているものがあると何度も同じルートを辿ることになる。フィールドもダンジョンも広い作りではないので、よく見てはいろんな方法をしらみつぶしに試せばなんとかなるものだが、あまり手を貸さないデザインは現代において人を選びそうだ。幸い、各地にある電話ボックスで「うるりらじいさん」と会話をすれば、何かしらヒントをくれる。恥ずかしがりやのおじいさんは、直接会いに行っても何も教えてくれないのだが、電話ではおしゃべりになる。彼との会話が面白く、私は進むべき道がわかっていてもついつい電話したくなった。そう、『夢をみる島』はヒントシステムまで「素敵」なのだ。

『夢をみる島』はヒントシステムまで「素敵」

さらに、冒険を進める過程で聞いた大事な話はメニューでいつでも聞きなおせるという現代的な親切設計も加わっているので、迷子になりやすいプレイヤーでも――攻略を見たいという衝動に駆られることがあっても――ゲーム内の機能でなんとかなるはずだ。

『夢をみる島』ならではの特徴としては、ときどき2Dスクロールの場面がある点が挙げられる。ここでプレイヤーは2Dマリオを彷彿とさせるようなプレイスタイルで攻略し、なんとクリボーが登場するのである! マリオにおけるクリボーとは微妙にデザインが異なり、大きな目と妙な笑顔を浮かべているあたりも原作に忠実だ。

本作には他にもマリオから借りたキャラクターが複数登場する。逆に言えば「ゼルダの伝説」シリーズを代表する多くの要素が欠如している。ゼルダ姫もガノンもいないし、マスターソードもなければそもそもゲームの舞台もハイラルではない。

最後に、Switch版で新たに追加された「パネルダンジョン」にも触れておかねばならない。訪れたダンジョンの部屋は「パネル」として記録され、物語の途中から「ダンペイの小屋」でこれらを組み合わせて自分のダンジョンを作ることができる。「マリオメーカーならぬゼルダメーカーの誕生か?」と僕は期待していたが、残念ながら極めてクリエイティビティを発揮しにくいデザインとなっている。集めたパネルを繋げるだけで、変更を加えることがまったくできないからだ。細かくデザインできるようにするとマリオメーカーよりもはるかにハードルが高くなってしまうのはわかるが、せめて部屋における敵や宝箱の配置くらいは変えられるようにしてほしいし、上下左右のどこに通路があるのかも変更できるようになればもう少し自分でデザインしている感覚になれそうだ。現状では、ダンジョンを作ったとしても自分で意図したデザインになることはまずなく、ほとんど偶然の産物に近い。パネルダンジョンはAmiiboでしか他のプレイヤーとシェアできないようだが、そもそもあまりシェアしたくならないはずだ。
「パネルダンジョン」はさておき、『夢をみる島』は90年代のゲームデザインが現代でも通用し得ることを示し、魅力あふれる世界観もさらに強化された。約20時間でクリアできる程よいバランスいい作品でした。

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長所

おそらく過去にやった人でも飽きない。思い出してやりたくなる綺麗さ。 サクサクプレイで、オートセーブなので移動時間中でも全然気軽にプレ可

短所

フレームレートが不安定
「パネルダンジョン」が面白くない

総評


『ゼルダの伝説 夢をみる島』の儚い物語と素敵な世界観が強化されたのはもちろん、26年前とほとんど変わらないゲームデザインまで「素敵」と来ている。恋に落ちること間違いなし。

暇あればぜひ買ってみて。

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