Melted in carotenosis(オレンジに溶けて)
「居てもいなくても同じでしょう?」
僕なりの、反撃だった。
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一つ上の千早先輩が再従姉妹だと知ったのは
高校に入学してから直ぐで、同級生にはあのバスケ部の美人と親戚だなんてと羨ましがられて、なんだか鼻が高かった。
彼女は僕に対していつも長女らしく偉そうで、だけど姉ちゃんとはまた違った「女の子」だった。
僕にとっては、ずっと「特別」だったけど
僕が「一番」になれないのは分かっていた。
ちーちゃんの隣にはいつも、かっこいい誰かがいたし
僕は踏み込めない枠の外側で、いつまで経っても「まーちゃん」だった。
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『だらけてしまうからこたつは置かない』と
人の家で寛ぐ冬休みの終わり
彼女が好きだと言ったから用意したミカンを
剥いてあげながら、
カウントダウンだのスノボだの
楽しい思い出を聞いていた。
「まーちゃんも行けたらよかったのに」食べ過ぎて黄色くなった顔で彼女が言う。
なんだか腹が立って『どうせ居てもいなくても同じでしょう?』と口にした。
彼女は少し驚いた後
いつもの、悪い顔をした。
「同じじゃないけど、付き合う?」
呆気に取られて、気恥ずかしくて袖で口覆おう。
「千早って呼んでみてよ」
枠を越えたのは彼女だった。
視界がオレンジに染まった。