Being mixed with carbonic acid (炭酸に紛れて)
明るく染めた髪がふわふわ揺れる。
留学先の語学学校で出会った彼は、四つも下なのに私をちゃん付けで呼ぶ。
どうして仲良くなったかはもう忘れてしまったけれど、出会った時から「さなちゃん」だったし「こうちゃん」だった。
私は数少ないクラスメイト相手にこっ酷く玉砕し、彼は元カノを引き摺っていた。
何となく気が合って、時々一緒にいた。
空き時間寂れた売店の前で、キャップを回す。
「泣いてるか勉強してるかどっちかじゃん」
ーーだって悔しいじゃない。失恋して成績も下がるなんて。
言わない代わりに、ボトルを差し出す。
彼は毎日飲み会に遊びに旅行と忙しそうだ。
ーーのくせに成績が良いのはなんなの。
結局開けられなかった炭酸を交換してきた彼がまた問う。
「本当にいいの?」
「‥‥‥良いわけじゃないけど」
ベンチテーブルの上で小指が触れる
「行きたいとことかあるでしょ」
遠出も映画も海も見ていなかった。
「一緒に行かなくていいの?」
熱を持った肩が暑くて、眩暈がしそうだ。