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情報系学科(+大学院)では何をやっているのか? ~自分の場合~

技術系のアウトプットが今週はできないので(現在勉強している本が読み終わっていない),今回はこのようなタイトルで記事を書いていきたいと思います.

なぜ書くのか?

背景について書きます.自分は2020年にとある大学の情報系学科の大学院を卒業しており,現在はIT企業に勤務しております.つい最近まで次の新卒採用の選考の一部に携わる機会があったのですが,社内に僕と同じような情報系学科出身のエンジニアがおらず,採用に関わっている社員の方々も情報系学科のことについてほとんど知らなかったため,今回の採用活動はかなり難航しました.情報系学科はIT業界ととても近い関係にあるため,エンジニアの採用にあたって,情報系学科がどのような学科なのかを知ることはとても重要だと思います.以上の背景から,一ケースではありますが,自分の実体験に基づいて情報系学科の実態について紹介したいと思います.

対象の読者

・エンジニアの採用を検討しているが情報系学科について詳しくない方
・大学,あるいは大学院の情報系学科への進学を検討しているが情報系学科について詳しくない方

注意書き

あくまで自分の出身の大学,大学院における実体験のお話ですので,他の大学や大学院で必ずしも同じとは限りません.

国内の情報系学科のある大学

まず,いわゆる情報系学科のある大学が国内にどれほどあるのかを見てみましょう.

以上のリンクは情報処理学会(IPSJ)で集計したデータですが,思った以上にたくさんあります.これに関しては自分も知らなかったです.

情報系学科の種類

上で紹介したIPSJで集計したデータをご覧になればお分かりいただけるかもしれませんが,単に「情報系」といっても,とても幅が広い分野になっています.個人的なグループ分けをすると以下のようになります(結構雑です😅).

工学部寄りの情報系
情報系というとこのグループが一番しっくりとくるかもしれません.ソフト~ハードまで幅広い領域を触っているイメージです.ガッツリ理系.

メディア,デザイン寄りの情報系
エンジニアリングというよりも,情報技術をメディアやデザインの領域にどのように活用するかといった分野に重きを置いているイメージです.私立や専門学校の印象が強いです.

その他の情報系
工学部寄りの情報系に比べると,そこまで深く情報技術そのものには触れません.情報技術を使って課題を解決する点に重きを置いている印象です.メディア,デザイン寄りの情報系よりもビジネスによった領域や,広義のコンピュータサイエンスを扱っている印象です.広く浅く扱うので文系理系混在といったところでしょうか.ちなみに自分の出身はこちらに属します.

情報系学科の大学の活動内容+α(自分の場合)

まずは学部生の時に自分がどのような活動を行なっていたのかを紹介します.

扱う学術領域
世の中に存在する様々な「情報」に関する学術領域を幅広く扱います.
以下,覚えている範囲で紹介(自分が全て履修したわけではありません)
・プログラミング: 超初歩的なプログラミング入門から,プログラミング言語論まで
・入門レベルのコンピュータサイエンス: コンピュータの仕組みやネットワークについて基礎的な内容を一通り学ぶ.基本情報以上応用情報未満くらいの内容
・人工知能入門: 昨今のコンピュータサイエンスの主役である人工知能について,技術的な内容ではなく,理論的な内容について学ぶ
・UI/UX : 認知心理学的な側面からUI/UX,インターフェースなどについて学ぶ
・認知心理学,脳科学: 人工知能に関する研究の発展の背景には認知心理学や脳科学の分野があるので,その勉強
・経営,経済,金融: FINTECをはじめとするビジネスでの情報技術の発展を学ぶにあたって,基礎的な関連知識を学ぶ
・数学: 高校数学に毛の生えたレベルの内容から,線形代数,離散数学,微積など
・統計学: データサイエンスを支える基本的な統計学入門
・その他: 他の学部でもあるであろう基本的な内容.レポートや論文を正しく書くための日本語入門,英語,その他外国語,など

技術系の活動
以下では,講義の一環で行った技術系の活動について紹介します.つまり,僕と同じ学科に入った場合は,以下のことは個人の活動に関係なく必ず行なうことになります.
・タイピング: タイピングの試験がありました.エンジニア生命がかかっているので仕方ないですね😅
・プログラミング入門: とても基礎的な文法の話.スクラッチもどきから始まり,最後にはJavaを講義で扱いました.
・開発実践: 個人で何かプログラムを作ったり,グループで何かプログラムを作ったりしました.
・DB入門: SQLなどの言語よりも,ER図などのDB設計について重きを置いて学習しました.
・その他: HTML, CSS, R, Excel VBAはかなり軽く触った.

講義以外の活動(学部全体の雰囲気)
以下では,自分の出身の学部全体の雰囲気について紹介します.自分から見えている範囲の世界なので,全体ではどうなのかはわかりません笑
・全体の数割は工業高校,商業高校でプログラミングをガッツリやってきている
・一方で,自分のようにタイピングすらまともにできない人もたくさん入学してくる
・男女比は6:4くらい
・文系出身も理系出身もいる
・イケイケな感じの普通の大学生もたくさんいるし,オタクっぽい大学生もたくさんいる
・履修選択可能な科目がたくさんあるので,とてつもなく忙しそうな学生もいれば,殆んど苦しむことなく楽々卒業する学生もいる
・みんながみんなプログラミングが趣味なわけでもなく,卒業したときにエンジニアにならない人もいる

情報系学科の大学院の活動内容+α(自分の場合)

次に,自分の大学院での活動内容について書きます.ちなみに同じ大学の内部進学になります.

扱う学術領域
学部の時と変わらず,「情報」に関する学問を広く扱います.ただし,学部の時よりも多少深くなります.また,大学院の講義では,講義を担当する教授の方々がご自身で研究していらっしゃる分野の紹介や持論の紹介が強めになるので,まさに「大学」といった感じです.
以下,少し変わり種
・憲法,法律関連: 昨今情報社会は一気に発展しているため,情報に関する法制度が追いついていない場合がある.中でも学術的にインパクトのあった判例を扱ったり,それ対する考察を行った
・量子力学: 量子コンピュータを勉強するための数学や量子物理学.数学に弱いとほとんど意味がわからない
・ビジネス関連: 今で言うところのDXのような,既存のビジネスの課題を解決するために情報技術を組みこんで成功した事例についての解説
・論文誌の輪読: 自分の所属している研究室では扱っていない学術領域の論文を読むので,結構新鮮だし難しい

技術系の活動
大学院まで来ると,大学の講義の時間を使ってプログラミングや開発を行うことはほとんどありませんでした.一部の学生は,ハードウェアを使った実験を行っていたくらいでしょうか.大学院に進学したときには,すでにどこかの研究室に配属されているので,そこで技術的な活動を行うといった形になります.

研究室の活動
学部生とは異なり,大学院では研究室に配属されるので,研究室での活動というものがあります.というかこれが大半を占めます.以下,自分の研究室で行っていた内容です.
・ゼミ: 形式はいろいろあると思いますが,自分の研究室では何か課題が課されるわけではなく,適当なタイミングで学会に論文を提出するので,論文の内容に関する議論がほとんどでした
・研究: 各々が研究テーマを持っているので,各々が学会に提出する論文を書くための研究を行います.
・実験: 自分の研究室では実験ありきの論文が多かったので,自分でプログラムを作成して実験をしていました.

大学院の雰囲気
以下では自分の大学院の雰囲気について紹介します.
・男女比は9:1くらい
・大学院まで行こうと思う人はそれなりに意識があるので,技術力もそこそこある
・みんな研究室に配属されているので,講義以外では研究室以外の学生と会うことがほとんどなくなる
・学部生ほどワイワイしていない.少し落ち着いている感じ?
・研究室によって雰囲気が全然違うので,楽しそうな人もいれば,毎週のゼミが大変すぎて苦しそうな人もいる
・長期インターンでいなくなったり,自分で会社を立ち上げたり,原因不明の失踪を遂げる人もちらほらいる
・修士論文は卒業論文の何倍も大変(博士論文に比べたら全然大したことないが).ゼミでの議論中に掲げていた研究テーマが消滅することもある.
・ゼミがあるものの,講義の数もかなり減るので,自由な時間はある.
・2年生になると,研究に加えて就活用に技術力を上げようと勉強し始める人が一気に増える.

まとめ

思った以上に長くなったのでまとめます.

・情報系学科は種類が多いので,何寄りの情報系学科なのかは結構重要.同じ情報系学科だと思って話しかけたら,話が全く通じなかった,なんてことも珍しくないので注意.

・情報系学科だからといって,みんながみんなプログラミングをゴリゴリ書けるわけでもないし,パソコンに詳しいわけではない.そうは言うが,最低限のコンピュータサイエンスに関する知識やプログラミングの基本文法については必ず学ばなくてはならないので,そのレベルの保証はできる.

・情報系学科の大学院に進学する人は少なくない.学部生より多少意識が高いので,自分で技術力を上げる人も少なくない.

最後に

「情報系学科出身なんだからプログラミングは当然できて,関連知識も豊富なすごい人なんだろう」というのはいくらなんでも過大評価ですが,「実態がよくわからないから」という理由で他の学科と同じ程度にしか参考にしていないのはとてももったいないと思います.この記事を読んで,少しでも情報系学科の実態やスキルレベルなどの感覚を把握する参考になればと思います😁

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