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『シルクロード旅行記』カザフスタンからローマまで6,000キロを歩く旅#03

2019年の記憶をたどりながらまとめているシルクロード歩き旅。
アルマトイから出発し、キルギス首都ビシュケクを目指して歩いています。

サンダルと擦れる部分をテーピング。これをしておかないと、指とサンダルのゴムが擦れ続けて、皮膚が薄くなり血で滲んでいく….。

風のように追い越す車を横目に、黙々と歩き続けた。

草と空とアスファルト以外なんにもない道だから、車はもの凄い速さで駆け抜ける。ビリビリと体に響くほどの騒音と、背中を押ような突風が体を包み込む。後ろからぶつかれたらあっという間だと思う。

カザフスタンの大草原と万年雪の積もる山脈群。

歩いているとたくさんの人が「乗っていけ」と声をかけてくれる。
通り過ぎても、わざわざ車をバックして声をかけてくれたりする。

車には乗らないと断ると、呆れる人もいれば同情してパンや水を分けてくれる人もいた。

僕にとって車というのは移動のツールでなく、たとえば怪我をして歩けなくなった時とか、食べ物や水を切らしてしまった時の、いざという時の助け船だ。だからどんなに暑くても疲れていても、いざという時では無いから乗る気にはならなかった。
 
『シルクロードに沿ってローマまで六〇〇〇キロ歩く』というのは、考え方次第ではとても楽な旅だと思う。水も食べ物も無しで歩くわけじゃないし、人もアスファルトもまったく無いような荒野をさまようわけでもない。

何日か歩けば水や食べ物が手に入るし、いざとなれば走る車に助けてもらえる環境である。暑いし体は痛いし、野宿で過ごす夜は安心して眠れないけけど、それさえ我慢できれば大変なことでもない。毎日ただ足を動かせばいいのだ。

通りすがりの村で見たゲル(遊牧民の伝統的な移動式住居)。
『歩き旅』と『仕事』って似ているような。足を使うのか頭を使うかの違いなのかも。

そんなことを自分に言い聞かせながら、初日は十二時間歩き通した。

地図を見ると、アルマトイから四〇キロも進んでいる。徒歩で半日、車ならたったの三〇分で着く距離だ。

どこまでも変わらない景色。たまに馬に乗った羊飼いが通り過ぎていく。

陽が落ち始めると、道路を離れた茂みにテントを立てた。夜の九時だというのに空が明るい。夏のカザフスタンは九時になっても夕方で、十時になってやっと陽が落ちる。

人生初の海外野宿は、道路の脇の原っぱで。


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