特殊相対論と一般相対論について
さて,ノーベル物理学賞が発表されましたね。今年は物性(化学寄りの物理)からの受賞が予想されていましたが,なんと大穴,宇宙や素粒子の研究で活用されている,「一般相対性理論」に関する受賞でした。
相対性理論と言えば,アニメ「ご注文はうさぎですか??」にて,ココアちゃんたちが「特殊と一般なら特殊の方が好きだなぁ」などと発言していたのを覚えている人もいるのではないでしょうか。この二つ,いったい何が違うのでしょうか。そもそも,好き・嫌いで論じられるものなのでしょうか。
まず,相対性理論について簡単に説明しましょう。読み飛ばしても構いません。
例えば,止まっている自分と,50km/h≒14m/sで進む車があるとします。このとき,3km先のスカイツリーを見るとしましょう。
もちろん,自分から見た位置は,x=3000mです。
車から見た位置は,車が毎秒14mだけスカイツリーに近づいているため,t秒後では,x'=3000-14t mです。例えば,100秒後では,x'=2860mですね。
実は,これは厳密に言うと間違っています。
自分から見た位置はx=3000mで間違いありません。
しかし,車から見た位置は,車の速さvを光の速さcとした,
を使って,
となるのです。例えば,100秒後ではx'=2,860.000000000003...です。ほんの少しですがズレています。
この意味を理解するには,時間の方を見るのがいいでしょう。
実は,車に乗っている人と自分とでは時間の進み方が違っています。例えば,車が自分より1000m先にいる場合では,
となります。自分からとって100秒後は,車にとってはt'=99.99999999999995...とやはり少しずれています。
これについては,宇宙船で地球の周りをぐるぐる回ると寿命が延びるという話が有名です。
この例は,時間と位置(長さ)に実質的な違いがないこと,つまり,この世界は時間も含めて4次元であることを意味しています。
ここまでの話を詳しく知りたい方は「特殊相対論」で検索するといいでしょう。私もnoteを上げています。
この世界は時間も含めた4次元ですから,x,y,zを奥行の位置,横の位置,高さの位置として,今まで三平方の定理で求めていた,
のような距離は,時間が入っていないので,おかしいということになります。では,この"距離"に,時間tはどのように入ってくるのでしょうか。
答えは,光の速さcを使って,
のように書きます。(符号を全て逆に取る流派もあります。)
負の数になることもあるので,もはやこれのルートを取るのはあまり望ましくありません。
これは,
として,
のように書けます。添え字を上につけたのは,"反変成分"という意味ですが,ここで説明するには長すぎるので割愛します。
本題に入りましょう,特殊相対論と一般相対論は何が違うのでしょうか。
そもそも,学問における"特殊"というのは,特別という意味です。これだけ聞くと,特殊相対論の方が難しそう,かっこいいというイメージが湧くかもしれませんが,それは間違いです。特別というのは,特別な場合のみに"条件を絞った"という意味です。例えば比例は1次関数の特別な場合ですし、反比例は分数関数の特別な場合です。
特殊相対論は,"重力がない場合"のみに限った特別な場合です。
つまり,特殊相対論では重力が扱えないのです。その分,重力を考える必要がなく,簡単になっています。
特殊相対論は一般相対論のほんの一部に過ぎないということです。これは好き・嫌いどうこう言う話ではなく,重力も含めた一般相対論ではどうしても難しかったので,特殊相対論で重力を無視した場合を勉強するということなのです。
重力の影響は,先ほどお話ししたg_00,g_11,g_22,g_33(本当はg_12などもあったりしますが、ここでは割愛します。)に出ます。
特殊相対論では,先ほどお話ししたように,1,-1,-1,-1といった簡単な形をしています。
重力がある場合は,重力のもとがどんな形か,どこにあるかなどによってとてもたくさんの変数が各"g"(添え字は省略した)の中に入ります。具体的に言うと,自転しているブラックホールのようなものでは,d^2を書くと2行に渡ってしまいます。(興味がある人は「カー解」などで調べるとds^2などとして書かれている場合が多いかと思います。)
これは,重力が"空間を歪める"からです。各"g"の形は,空間の性質を表しているのです。特殊相対論の1,-1,-1,-1の場合は空間が一切歪んでいない場合で,ミンコフスキー空間と呼ばれます。
以前にノーベル賞を受賞した,「重力波」というのは,質量のある物体が動くことにより,この歪みが波となって伝わったものです。
実は,我々も空間を歪めたり,重力波を出しているのです。とても小さくて無いに等しいですが。
ちなみに,今回ノーベル賞を受賞したペンローズさんはブラックホールの研究などをしている方です。ブラックホールというのは,光に反応しない,質量の塊です。その質量は太陽の10000000000倍のものもあると言われているそうです。そんな強大な質量を無視するわけにはいきませんので,宇宙,特にブラックホールの研究をするには,一般相対性理論が必要不可欠なのですね。
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