PassCode、≠ME、Pimm’s……アイドルディスクレビュー#19(11/8〜11/14)
1週間でリリースされたアイドルによる楽曲のうち、個人的に気になった楽曲をピックアップしてレビューをしていく連載の第19回。今回は「PassCode」「≠ME」「Pimm’s」の3組を取り上げます。
・PassCode『Freely/FLAVOR OF BLUE』(11月10日リリース)
今田夢菜の突然の勇退発表から早くも3ヶ月が経った。2016年にメジャーデビューを果たしてから一度もメンバーチェンジをすることなく、音楽性や方向性を固めてきたPassCode。グループに欠かせないシャウトを担ってきた彼女の不在はグループにとって大きな痛手となるだろうと思われていたが、新メンバーの有馬えみりが加入しリリースされた『Freely/FLAVOR OF BLUE』は、新しい4人体制の始まりを告げるハイクオリティな作品となった。
「Freely」にしろ「FLAVOR OF BLUE」にしろ原点回帰的な躍動感あるラウドを響かせつつも、サビのメロディには比較的キャッチーというかポップというか耳馴染みの良い感触を覚える、これまでのグループの様々な試みが集約されたかのような楽曲だ。南菜生、高嶋楓、大上陽奈子というこれまでのグループをリードしてきた3人は然ることながら、やはり本作で言及すべきは有馬のパフォーマンスだろう。初のレコーディングながら安定したシャウトを聴かせており、すでにグループの表現の枠組みの中に馴染んでいるという印象だ。新曲に留まらず、これまでグループが積み上げてきた既存曲を有馬が加わることでどう塗り替えていくのかという期待が膨らむばかり。
・≠ME『まほろばアスタリスク』(11月10日リリース)
「1stコンサート」や「イコノイフェス2021」などのライブや『イコノイ、どーですか?』といったバラエティを通して、アイドルグループとして大きな成長を見せてきた≠ME。グループ随一の歌唱力を誇る櫻井ももの活動休止を経てリリースされた本作は、ノイミー初の失恋ソングとしても話題となっている。
「≠ME」や「君はこの夏、恋をする」では夏の陽光に照らされた青々しい青春を鮮やかに切り取ってきた彼女たち。本作では秋〜冬のひんやりとした空気感に乗せて、甘酸っぱくも切ない主人公の心情を高らかに歌い上げる。激しいバンドサウンドで幕を開けるイントロやメロディアスなサウンドに乗せて情感たっぷりに歌われるサビのユニゾンは、失恋ソングにありがちなネガティブな余韻を残すことなく、むしろ前向きな清々しさすら感じさせている。そのあたりがいかにもノイミーらしい失恋ソングの形といえるだろう。
その他、カップリング曲が3曲収録されているが、中でも注目したのが映画『スパゲティコード・ラブ』の挿入歌にもなっている「誰もいない森の奥で一本の木が倒れたら音はするか?」だ。映画に出演する冨田菜々風、蟹沢萌子、河口夏音、川中子奈月心、鈴木瞳美の5人によるユニット曲で、音数の少ない繊細でシンプルなサウンドながらそれぞれの個性が光る楽曲となっている。ノイミーはハイパフォーマンスのメンバーが揃っているので、個人にスポットがあたるユニット曲がもっと増えてほしい。
・Pimm’s『URBAN WARFARE』(11月9日リリース)
現在アルバムを引っさげたライブツアー「Pimm's LIVE TOUR 2021 -URBAN WARFARE-」を開催しているPimm’sが現体制初のアルバムとなる『URBAN WARFARE』をリリース。2020年から2021年にかけて配信された新曲に加えて、新体制になる以前に発表された既発曲を含めた全12曲が収められている、現体制の集大成を告げる作品だ。
そんなアルバムの始まりを告げるのは、女の子の純粋な恋愛を歌った爽やかなポップナンバー「SUNDAY MORNING」。メンバー各人のエモーショナルなボーカルが映える1曲で、アルバムのオープニングを飾るに相応しいナンバー。続くリードトラックの「YES」は「今を生きろ」と高らかに鼓舞してくれる応援ソングとなっており、「HEY!」と一緒になって盛り上がる箇所はライブで盛り上がること間違いなし。
アルバム全曲を見回しても異色のミディアムバラード風のエモーショナルなナンバー「BOY MEETS GIRL」やNEO JAPONISMの辰巳さやかが振り付けを担当し、オントレンドなビートメイクで新たなアプローチが光る「JUST GO MY WAY」では、ロックなコンセプトとは真逆のアプローチにも挑戦しており、彼女たちの表現力の振り幅の広さにも驚かされる。小山星奈が加入し6人体制となったグループの成長を感じられる既発曲の再録ver.も必聴だ。アイドル界でも異色の存在感を放つ彼女たちにぜひ注目したい。