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水浸しには裸足

陽射しで海が白く見える。
風が起こり紙ナプキンを飛ばす。ひとりだけの客である私は目を細めて水平線を飽きることなく眺めていた。水滴、じわりとコップの底に流れてテーブルを歩く蟻を飲み込んだ。
こういう時間を私は大切にしている。現実に空想を重ね合わせること。
無人に見える漁船、目測を見誤る鳶、飛び跳ねる魚をあらかじめ決めておく。
空の広さと同じだけ、海中もまた広々と果てしなく続いているのだと砂浜を転がっていく紙ナプキンに書きつける。

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