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映像演技メモ1

演技とはなんだろう?


まず、役者である人がいる。
この人が、演技をして、役(キャラクター)を作る。
キャラクターは、物語の中でそれぞれの動機で動き、物語を織り上げてゆく。

つまり、演技も物語を作る道具の一つなんだ

良い演技とは?

演技の目的から考えよう。
演技をして作り上げるのはキャラクターだ。
キャラクター達が絡み合って物語を作る。
この物語が真実(事実ではない。観客の心に真実だと感じられること)と感じられたとき、物語は機能する。
それを作るキャラクターは真実だと感じられる説得力が必要だ。どんなに突飛な事をしようと、その心が分かるなら、それには真実と感じられる。コメディが面白いのはそのギャップだし、実は感動するのもその説得力だ。

どうすれば演技に説得力が得られるか?

私達は本当のことを言ったり行動したりしない。なぜか?私達が喋ったり行動したりするとき、必ず理由や動機がある。言い換えればなにかしらのたくらみがある。
例をあげよう。泣く人を思い浮かべて欲しい。幼児以外はほとんどの場合、泣いていることをさとられないように我慢しようとし、それでもその堰を超えて泣いてしまう。
人はいつも本当の感情は隠してその場に合わせようとしている。
この二つの相反する動機がせめぎあい、それを外から見るとその矛盾する心のせめぎあいが真実の感情らしく見える。

どうすれば矛盾が作れるか?

どの瞬間でも私達はなにかしらの目的を持っている、そしてそれに対する障害と戦っている。
例えば椅子から立ってコーヒーを入れてくるとしよう。その時、立つのがしんどいやカフェインとりすぎかなぁと悩んだり、もしくはウキウキしてコーヒーのことなんてどうでも良いと思ってたり、コーヒーが一刻も早く欲しいと感じてもどかしかったりする。全てコーヒーを取りに行く障害だ。
私達はどの瞬間もこういう戦いの中にいる。悪いことは乗り越えようとし、良いことはもっと早くと欲する。
目的・動機と障害との戦い。
これが人の行動が真実らしく見える基本だ。

へのへのもへじのように、目をと口と輪郭を描けば人の顔に見えてくる。目だけ口だけ輪郭だけ単体をいくら丁寧に描いてもなかなか顔に見えないが、しかしこの3つが揃うと、それぞれ点々やいい加減な曲線でも人の顔と認識される。
人の心も同じだ。目的・動機と障害と戦い。これが揃っていれば人の心に見える。

目的・動機と障害との戦い。

ひとはどの瞬間もこれを持っているし、大きな目的や障害と同時に、些細な目的や障害も層のようにいくつも持っている。
どんな行動や言葉にもこれがある。
台本を解釈するとは究極はそのキャラクター・役の 時々の行動・言葉の 目的・動機と障害との戦い を見出すことだ。

解釈と実行。

頭で解釈しても実行出来なければ演技は出来ない。
言葉ではなく 身体で感じるところまで 目的・動機と障害との戦い の想像を広げる必要がある。
身体で感じ始めると、それは自分の心をうごかし、更に想像が深く広くなってゆき、素晴らしい、好循環が起こる。

戦いと圧力。

 キャラクターにはどの瞬間も戦いと圧力がある。あなたもそうだ。あまりに些細で日常なので戦いや圧力に気がついていないことも多いが、しかし必ずなにかがある。
もしも強い感情を演じる時はその感情を爆発させるのではなく、その感情を心の中で吹き荒れさせ、しかし外へ出すのを我慢してみよう。我慢すればするほど感情は高まり、爆発しそうな圧力鍋のように蒸気が噴き出す。
これは何気ないシーンでも使える。心の中で強い感情や欲望を感じつつ、文明人らしくそれを隠すのだ。不思議なことにそれはハッキリ知覚できないオーラとなってキャラクターの魅力になり、観客の目を引き付ける。

何を見るか?

人は表情では嘘をついて平静を装う。一番嘘がつけないのが何を見るかだ。気になるものを見てしまう。見てはいけないものでもつい目が行きそらす。
自分の心の中を見ているときは空中を見ている。落ち込んだ時は床を。これはなかなか隠せない。
誰かと話すとき視線に注目してみよう。様々なことが分かるはずだ。
また好きな映画の好きなシーンを俳優たちの視線注目してみてみよう。慣れないときは音を消してみてみよう。何を見ているかで何を感じて考えているかが非常によくわかる。
実は映画では、表情ではほとんど伝えず何を見ているかでキャラクターの心情を語っているのだ。
上のように十分キャラクターの内心が感じられるところまで想像すると、自然に見たいものを観ようと視線がそう動く。

じつは映画でイマジナリーラインが重要になるのもこのためだし、クレショフ効果が起こるのもこのためだ。




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