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やがて来る明るい未来に
酒が無いと生きていけない。とまでは言わないが、お酒が好きでほぼ毎日飲んでいる。余程の事情、例えば体調がイマイチだとか、飲むタイミングが悪かったりだとかでない限り、適量をほぼ毎日。余程の事情というのは年に一、二度、有るか無いかなのでこの際「ほぼ」は不要かもしれない。でもけして依存症ではないのでご安心を。
ここ数年は日本酒を飲む割合が多くなった。というのも、それはあるテレビ番組の影響があるからだ。「太田和彦のふらり旅 新・居酒屋百選」。これを観ていると、この人と同じ酒が飲みたいなとしみじみ思えてくる。
料理を誉め、酒を誉め、店主を誉める。自身が蓄えた膨大な知識はひけらかされることなく、それはその店の魅力を引き出すためだけに使われる。
この人の店主とのやりとりを見ていると、つくづくお酒の一番の肴は ”人情” なのだと改めて思う。そんな素敵な番組を観ながら夕暮れ時に一杯やるのは実に楽しい。
日本酒には豊富な種類と沢山の銘柄がある。愛して止まない一本を見つけるのは至難の技。どれもそれぞれに個性があり美味しい。海外でも人気があると以前より聞くが、それも当然、こんな美味しいものを世界中の呑んべえが放っておくはずはないのだから。
番組のオープニングとエンディングにかかるのははっぴいえんどの「風をあつめて」。太田さんの選曲だと勝手に想像しているのだが、これが番組と実にマッチしている。ほのぼのとした懐かしさ、その中にある洗練された気品と美しさはこの番組を象徴し引き立てている。
素敵なハーモニーと進行。アルバム『風街ろまん』に収録されたこの曲は細野晴臣さん松本隆さんのコンビで作られ、レコーディングもこの二人だけで行われた。レイドバックした味のあるドラム。私はこの曲のスネアの音が昔から大好きでいつも聴く度に胸の奥にコツンコツンと響く。ダビングされたアコースティックギターとオルガン、ベースとボーカルは言わずもがなだ。
実はこのお二人、下戸だと言う話をお聞きしたことがある。もし、本当ならこの曲がこの番組を引き立てているのも面白いところだと思う。
いつか将来、人の往来が以前のように戻り、気兼ねなく旅が出来るようになった時、例えば、ヨーロッパの片田舎でふらりと立ち寄った酒屋さんの棚に、ひっそりと佇む日本酒を偶然見つけたら、きっと懐かしい友達に出会えたような嬉しい気分になることだろう。そして心の中で、さあ異国の人たちを喜ばせてあげなさいとそっと呟くことだろう。
やがて来る明るい未来に乾杯。
『風街ろまん』
(私所有のアルバム。残念ながら大滝さんのサインは無い。)