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レモンスカッシュみたいな音楽
先週の日曜日、METROCKという野外フェスに行ってきた。もともと1人で参加しようと思っていたのだが、偶然同じフェスに来ていた友人とその友人と合流し、3人でフェスを回ることにした。
2日目はウルフルズからのスタート。メンバー達のカラフルスーツと力強く男臭い、かつとても繊細な音楽に散々酔いしれ、僕らのフェスはこれ以上無い良いスタートを切った。次のアーティストは、僕ら世代の「THE 青春」といっても過言ではない、フジファブリックだった。
ボーカルの志村さんが亡くなってから久しく経つ。最後に生で聴いたのは、志村さんが亡くなった年のカウントダウンジャパン。それからボーカルが山内さんに代わって以来、新しい曲はあまり聴いてない。それは特に意識していたわけではなく、ただ単にipodの更新が面倒臭かったということが理由なのだが。
いきなりだが、青春ってなんだか夕方っぽい気がする。1日は24時間あって、高校生活は3年間あるわけだが、なぜだか青春というワードを思い受かべる時には夕方のオレンジっぽい画が思い浮かぶ。
そんなわけで、フジファブリックはまさに僕の青春だった。部活帰りの自転車では「若者のすべて」か「茜色の夕日」を聴いていたし、当時付き合っていた彼女と別れた帰り道には「記念写真」を聴いていた。今思い出すと、中二病だか高二病だかの真っ盛りでなんか気持ち悪いのだが、まあそれも良い思い出だ。
さて、話を戻す。そんなこんなでフジファブリックは個人的に思い入れのあるアーティストなので、とても楽しみにしていた。ウルフルズが終わってフジファブリックが始まるまでの待ち時間に、一緒にいた友人がこんな言葉を口にした。
「フジファブリックって、なんかレモンスカッシュみたいだよね」
会話の途中でさらっと言っただけだったのでその場では同意しただけで終わったが、「レモンスカッシュみたい」というワードだけはずっと頭に残っていた。
青春は甘酸っぱい、とはよく言うものだ。自分の青春時代が甘酸っぱかったかどうかは知らないが、なんとなく甘酸っぱそうだなあというイメージだけはある。フジファブリックも、なんだかそんな感じがした。
レモンスカッシュみたいな音楽、すごく素敵な響きだ。刺激的な日常の中に甘さと酸っぱさが交じり合う、そんな日は久しく過ごしていない気がする。
色々な人と出会い、挑戦して失敗する。そんな毎日は刺激的ではあるものの、そこに甘さがあるかといえば、そうも言い難い気がする。大人になるにつれて、高校生の頃に感じていたあの甘酸っぱさを味わうことはなくなってしまうのだろうか。
多分、そうなのだろう。もちろん、今は今でその頃とは違った空気を感じているし、それはそれで良いと思っているから過去に戻りたいというわけではないのだが。
でもたまには、ちょっとだけ当時の感覚に浸ってみたくなる時もある。最寄りの一駅手前で降りて、歩きながら色々なことに想いを巡らせて黄昏れたくなる。そんな時は、フジファブリックを聴いて、レモンスカッシュのような音楽に酔いしれる。
ありふれた日常なのだが、とても貴重で愛おしく感じる非日常的なあの瞬間は、これからも大事にしていきたい。