6/10『私たちが声を上げるとき』刊行一周年イベントテ-マ「私たちが声を上げる、聴く、つなぐには」報告レポート ゲスト: 和泉真澄さん、坂下史子さん、吉原真里さん (土屋和代さんは、リモート登場)
今回の企画は、『親愛なるレニー』を書かれたハワイ在住の吉原真里さんが、日本に来られることから始まりました。昨年、共著で、発刊された「私たちが声を上げるとき」を、改めて読み直すと、カタールでのワールドカップ開催を巡る非人道的な出来事や入管法改悪が、強行された今こそ読んでいただきたい本だと感じたのでした。
イベントの冒頭、坂下さんが、今回の本のできるきっかけとなった事柄からお話しくださいました。
「2020年に黒人男性が、白人の警察官に、首を抑えつけられて亡くなるという事件があり、そこから、ブラック・ライズ・マター(黒人の命は大事だ)という運動が、世界中で起こった。
それを、抗議を上げている黒人の方が危険だというような報道をNHKがしたため、その黒人差別の解説動画に対して、米国研究の学者ら13人(男性7人、女性6人)が、検証を求める要望書を出した。ところが、「こういうことをするのは女だと思ったが、ひとりでできないから仲間を集めてやっている。」など言われたり、ジェンダーに関係することまでも体験した。そのようなことがあり女性の結束が深まっていった。
吉原真里さんは、
NHKの放送に対する要望書、それ自体が、声を上げるということだった。それなりに、成果もあった。でも、声をあげたことで、ジェンダーに関することも体験し、女性同士が結束できたので、女性が声を上げる本を作ろうという思いに至った。
アメリカを専門にする研究者ということで、アメリカの事例に焦点をあてながら、日本の読者が、この本で、当事者と思って、共感したり学んだりできるレレバンス(ある事柄に関連していること)の高い本にしようと決めた。
偉人伝にはしたくなかった。偉人であっても、色んな苦しみ、バックラッシュを経験し、声を上げるようになるまでは、ずっと何十年もつらい思いや経験を積み重ねている」と本の方向性を話してくださいました。ここでパワーポイント 「声を上げた瞬間からひも解く」での説明がありました。
※「カマラ・ハリス」アメリカ副大統領候補討論会での動画あり
関心のある方は、ぜひ、隆祥館書店のホームページからイベントのアーカイブ動画をお申込み下さい。
https://ryushokanbook.com
和泉真澄さんは、差別から身を守るためのリスペクタビリテイ(他者からの視点の意識)という言葉について説明をして下さいました。
例えば、黒人男性の場合、運転中に警官に止められたら、車内にクラッシック音楽をかける。ラップとか、かけていたら、暴れる黒人だとみなされそれだけで、警官の態度が変わる。だから、命がけでクラッシック音楽をかける。
日本人の場合もまた、おとなしいと思われているアジア系カードを使うと態度が変わるそうです。「差別の被害者は肌の色、人種、で、一瞬の生死を分ける。ということを理解して欲しい」と仰られました。
土屋和代さんは、インターセクショナリテイ(人種・階級・ジェンダー・セクシュアリティ・国籍・障害の有無・エスニシテイ・年齢など様々な社会的カテゴリーを相互に関係し、形成しあうものとして捉える概念)について語って下さいました。これはマイノリティの中でも複合的な差別に苦しむ方を可視化するために重要な考え方だと思いました。
第二部では、ご参加くださった方々に、声を上げていただきました。
「私たちは、黙らない!」共著者の平井美津子さんは、
「昨年、岸田政権が、軍事費五年で、43兆円という膨大な予算を閣議決定するという時に、
東京の上野千鶴子さんたちからの掛け声で、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」を立ち上げることになった。「私たちは、黙らない!」は、「私たちが声を上げるとき」から考えたタイトルです」これをお聞きして一層、盛り上がりました。
シングルマザーで二人のお子さんを育てておられる朴洪実さんは
「元配偶者から経済的、肉体的DV被害を受けて逃げているが、iCloudで追跡され、嫌がらせ、脅迫され続けています。生活費・養育費も全て支払いから逃げられていて、ひとり親手当の費用も世帯主にはいります。実際一人で育てているのに、離婚が成立するまで何年かかっても1人親手当を何一つ受け取れないのです。」
これに対しては、ゲストの先生から、
「これは、「構造的差別」というもので、これを何とかするためには、法制度を変えないとだめ。法律を変えなければならない。立法に携わる人と司法の両方から考えなければならない」と答えが出されました。
公立小学校の教頭を務めるMさんは、
「この10年で、ずいぶん学校の職員室の雰囲気が変わってしまいました。志を持って、教師をしてきたはずなのに心が、壊れていく。若いパソコンの得意な先生だけが、偉そうになっていきます。これまで頑張ってきた先生が、若い先生に偉そうに言われてやめたいとこぼしています。これまで、先輩の先生が、職人技の伝授のような形で教えてくれていたのに自己評価制、評価制が入ってから、技術を教えなくなってしまい教師同士の分断が起こっています」
ここで、久保敬校長先生(当時)のことを思い出しお話しました。何の予兆も無く、マスコミにいきなりオンライン授業を始めると大阪の松井市長が、発信したばかりに、大阪の教育現場は混乱しました。それに対して子供たちのことを真っ先に考えている久保先生は松井市長に提言書を書かれました。久保先生のイベントをした時に、仰っていたことが、あります。「評価制が入って来て、校長として評価しないといけないのですが、みんな頑張っている。本来は順列を一番、二番、と評価できない。その結果、教師同士も分断されているとのことでした。
ここで、平井さんに、お聞きすると、「私も、評価低いです。攻撃したわけではなく、攻撃された方ですが、でも、頑張って下さい。」とのことでした。
ゲストの先生方が、最後に今、一番声を上げたいことは、という問いに答えて下さいました。
【和泉真澄さん】
今日、ひとつだけ言いたいこと
憲法に、緊急事態条項を、入れるのはまずい。まったく法治国家でなくなるということなので。自分の研究でも見えている。マイノリティの怒り、怒るのは悪いことじゃない。怒るのは、当然。インジャスティス(不正義)なんだから。賢い人、勉強を頑張った人だけの権利ではなく、色んな才能を持った人が認められる社会でないといけない。
【吉原真里さん】
アメリカは教育の権利、教育の自由、がものすごく脅かされている。
アメリカの南部の州で、人種についての理論を教えてはいけないとか、本が、発禁になったり、いつの時代だというようなことが、起きている。アメリカの大学は、リベラル環境だということが流布しているが、日本以上に、新自由主義が教育の現場を支配している。特にパレスチナのことに関する研究の自由は脅かされている。学問の自由が守られなければならない。授業料が高すぎる。教育のあり方を守る。
【坂下史子さん】
今日、沢山の方が、個人的な、ご自身のことを打ち明け、シェアして下さった。それは、ここ(隆祥館書店)の安全なスペース、空間があったから、可能だったのかな。こういう信頼して打ち明けれる居場所がある。ということは、とても良いことだと思う。
一方で、声を上げない。あげたくない。という権利も同様に、尊重されなければならないと思う。
【土屋和代さん】
防衛費は、これから5年間で、1.6倍の増額で、前のめり、少子化対策の財源はというと及び腰になってしまう。
入管の法改正(改悪) 憲法の問題 性犯罪 朴さんの問題、Mさんの問題、一見、今起こっている問題は、全部バラバラに見えるが、人権という根源的な問題で、繋がっているし、繋げなければならない。今日のお話を聞かせていただき勇気をもらった。
最後に、シャーロット・バスさんのページにも、書かれていたことですが、メデイア、新聞記者は、売れるからと、民族憎悪を煽って記事を書くことがあると、書かれていたので
「オシムの言葉」と「ピンポンさん」をご紹介させていただきました。
そして坂下史子さんと土屋和代さんの訳された「アメリカ黒人女性史」再解釈のアメリカ史 1ダイナ・レイミー・ベリー/著 カリ・ニコール・グロス/著 勁草書房を、最後にご紹介すべく準備しておりましたが、忘れてしまいました。ここでご紹介させてください。
朴さんには、イベント終了後に、ご連絡させていただきました。モヤモヤした思いを、「構造的差別」と言語化されたことで、勇気をもらえたと仰ってました。
坂下史子さんが、仰ってくださった「今日、沢山の方が、個人的な、ご自身のことを打ち明け、シェアして下さった。それは、ここ(隆祥館書店)の安全なスペース、空間があったから、」という言葉が、とても嬉しかったです。そのお言葉から、私は、勇気をいただきました。ありがとうございました。
※ 声を上げられたすべてを、お書きすることは、できませんでした。関心のある方は、隆祥館書店のホームページから、アーカイブ動画を、お申込み下さい。
吉原真里さん、和泉真澄さん、坂下史子さん、土屋和代さんありがとうございました。
集英社新書の野呂さん、イベント開催に際し、最初から最後まで、親切にご協力下さりありがとうございました。
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