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5/28京都大学人文科学研究所准教授 藤原辰史さん×ジャ-ナリスト木村元彦さんによるトークイベント・報告レポ-トテ-マ「テ-マ『 農と、食と、テロ(〝臓器密売〟)と、歴史について考える ウクライナのこと、NATOのこと』『歴史の屑拾い』講談社 『コソボ 苦闘する親米国家 』集英社インターナショナル 発刊記念

2月4日第一回目


2月4日に開催した「コソボ 苦闘する新米国家」著者 木村元彦さん×京都大学准教授 藤原辰史さんによるトークイベントがおかげさまで大盛況でした。木村さんが、99年に、内戦状態のコソボに行かれたときのNHKでの貴重なレポートや、サッカーのストイコビッチ選手の映像、そしてICTY(旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷)を長年に渡って調査研究されてきた立教大学教授の長有紀枝さん、元NHK欧州総局長長崎泰裕さんのオンライン出演、という多彩なプログラムでした。木村さんの現地で真実を追求する姿勢、さらにその事実から考察を加えられた藤原辰史さんの謙虚な語りに「もっと聞きたいので続編を」というリクエストが、多数寄せられ、アンコール開催をすることになりました。



今回は藤原辰史さんをメインに据えて「ウクライナのこと」「歴史の屑拾い」「ナチスのキッチン」などのご著書を中心に木村元彦さんが、聞き手を務めて下さいました。
木村さんと、藤原さんのトークは、記者と学者が互いに重要な言葉を引き出しておられて、会場が熱気に包まれました。

まず「歴史の屑拾い」という本のタイトルについて
歴史は勝者が作る。今、残っている歴史は、勝者が作ったものである。
藤原さんは「分解の哲学」という本の中にも書かれているそうですが、
捨てられているものから、歴史を捉えなおしたら、どんなものが、見えるか。
木村さんはこれを受けて「複雑で難解な民族問題を明解に解説する」とジャーナリストを信頼しないと言われました。「『要するに』と、明解に説明するために捨てられていった小さな事実の中にこそしばしば真実があるから」だそうです。その一つが今のコソボのマイノリティのセルビア人の人道破綻です。

藤原さんは続けます。
「歴史には、大きく分けて二通りのものがある」
まず権力を持ってる側が、お金をいっぱい使ってその人にとって都合のいい歴史を書いてもらうこのような歴史→ 「正史」というそうです。
それは、今、何と呼ばれているか?というと「ステイド・スポンサード・ヒストリー」
国家が、スポンサーになっている歴史、「恥ずかしい話ですが、私も、自分の研究に国から補助金が出ている。そういう意味では私も、「ステイド・スポンサード・ヒストリー」なのかも知れない。」でも、問題は、そこから、どうやって抗うか?ということなのです。と続けられました。
「そして国は、かつてやってきたことを隠す、もしくは目をつぶる。また、しばしば嘘をつく。ちょっと改変する。あの頃は、しょうがなかった。と。じぶんこそが犠牲者だった。ということになると、真実が、語られないどころか、歴史の闇に消えていった人が浮かばれない、もっと言うと面白くない。」

藤原辰史氏

頭に浮かんだのは、昨年、「何が、記者を殺すのか」のイベントで、お聞きした日本史の教科書執筆に関わられた立命館大学の庵逧由香教授のメッセージ、「政府見解」を教科書に盛り込むことが閣議決定で決められていることです。

木村さんは、ここで、国からの補助金は、政権のカネでも権力者の私費でもなく市民の税金なのだから藤原さんのされていることは、恥ずかしいことではなく、そんな日本政府がすることに、抗い、権力をチェックしていくことが大事なんだと仰いました。

木村元彦氏

藤原さんは「トラクターの世界史」という著作もあり、トラクターというモノを通じて歴史を伝えるという手法を確立されました。人間の語りはどんな誠実な人でもどこかで、やはり「編集」が入りますが、モノは嘘をつきません。僭越ながら、とてもユニークで納得できる農の歴史書です。そしてどんどん進化していくテクノロジーに対して人間がそれを疑わず、主体を無くしているのではないかと警鐘を鳴らし、過去のナチスによるロケット開発の話をされました。それは私も「宇宙の話をしよう」の小野雅裕さんから、宇宙開発の負の歴史として伺っていたので、深く頷いたのでした。

「ナチスのキッチン」という本については、
ヒトラーはラジオというテクノロジーを普及させ、プロパガンダによる台所の統制をはかった。第一次世界大戦で、ドイツが海上封鎖を受けて飢餓に陥った経験から、健康な身体を作るという施策を打ち出し、それ自体正しい知識ではあるのですが、それは、すべてお国のためでした。「この身体は国家のもの」というスローガンが怖かったです。


ナチスが作った「主婦のマイスター制度」、「母親大会」、彼女たちを疑似総力戦体制のようなシステムに組み込んでゆく過程を読んだときに、日本にもあった国防婦人会を思い出しました。大阪で生まれた「国防婦人会」は、女性の社会参画欲求と重なって爆発的に日本全国に広がり、戦争のために、自らの子どもも差し出しました。木村さんはその歴史を丁寧に取材し報道したNHKの酒井有華子ディレクターのことと共に、主婦マイスター制度と国防婦人会の類似について詳しく説明して下さいました。

ドイツでは、
身体は、国家のもの!
身体は、総統のもの!
健康は義務である!
食は、自分だけのものではない!

これが、日本の場合は、天皇でした。

第二部
「コソボ 苦闘する親米国家」の臓器摘出施設「黄色い家」の説明から

藤原さんは、「私は木村さんの本を読んで反省させられた」と話されました。それは、ご自身が過去のこととしてナチズムを捉えていたということ、しかし、今もナチズムは生きていた。それは、アドバイスを受けて現場に行って分かったと。藤原さんもクロアチアやボスニアに行かれてドイツ国内では許されないような歴史修正がなされているのを見て衝撃を受けられたそうです。
「今回のコソボの本でもいろんな歴史の問題が現在進行形であることが分かります」
NATOのユーゴ空爆から、米国が基地を建設する目的で無理やりセルビアから独立させたコソボで、政府ぐるみの臓器密売が行われていました。その戦争犯罪をICTY(旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷)が裁こうとしても障壁となったのが、米国でした。
大きな力を持っている国が、すごい力で歴史を隠そうとしている。それを一匹狼の木村さんがこじ開けるために、どれだけの苦労をされたのか、と藤原さんは言われ、木村さんは藤原さんが、負の歴史にこそ真実があると言って掘り起こす藤原さんの思考こそがとても重要だと話されました。

NATOの東京事務所設立の動きがあること対して、

木村さんは「ロシアのウクライナ侵攻やこのコソボに駐留していることでNATOがあたかも平和維持に貢献しているかのような見方が高まっているが、国連決議をときに無視して空爆を行う軍事ブロックであり、そこに独自外交を売りにしてきた日本が接近することを非常に危惧する」と言われました。



「21世紀になっても人間以下の扱いをされて、拉致され、臓器を奪われて殺される人々がいたということ、そしてその犯罪はNATO軍が駐留し、監視しているはずの地域で、行われていたということは伝え続けたい」


最後に藤原さんは「食の問題は非常に重要です。例えば給食の無償化という政策、それ自体は大切で私も給食の本を書いて来ました。しかし、食や健康をうたう人については必ず慎重にその背景を観察する必要があります。すぐに信用してはいけません。それは私も含めて」と笑いをとりながら、締めくくって下さいました。

藤原さん、木村さん、ありがとうございました。

リモ-トでご参加下さった方々ありがとうございました。


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