全裸中年男性、外国人労働者と交流する
「このあたりもだいぶ外国人が増えてきたね。日本も変わっていくんだろう」
全裸中年男性は街を散歩しながらひとりでつぶやいた。その声は誰にも聞こえなかったが、全裸中年男性はつぶやきつづけた。
「外国人労働者向けの商売でもやるか。ソシャゲでカネを巻き上げるとかナウい商売だが、そんなものを作る技術はない。うーむ。」
しばらく考えた全裸中年男性は紙とペンを取り出し200億円の借用書を作成した。手書きで書かれた借用書の支払日は約300年後の2312年9月3日。ドラえもん200歳の誕生日に設定された。
全裸中年男性は外国人労働者を集めると手書きの借用書を見せて言った。
「これは300年後に200億円になる証文だ。それが今なら2億円。300年で100倍になる魔法の証文。これで君たちは貧困から脱出できる………
そう言って母国からカネを騙し取ってくるように」
日本には全裸中年男性の手書きの証文が置いてあるだけだったが、外国人労働者たちはネットで母国に《日本にうまい話がある》と連絡し資金を募った。家族にだけ《ドブに捨てていい金額だけにしろ》と伝えた。
この話をネトゲの雑談で知ったアメリカ人トーマスは仲間を集めて同様の詐欺を始めた。
「仏教徒は本当に無限に手からカネを出せるんだな。おい」
トーマスの話を聞いたアメリカ人たちは東洋の神秘を見て驚き、ほうぼうに通報したが謎の圧力によって捜査は中止になった。
そして西暦2100年、世界中で流通する債権のなかに全裸中年男性の落書きが含まれていたことが判明すると、大恐慌が発生し、中東では石油系企業の破綻が相次ぐ。
2124年《カネはすべて幻である》と説く全裸中年男性の仏教系カルトが中東で流行する。
2150年、中東で仏教系カルトによる革命が発生する。この革命の混乱のなかで全裸中年男性に対する債権を持つ企業はその権利を行使する前にことごとく焼き討ちに遭う。
こうして全裸中年男性は無事に借金を踏み倒した。
1000年後、日本で働いた外国人労働者の子孫には以下のような伝承が残っている。
《日本人は徳が高く外国人労働者にも恩恵をもたらしてくれる。ただし絶対に逆らうな。おそろしいことが起こる。特に全裸中年男性は危険だ。》