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#30【夢日記】ベッドメイキングで“くらクルー”の才能を発揮


こんな夢を見た。

僕と地元の友達が、くら寿司に食べに来ていた。何の変哲もない光景。普通にご飯を食べた。普通にびっくらポンを回した。普通に会計を済まして帰ろうとした。

その時である。

くら寿司の従業員が「あぁ、このままだと、お客様がいらっしゃるまでに、ベッドメイキングが間に合わないわ・・・」と、嘆いている姿が、僕の視界に入って来たのだ。

「くら寿司でベッドメイキング・・・?」と訝(いぶか)しむ声が今にも聞こえてきそうだが、便宜上、ココは問題視しないことにする。

僕は逡巡した。どうするべきか。正直な思いを言えば、面倒事を避けて、見て見ぬフリを決め込みたい。事実、そうしようかとも思った。僕はあくまでも客の立場。食べた分の料金を支払ったのならば何の言われも無いじゃないか、と。

しかし、しばらく迷った末に、僕は声を掛けることにした。それはなぜか。これまで体験してきた出来事から“見て見ぬフリをすると後々に響く”ということを、経験の中で分かっているからだ。

要するに“自分は困っている人の存在に気付きながらも手を差し伸べない薄情な人間なのだ”と、自らを責めるような材料を、これ以上、増やしたくはなかったのだ。

こういった一人問答を経て、僕は「どうされました?僕に何か手伝えることはありますか?」と、努めて明るい調子で、困っている従業員の方に、声を掛けた。

するとその方は「お客様の要望に合うお席の準備が・・・」と、ポツリと呟きながら、悄然(しょうぜん)として俯(うつむ)いてしまった。

表情を見ても憔悴(しょうすい)し切っている。どうやら、人に困り事を伝えるエネルギーすらも喪失しているらしい。これはよっぽどのことだ。

そんな様子を言語化するならば「やるべきことが沢山あるのは分かっているけれども、心が千々に乱れているために、為すべきことの優先順位を付けることができない」といったところだろうか。

僕は、こういった状況は、変に冷静になれるところがあ?。つまり、他人が慌てふためている状況であればあるほど、自分の頭が冷静に働く、といった具合に。

元来、僕は、冷静沈着なタイプとは言えない。もう一つ付け加えると、クールに振る舞おうとするも内心ドキドキしているタイプ、有り体に言えば、“カッコツケな男”だ。

だけど、前述した状況であれば、瞬時に的確な判断をして、即座に妥当な決断を行い、判断・決断に基づいた行動をフットワーク良く動けたりするのだ。自分自身、自分の振る舞いに驚くぐらいに。

そう考えると、案外、人間の感情は、相対的なモノなんだろう。慌てふためいている人を見ると「自分がしっかりしなきゃ」という意識が働く。逆に“この人がいれば大丈夫”といった頼りになる人物を見ると、ついつい甘えてしまったり・・・。

失礼、脱線が過ぎた。本題に戻ろう。

そんなこんなで、僕は、何だか良く分からないのだが、上手いことやったらしい。

「・・・はっ?」

みたいなオチで大変恐縮ではあるのだが、“編集の都合上カットさせていただきました”とでも言うかのように、僕が上手いこと難局を乗り越えたシーンは、記憶に残っていないのだ。

ともかく、僕は、ベッドメイキングを上手いことやってのけて、従業員の方、否、くら寿司の全従業員の方々から、感謝感激雨霰(あられ)、といった激賞を浴びていた。

お偉方と思われる年配の女性はこう答えた。

「お客様の難しいご要望をいとも簡単に・・・。あぁ、この人がクルーの一員だったら、なんて思っちゃうわねぇ♡」

「従業員をクルーと呼ぶのはマクドナルドぐらいだろ」という声が聞こえて来る気がするのだが、これも気にしないことにして・・・。

責任者と思われる年配の男性はこう答えた。

「(お客さんに助けられた話を従業員から聞いて)へぇ。それは凄いですね。いやはや、なんとお礼したら良いのか。わざわざありがとうございました。またのお越しを従業員一同お待ちしております。今度いらっしゃった時は、是非とも、ご馳走させてください」

色んな人から褒められっぱなしで、逆に居心地の悪さを覚え始めた僕は、こう呟いて、そそくさと店を後にした。

「いえ、なに、当然のことをしたまでですよ」

・・・。

夢から覚めた後、単刀直入に、思ったこと。

“俺、ベッドメイキング、できねえよ(笑)”

絶対無理と断言出来る自信があるぐらい、僕は、ベッドメイキングが出来ない。

なんていうんだろう。布団カバー?ショーツ?それすらよく分からないのだけど、一度乱れると、そういった諸々は、乱れっぱなしになってしまう。

ただ、ホテルでバイト経験のある方から「専用スタッフが清掃業務に入るからそのままの状態が案外一番楽(笑)」と聞いたことがあるので、割と悪気無く、乱れっぱなしで、ホテルを後にしている。

そう。ココポイントね。善意での行動だったとしても、スタッフからすると、かえって面倒、なんてこともある。これを知ってるか知ってないかは大違い。是非、参考にして欲しい。

・・・まぁ、それは置いといて。

もしかしたら、夢の神様みたいな人が、「現実世界では到底不可能だろうから、せめて夢ぐらいは、ベッドメイキングが出来る喜びを体感させてやるか」と、粋な計らいがあって、今日の夢を見させてくれたのかもしれない。

仮にそうだったならば、僕は「だったらベッドメイキングが上手く出来たのが印象に残る夢にしてくれよ」と、盾突きたくなる。だって、編集の都合上カットされたと言わんばかりに、印象に残っていないんのだから。

などとブツクサ書いていたら、ハッとした。

いや。それも当然か。だって僕は、ベッドメイキングを、上手く出来たためしがないのだから。人生で経験したことがないのだから、夢の世界でイメージが描けないのも当然じゃないか、と。

結局、僕が蒔いた種だった、ということだ。

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