【2232字】2024.06.15(土)|🍺父の日
2024年の父の日は、明日、6月16日(日)とのことだが、日曜日よりも土曜日の方が心置きなく酒を飲めるし、土曜日ならば【ホークス-阪神】のナイトゲームのカードが組まれているので、一日前倒しでお祝いしようか、となった。
以前、「焼肉特急」に行ってきた時から、父は「父の日は焼肉やなぁ…。」と言っていた。よっぽどお気に召したらしい。
その気合いの入りようは凄まじく、スーパー等で調達するのではなく、わざわざお肉屋さんにまで出向いて、肉類を調達したとのこと。父いわく「ちょっと買って来ようと思ったら6千円超えてたわ」。
父はいつもそうだ。「ちょっと」が「ちょっと」じゃない。おそらく「ちょっくら」ぐらいの意味合いで「ちょっと」と言っている。「ちょっと」を「少し」などの、量を表す意味合いで使っているとは到底思えない。逆に、もしも「少し」で使っていたとしたら、僕の父の感覚はおかしいと言わざるを得ない。だが、実の父にそんな仕打ちは避けたいので、「ちょっくら」の意味合いで使っていると信じたいところである。
・・・いや、待てよ。他にもあったぞ。父の”前科”が。「味見してみるか?」と言いながら、出て来た料理が、普通に一人前ぐらいあったり…。「味見」と言われると「一口サイズ」か、せいぜい、「ミニサイズ」以下をイメージするはずだ。にもかかわらず「並サイズ」が出て来る。それが僕の父なのだ。あぁ、これはもう、認めざるを得ないのか…。
・・・いや、違う。僕の父は、良かれと思って、そうしているのだ。僕達がお腹いっぱい食べられないのを危惧して、「ちょっと」と思っていても、ホントに少しだけだと、取り合いになったりするのは嫌だし、逆に遠慮の塊になるのはもっと嫌だ、と危惧して、ついつい、肉を大量に買い込んでしまうし、「味見」と思っていても、一口食べてみて「美味しい!もっと欲しい!」となった時に、ホントに一口サイズぐらいしかないと、食べ足りなくて、いたずらに食欲を刺激しただけで終わってしまう、と危惧して、ついつい、並サイズぐらい作ってしまうのである。
そう。僕の父は、いずれも、”良かれと思って”、そうしているのだ。別に何も「どうだ、食べ切れないだろ!参ったか!」と勝ち誇っているわけではない。「食べ足りなかったらかわいそうだな…。」と思ってのことなのだ。それを悪く言うのは僕が許さない!
僕は、”結果としての善”よりも、”動機としての善”を重要視したいと、常々考えている。理由は単純明快。結果はコントロールすることが出来ないからだ。しかし、そこに至るプロセス(動機)ならコントロールすることが出来る。
たとえ、結果的に悪だったとしても、動機としては善だったのならば、それは、尊いことだ。逆に、結果的に善だったとしても、動機としては悪だったのならば、それは、手放しで褒めてはならない。”結果オーライ”は、悪人をのさばらせることに繋がる。そうして、善人は、居心地の悪さを覚えて、一人、また一人と、去って行く。やがて、組織全体、腐敗して、奈落の底へ…。
「真っ逆さまに落ちてデザイア~♪」
晩御飯を食べながら【ホークス-阪神】の試合をワイワイ観戦していた。今日のオーダーは「1番近本|2番中野|3番森下」と、昨年の日本一のオーダーを彷彿とさせる上位打線だった。父は「4番近本の時代は短かったな…。」と呟いた。最初は「4番近本か…。」と、達観したような面持ちでオーダーを眺めていたものだが、僕が思っていた以上に、お気に召していたようで、少々驚いた。
父は「10試合ぐらいか?」と僕に問い掛けて来た。僕は「まぁそれぐらいちゃうかな」と返した。なにせ、僕はカープファンなのだ。タイガースのチーム事情は、正直、詳しくない。ましてや交流戦の時期である。尚更よく分かっていない。
※調べてみたら12試合でした。
父は「4番佐藤か…。」と、感情の見えぬ声色でポツリと呟いた後、せっせと、焼肉を焼く作業に取り掛かった。あくまでも息子である僕の推測に過ぎないが、おそらく、父の中では、「佐藤だったら近本の方がおさまりはええなぁ…。」と思ったのではないかと見える。
しかし、今は「父の日」のパーティー真っただ中。家族が一堂に会して食卓を囲んでいる。それなのに「4番は佐藤じゃなくて近本で良かったんちゃうんか?」などとボヤくのは忍びない、と判断して、「4番佐藤か…。」とだけ呟いて、話を打ち切ったのではなかろうか。
そう考えると、父は「佐藤輝明」のことを「サトテル」でもなく「テル」でもなく「テルアキ」でもなく「佐藤」と呼んでいる。育成の「佐藤蓮」の存在を認知していないだけとも思えるが、ややうがった見方をすれば、「あだ名で呼ぶほど俺はまだ認めてへんぞ?」という、期待を込めたエールとして、敢えて「佐藤」と呼んでいるようにも思えてきた。
そんな「佐藤」こと「佐藤輝明」が、ライト方向にツーベースを放った時は、我が家は「お~!」と盛り上がっていたのだが、父は、何事もなかったように、焼肉を焼いたり、肉をハムハムと食べたりしていた。断じて、興味が無いわけではない。「それぐらい打って当然や。4番に指名されたんやから」という、陰ながらのエールであると、僕には感ぜられた。
願わくば、1日早い「父の日」のプレゼントとして、「佐藤輝明☆4番弾」(ホームラン)を見たかったものだが、それは、またの楽しみにとっておくとしよう。
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