「「歴史」っていうのは、そういうのは嫌いだけど、でもあなたがそう言う理由はわかるっていう、そういうことが歴史の価値だと思っている」 シラス の番組で歴史学者の与那覇潤さんがそう言っていたのを記憶している。兼親大樹著小説『むき出し』も、一つそういうことが主題になっていると感じた。歴史というものは、人が想像しない限り存在しない。なぜそう考えたのか、糸を手繰り寄せるようにこの小説の中から感じたこと、シーンを思い返す。 『むき出し』の主人公石山は、自分の過去を思い返す、つまり