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日和から

ここには戦争を経験したことがない者しかいなかった。戦争の悲惨さを、豪奢さを、蹂躙を、侮蔑を、悲報を、吉報を、空虚を、残骸を、死の進軍を知らなかった。人は尊厳を奪われるからといって、獣に立ち返るわけでもない。悲愴感を懐柔できるほど立派ではなかった。残されたものほ自己の存在理由を考えた。それは己から発露したものではなく、相対的に運命から押しつけられたの。亡くなったものへの悲しみは勿論あるが、自己との対峙は
それまでの人生の中で無限のように流れる時間で刹那的爆撃が行われるものだった。その爆撃では死は許されなかった。死を模したところでも、運命に起こされ爆撃が絶え間なく行われるものだった。朽ちようが、血塗れになろうが、最終的に求められるのは自己への和解だった。苦しみの先には苦しみしかなく、悲しみの先はなにもなかった。和解は過去を諦めることではなく、過去から未来を創造するその意志のかけらだった。

私はまたあの夏を待っている。

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