見出し画像

弓道と弓道部


中学生時代

私は中学生になったとき、初めて部活動に所属した。

【 ソフトテニス部 】

その動機はありきたりなもので
「打つ時の音が好きになったから」

しかし入部してからというもの、これと言って目立つような戦績をあげることはなく、走り込みと筋トレ、努力はしたが上達することの無かった技術練習に埋れながら、私の部活動は終わった。


高校生時代

人生で2度目の部活動選択
私は硬式テニスと弓道で迷っていた。

テニスはお世辞にも上手いとは言えなかったが、競技自体は好きであった為、続けようか悩んだ。
軟式から硬式へ変化したが、恐らく何も変わらない。日の目を浴びることない未来が、私には強く鮮明に見えていた。

【 弓道部 】

私が選択した競技。
中学生の時のような感動や、こだわりは無かった。

走らない 筋トレが無い 全員が初心者

部活の選択において、この3つがあれば私には十分であった。
屋根の下で同じ動作の繰り返し
テニスに比べ、果てしなく楽を詰めた競技
そう、楽をするため、高校生活を楽しむために簡単そうな競技を選んだのだ。

想定外の事

それは高校2年生の時に突然やってきた。
団体種目の正規メンバーに選ばれたのだ。
なんだそんなことか、と思われただろうか。

「県大会」

県大会のメンバー5人に選ばれたのだ。
中学時代はチーム全員で目指した県大会出場。
そんな私にとってはとても大きな出来事であった。

県大会と結果

こんな大舞台は初めてであった。
当日、かつて経験したことがないほど緊張した…と言いたいところだが、実際はそうではなかった。
チームに支えられ、重すぎないプレッシャーの中で試合に臨むことが出来た。

実際、私たちは入賞できたら嬉しい程度の比較的楽な気持ちで試合を重ねていった。
ここで更に想定外の事が起きる。
決勝戦まで来てしまったのだ。
これには流石にチームが燃え上がった。
絶対に勝つ。
全員が心から勝ちを欲しながら臨んだ県大会決勝。

優勝

私たちは県大会で優勝した。
それと同時に全国大会出場権も得た。

全国学生総体弓道

1週間の大会のために、練習した。たくさん。
遠征にも行き、普段試合を組む事がない強豪と言われる相手とも試合をした。

私たちは、かつて先輩が成し遂げたベスト8という輝かしい結果を超える、そう心に刻み試合に臨んだ。

ここで勝てばベスト8。
重たい一戦。
しかしここで超と付くほどの強豪校と当たってしまい、試合をする前に気持ちが負けてしまった。
それまであった勢いというものが音を立てながら崩れていくような気がした。

私たちの全国大会はベスト16という結果に幕を下ろした。

弓に導かれた私の未来

「受験」

時間は待ってくれない。
弓道にさえ打ち込んでいればよかった日々。
それが終わろうとし始めていた。

私は近くの大学へ進学し、免許を取り、就職するのだろうと思っていた。
しかしある時、部活の顧問から想像もしていなかった言葉をかけられる。

「全国大会の結果を利用して大学を受験しないか」

はじめは何を言っているのか全くわからなかった。
それは、スポーツ選抜入試というものであった。
簡単に説明すると、大学へ入った後も競技を続けるということを条件に、通常とは異なる試験や面接を行う受験方法のひとつだ。

私が勉強して進む大学よりも上の大学へ通える

こんなどうしようもない理由で私は今通っている大学を受験した。


大学弓道

初心者もいるが、ほとんどは経験者や実力者の世界。
大学の部活やサークルへの加入は任意であり、好きや向上心が自然と集う場所。

その世界は想像を遥かに超えた高みにあった。
今まで凄いと感じていた人たちが平均となるのだ。

かつての高みからさらなる高みへの挑戦

こんな言葉がちょうどいいだろう。
唐突に訪れた自信が消え去る瞬間。
最も下の学年であり、経験も下。
でも誰より、ほかの誰よりも可能性を秘めていると。

葛藤 苦悩 絶望 その先にあるもの

その世界は本当に厳しかった。
私がどれほど頑張ろうとも、周りはそれより頑張っている。私がどれほど良い的中(スコア)を出そうとも、最大値でなければそれより上がいる。

当たり前なことのはずなのにとても悔しい。
それなのに、時間は無情にも刻一刻と過ぎてゆく。

ある時私は、正規練習の後に行う自主練習の際に過呼吸を引き起こしてしまう。
スポーツ界ではよく聞くであろう“イップス”という症状だった。
特定の動作が出来なくなってしまう。私の場合は弓と矢を持つ事で精一杯だった。的と向かい立つ事すら出来なくなった。
初めての経験だった。
もちろん、今では全く問題ない。

入部してからの1年半、とにかく色々なことを経験したと思う。試合に出れない時期、仲間との葛藤、チームに課せられた課題、個人や団体での結果…


弓道と弓道部がくれたもの

「楽そう」
こんな動機で始めた弓道が、今では私の生活や人生においてとてつもなく大きなものへも成長している。
何かに真剣に取り組む、とよく言うが、その本当の意味を教えてもらった気がする。
弓道部の仲間には本当に支えてもらった。もちろん顧問の先生も。彼らでなければ私は今の私ではないだろう。感謝してもしきれない。

今でも高校の同期とは会ったり食事にも行っているり
実家に帰省をすれば連絡も来る。
既に私を知る人は顧問しかいなくなったが、高校の道場にも顔を出す。
私にとってはどれも大切なことだ。
当たり前のことのように見えるだろうが。

弓道が私の人生、未来を良い方向に導いてくれた。
弓道部が私の歩みを支えてくれた。

弓道はもはや我が道である。


さいごに

今回は少しだけカッコつけた文章で書いてみた。
書きたい事が多すぎて短くまとめたつもりだったが、長くなってしまったのは許して欲しい。

部活動に所属せず、他のさまざまなことを経験する未来もあった。でも私は今部活動を通して弓道をしている。これが私の人生において正解なのかは分からない。遠い未来、振り返った時に初めて分かるだろう。残りの大学生活がどのようになろうとも、私はきっと後悔しない。こんなにも沢山の大切なものを手に入れる事が出来たのだから。

#弓道 #弓道部 #部活 #エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?