二度と行きたくないインド7日間1人旅 Day5「夢叶う」
ガンジス川
日の出前のまだ暗い時間に僕とKaraとガンジス川をガイドしてくれる昨日のおっちゃんはホテルのロビーに集まりボートが停泊している場所まで歩いて行った。
ニューデリーのような大都市とは違って、バラナシの早朝は乗り物のクラクションなどの騒音は無くとても穏やか。
この時間から活動を始めているのは牛や野良犬やニワトリ、路地裏で洗濯をしている老婆ぐらい。
舗装されてない路地裏を抜けて10分くらい歩くとボートが停泊しているガートに辿り着いた。
通常は10人くらいで1つのボートに乗り込むらしいが今日のこの時間は僕ら以外誰もいなく貸切。
バラナシに来てからいいことが続いている。
ボートに乗り込みエンジンを掛けいよいよガンジス川に出ていく。
※ガンジス川のことを現地ではガンガーと呼ぶ
この日のガンガーはものすごく穏やかで、川の上を通って来る涼しい風が肌に当たると心も身体も川のゆっくりとした流れに同化するような感覚になっていった。
ガイドのおっちゃんは僕らがこのガンガーで何を見て何を感じたいのか察知してくれたのか
川の真ん中でエンジンを止め、ただガンガーの上で浮遊する時間をとってくれた。
聞こえてくるのは遠くでポンポンと鳴る一台のボートのエンジンの音とガートで行われているプージャの祈り、そして鳥の鳴き声だけ。
なんて気持ちいい時間なんだろう。
ただ川の上で浮遊しているだけなのに、まるで瞑想しているかのような感覚になっていく。
このゆっくりとした時間を味わっているとガンガーの向こう側からゆっくりと太陽が登り始めてきた。
この瞬間こそ学生の頃「深夜特急」を読んで憧れ、一度この目で見て肌で感じてみたいと思っていた光景だ。
あれから25年以上
僕は今ガンガーの上にいる。
なんだか信じられない。
今僕が見ているこの景色は
80年代に沢木さんがインドを訪れた時も
そのもっともっと前の何百年、何千年も前に生きていた人たちもガンガーから同じ太陽を見ていたに違いない。
そう思うと未来、過去、現在の時間の軸がなくなったかのような感覚になり、僕という人間と地球、そして地球に生命力を与えている太陽が
”ただそこに存在する”
という当然なんだけど今まであまり意識してこなかった事がはっきりとした気がして
その感覚は僕を自由にさせ、今を生きている事を強く実感させてくれた。
そんな不思議な感覚を得ながら
僕はゆっくりと登るオレンジ色の太陽をただじっと見ていた。
全てが一つになる
空気汚染のせいか10分もしないうちに太陽は空の中に消えて見えなくなってしまった。
ボートはその後マニカルガーガートという火葬場に向かっていった。
その頃には沢山の人がガンガーに沐浴をしに集まって来ていて
ただ水風呂のように潜って沐浴する人、シャンプーで全身を洗いながらお風呂のように沐浴する人、その他にも洗濯をしている女性、泳いで遊んでいる子供たち、そして牛などの動物も一緒になって入ってきていた。
僕もせっかくガンガーに来たんだし一度は沐浴してみようとバラナシに来るまで思っていたのだが、
実際に間近で水の様子を見ていると、
生活用水、動物の糞尿、それ以外にもまだその時は目にしてなかったが火葬場で燃やされた遺体の灰もガンガーに流していると聞いていたので
流石に40過ぎのおじさんはひよってしまい沐浴することは出来なかった。
※片手でちょっとだけ触ったよ
※20代なら間違いなく入ってた
30分くらいだろうかゆっくり進んで行ったボートは目的地である、マニカルガーガートという火葬場に到着した。
このマニカルガーガートはこのエリアでは一番大きな火葬場で、黄色い布で包まれた遺体を河岸にある火葬場で焼き、焼いた後に残った灰をその後ガンガーに撒いている。
僕らが到着した時遺体は見えなかったが、組まれた薪から炎と煙が上がっているのが見えた。
ガイドのおっちゃんの説明では火葬にかかる予算が無くて十分な薪が買えなく完全に燃やされずに終わってしまう人や、
また子供や妊婦、事故に遭った人や、蛇に噛まれて死んだ人などは、火葬にせずに包まれたまま船に乗せられ、川の中程まで出たところで足に重しをくくり付けられドボンと川に投げ込まれるらいし。
けどその重しが外れてしまって浮遊してくる事もあるという。
※この話を先に聞いていたら20代でも沐浴はしてない
つい数十分前に日の出を見た時にはあれだけ地球と人間の生命力を感じていたのに
今目の前では肉体が灰になり川に流されている光景を目の当たりにしていると
全てのものは川のように流れて無くなっていく
ヒンドゥー教で信じられている輪廻転生が
まさにこのガンガーそのものだと思った。
人が焼かれている横では悲しむ家族がいて
ゴミを漁り食べ物を探している牛や犬がいて
走り回って遊んでいる子どもがいる。
全てをひっくり返したような世界はカオスとも言えるかもしれないが
僕の心はガンガーに出た時からずっと川と同化したように物凄く穏やかで
それはきっと目の前で起きている全ての事に
意味をつける事なく
ただ起きている事として受け入れる事が出来たからだと思った。
何か意味をつければその意味に振り回されて
起きている事をそのままの形で受け入れる事が出来ない。
感情も同じで意味を付ければ振り回されるが
ただ放っておけば川の流れのように波が立っても自然と穏やかになっていく。
ガンガーを回った約1時間半のツアーはこのインドの数日間の旅の中でも本当に最高な時間と経験を得ることが出来た。
ガンガーのボートツアーを終えた後はホテルまでKaraとガイドのおっちゃんと途中でチャイを飲んだりしながら街を少し散歩して帰った。
その途中ガイドのおっちゃんが親戚が営んでいるバラナシの伝統工芸の一つのシルクの織物工場を見学しないかと提案して来た。
そこではサリーなどを作っているという事だったので
僕とKara は一回お互い自由時間を取って11時にまたホテルのロビーに集まって工場見学に行こうという事になった。
「夢叶う」後編に続く