【 LOVE STORY 終章 もうひとつの愛 】
のぶ みっちゃん
元気にしてるか?
つうか...
墓場に向かって”元気か”もなんだな!
そっちでも相変わらず仲良くやってるか?
のぶ...
もうすぐでしいちゃんの誕生日だ
君の命日でもあるな...
当日 俺 泣きそうだから
ちょっと早めに来たんだ
正義の味方 たかにいちゃまがオイオイ泣いたら
しいちゃん 驚くもんな
で 毎年のことながらこうして一人で先に来たのさ
しいちゃん ますますみっちゃんに似てきてるよ
美人さんだ!モテモテだぜ!
さすが我らのマドンナの子だ!
もう 悪い虫付かんように
ハラハラしてるぜ!
親父の心境だな!
いつも思い出すんだよ
みっちゃんが君のもとに行ってからのこと
両家でしいちゃんをどうするか話し合ってた時
しいちゃん言ったんだ
「パパとママと一緒にいる」って...
涙いっぱいためて
君たちのあの部屋から出ようとしなかったんだ
わずか6歳の子が
どう言われても 絶対動かなかったんだ...
で みんなでさ
交代で君たちの部屋に泊まりこみよ
しいちゃん 一人ぼっちにしないようにな
こんなこと 法的に赦されるかどうかなんて
あの目を見たら 誰も何も言えなかったんだ...
おじさんたちさ もうだいぶ年取ってきたし
友達もさ みんな家庭持って てんてこ舞いだし
独身貴族の俺が しいちゃんのナイトよ
しいちゃんな
両親いないなんて感じさせないほど
明るく元気にのびのびと育ってるよ
あれは なんだな
みっちゃん譲りだな!
いじめもあったんだ
でも 俺ら しばらく気づいてやれなかったんだ...
ごめんな
ホント ごめんな...
しいちゃんさ
何言われても 何されても
ひと言も言わなかったんだ
じっと耐えてな 全然態度変わらないんだ
しいちゃん まるで包み込むように
すべてを受け止めてさ
こう 微笑んでるワケよ
しいちゃんにいじわるしてたやつらさ
そのうち そういうしいちゃんに負けてさ
我先にと 仲良くなりたがるんだよ
君たちの大切な天使は
本当に天使だな...
君が残した手紙に
「変わらず愛を受けている」
「穏やかに静まって待つんだ」と書いてあったろう
しいちゃんな
あれ 小さい時から何度も読み返しててな
本当にその通りに過ごしてきたんだ
どんなことがあっても決してくじけたことないよ
愛されている実感 ちゃんと心に持ってるんだな
俺は相変わらず独身だよ
俺さ 小さいころからみっちゃんに惚れてたからさ
君の嫁さんになるって知ったとき
かなり凹んだよ
絶対 のぶに渡したくないってな
君が病気だろうと何だろうと
絶対渡したくなかったな
あの日 本気で殴りあったもんな
俺 君がもうすぐ死ぬからって
手加減しなかったもんな
君もそうだったな
殴りあって ふたりでダウンして
肩組んで よれよれで帰ってさ
みっちゃんに手当てしてもらったな
みっちゃん ひと言も言わずに涙ぐんでさ
コツンと俺らの頭こずいてさ
3人で泣き笑いだったな...
君が死んだと知らせが入って
すぐに飛んでけなかったこと
ずっと悔やんだよ
あの時 思ったんだ
俺 ずっとみっちゃんとしいちゃんを守ろうってな
君の代わりにはなれないし
もちろん みっちゃんも望んでなかったろう
でも 俺 あの時に決めたんだ...
そして あの決断は間違ってなかったよ
俺も君と同じくらい みっちゃんを愛してたんだ...
言わなかったけど そうだったんだ...
大切な親友と 大好きなみっちゃんの子だ
俺はちゃんと見守るよ
君たちの代わりに
しいちゃんの花嫁姿見て
しいちゃんの母親ぶりを見て
おばあちゃんぶりを見て
君たちがそうしたくても出来なかったこと
俺 ちゃんと見届けるよ
これがさ
有名人ならさ
映画か小説になるんだろうな
君たちはありふれた生活の中で
さりげなく生きて
さりげなく終わったんだな...
何気ない毎日が
本当はすごい宝なんだな...
目立たなくてもさ
何気ない存在が
一番大きなことなのかもしれないな...
なあ のぶよ
一杯やろうぜ!
君の好きな I.W.HARPERだ
俺に病名を教えてくれた夜以来だな
あれから俺も 一滴も飲んでなかったんだぜ
今日は飲もうや
しかし...
墓場で酔いつぶれるのもなんだな...
まあ いいか!
のぶ! 飲むぞ!!
みっちゃん 赦せよ!
誕生日には いつものたかにいちゃまでここにいるからさ
今日は飲ませてくれよな!
のぶ
君は最高の男だったよ
みっちゃん
君は最高の素敵な女性だったよ
俺は 君たちと過ごせたこと誇りに思うよ
さあ のぶ
思いっきり飲むぞ!!