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Talking with Experts 琉球料理伝承人 𩜙平名(のひな)千明氏

琉球薬草探究会では、薬草を日々の暮らしの中でより身近に感じてもらうため、各分野の専門家の方々に植物に関するエピソードをお聞きしていきます。

第3回目は、琉球料理伝承人 𩜙平名(のひな)千明さんです。

首里で「沖縄の味 石嶺食堂」 の女将さんとしてお料理を提供し、 国際中医薬膳師、野菜ソムリエと素晴らしい知識で、琉球料理伝承人として各地で料理教室を開催されているパワフルな千明さん。
持ち前の明るさにちょっぴり恥ずかしがりな気質と、美味しいお料理で周りの人々を幸せにしてくださっています。
幼少期を宮古島で過ごした千明さんは、大学生から京都での生活が始まります。その時に、宮古島の食生活との大きな違いに気づかれました。

宮古島では宴席や祝いの席などでオトーリと呼ばれるお酒の飲み方があります。
親は宴の始まりを告げる口上を述べ、杯にお酒を注ぎ、隣の人に手渡す。 杯を受けた人はそれを飲み干し、再び杯を親に返す。 親は新たな酒を注ぎ、また次の人へ。 こうして全員が一周したら、最後に親は御礼の口上をしてもう一杯飲み、次の親を指名する。
その昔、貴重な泡盛をみんなで均等に飲むために生まれたのが、オトーリの発祥だと言われています。
そんな楽しい宴会の前にいつも食べていたのは汁物。

ソーキ汁の上にはたっぷりのフーチバー

ヤギ汁、ソーキ汁、牛汁には、家の周りに生えている摘み草のフーチバー(ヨモギ)、イーチョーバー(ウイキョウ)、トゥナラ(アキノノゲシ)などがたっぷりと入っていました。子供ながらに、青い葉っぱが元気にしてくれいるのかな?と摘み草たっぷりの美味しい汁物を食べていたそうです。

宮古島の方言でトゥナラ

ところが、本州での汁物には、青味の薬草がほとんど入っていないことに驚きます。
本州と沖縄の食文化の違いを知り、食に対する興味が始まったそうです。

その後、沖縄へ戻り、結婚・出産後には、観光業に携わり、沖縄の風土や歴史を本格的に学ばれます。亜熱帯気候である沖縄、季節の理にかなった薬膳の要素が組み込まれている琉球料理へと興味が深まってゆきました。
そして、2004年には「沖縄の味 石嶺食堂」をオープン。

壺屋焼の工房を改装したお店

沖縄料理の美味しさ、伝統的な正しい琉球料理、長寿につながる健康食をもっと伝えたいとの想いで、たゆまぬ努力を続けておられます。
2022年には琉球料理伝承人の4期生として選出され、お店以外の場所でも活躍の場を増やしてゆかれます。

ハマウイの時に食べるフーチムチとサングヮチグヮーシーの料理教室

そんな千明さんが好きな薬草は、フーチバー(宮古島方言ヤツゥサ)。
子供の頃から家のそばに生えていていつも身近にあった薬草です。今も店の入り口で育てておられます。

店の入り口で育てているフーチバー。宮古島の方言ではヤツゥサ。


宴会の前に食べていたやぎ汁にたっぷりのフーチバーは、臭み消しの役割。
お料理にも使いやすいのでお店では、天ぷら、ジューシー、沖縄そばのトッピングやお茶などの定番から、さきイカ入りの天ぷらなどのオリジナルメニューも人気があるようです。

旧暦行事や薬草文化について伝承されていますか?の質問に、「実家や嫁ぎ先、受け継いでいる家柄などによって知識が偏っていると思う」とのこと。年中行事をするのは負担になるのではないかと、次世代に伝えることを遠慮している風潮も見受けられます。
台所に祀られる神様のヒヌカン(火の神様)は、女性の仕事。毎月一日と十五日に拝みを捧げウチャトゥ(お茶)やお酒を捧げた後に、小さいお茶碗に山盛りにもった白ウブク(白いご飯)を三膳、お供えするなどの決まり事があります。

厨房のヒヌカン


千明さんのお店のヒヌカンは、スタッフに手伝ってもらいながら、独自のルールで続けて行くことを大切にされています。

わずらわしいと思われがちな年中行事や琉球料理も、むつかしくなく、楽しくハッピーな気持ちなら続けていけるよ!と伝えたいと、各地で明るく楽しんで活動されています。

インタビューの時も、大爆笑をしながらの楽しい時間をご一緒させてもらいました。貴重なお話をありがとうございました。

沖縄の味 石嶺食堂
沖縄県那覇市首里石嶺町4-346-1
098-884-9977
ランチ 11:00~14:30
ディナー 18:00~23:00
木曜日夜 休み

【インタビュー実施日】2024年10月3日
【インタビュアー】須田ひとみ 藤野菜々恵
【場所】うるま市 うるマルシェ

支援 沖縄県、公益財団法人 沖縄県文化振興会
令和6年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業  
「琉球の薬草を楽しむ暮らし」推進事業


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