改行詩「静寂の色彩」

重心を詠歌に置いていながら、ときおり詩を書きたい気分になる。昨日即興で手書きしたものをいくらか推敲したこの一篇は、ここ一二か月の長期的な感情を反映していると推察する。ご笑覧ください。

静寂の色彩

昼食のだし巻き玉子の
思ってもみない美味しくなさに
ひと日はたやすく闌けてゆく
六月の雨はしたたかに降り
辟易している紫陽花の群れ
どこまでも曝れていき
どこまでも褪せていく
境界を風に晒して綻ぶ萼を
遠く金木犀の香りが
縁どる視ている慰めている
覚めそうで覚めない夢のあとさき
夕暮れのすぐそばで蜩が鳴いている
季節を分かたない声があり
限りない幻の掌
駒はただ手の意志のままに
雲は動く、歯車のように
遊離したたましいが
山の極みに裂けてゆく
その裂傷、いつかの霊障
まだ訪いのない夕日の残響を
絶巓はもう聴いている


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