マダム美仲・龍神の物語

本当に体験したお話と 創作したお話。

マダム美仲・龍神の物語

本当に体験したお話と 創作したお話。

最近の記事

龍神物語⑦:巫女と白龍 最終話

「白龍さま。結界はどのくらいの大きさになりますか?」 翌朝、タカや村人たちと別れ 巫女は白龍の背中に乗った。 白龍はぐんぐん高く昇り 巫女の村から遠く離れた上空にいた。 「巫女、下を見ろ。」 遙か下界は山々が小さく見えている。 あれほど大きいと思っていた土地が すべて見渡せるくらいだ。 ここは天に近い場所なのだろうか。 「五芒星は知っているだろう。」 「はい。」 巫女がまだ幼い頃から白龍の教えを受けて 祝詞や呪術に関する知識は得ていた。 「その五芒星を、巫女の村を

    • 龍神物語⑥:巫女と白龍

      白龍はそのまま都へと飛んでいった。 突然現われた白龍に都に住む人々は驚愕した。 「な、なんだ!龍が現われたぞ!」 「おそろしや・・・おそろしや!」 白龍は人々が慌てふためく中 体内から伊左衛門と惣兵衛の亡骸を吐き出した。 ひゃああああー! 吐き出された二人の亡骸をみて 人々は恐怖におののき、三々五々と逃げ出した。 白龍はそのまま飛び去って行った。 タカの村では村人たちが 亡くなった人たちを弔うために それぞれの家からゴザなどを持ち出し 亡骸をそこに集めた。 黒焦げに

      • 龍神物語⑤:巫女と白龍

        農作業をしていた村人は五助が必死に走ってくるのを見て何ごとかと思った。 「た、助けてくれ・・・! 刀を持った侍がこっちにやってくる! 殺される、殺される!」 その声を聞きつけて タカと巫女が屋敷から飛び出してきた。 「五助さん!どうしたんですか。 なんでここに・・・」 「タカ!巫女さま! 侍たちに騙された! すまねぇ・・・本当にすまねぇ・・・!!」 タカは五助が降りて来た山を見ると 刀を持った侍たちが降りてくるのが見えた。 「みんな、逃げろ!奥の山に逃げ込め!」

        • 龍神物語④:巫女と白龍

          五助たちが相州屋で手厚いもてなしを受けているころ 惣兵衛はとある屋敷へ行っていた。 都には代官などの屋敷が多々ある。 だがその台所はどこも苦しい。 相州屋は小間物問屋の他に裏で金貸しもしていた。 惣兵衛が訪れた屋敷も相州屋から金を借りているのだ。 「惣兵衛、こんな夜更けに何ごとだ。 まだ返済の期日には間があると思ったが・・・?」 この代官、名を塩口伊左衛門と言う。 伊左衛門は惣兵衛の顔を見ると 苦虫を潰したような表情を浮かべた。 「はは、いえいえ伊左衛門さま。 今日は取

          龍神物語③:巫女と白龍

          土砂降りの雨のなか、泥にまみれながら 生き残った村人たちは次々と外にやってきた。 みな大きく口を開け、雨水を全身で受け止めている。 その顔は雨と土と涙でぐしゃぐしゃになっていたが 喜びに満ちあふれているのは一目瞭然だった。 雨はしばらく降り続けるだろう。 その間に・・・と 巫女はタカの家に上がり 竈に火を熾して湯を沸かすようにした。 「私たちが持っている乾し飯は ここの人たち全てに行き渡る量はありません。 この乾し飯を鍋で煮てお粥にすれば みんなに食べ物が行き渡ります。

          龍神物語③:巫女と白龍

          龍神物語②:巫女と白龍

          「私も・・・じいさまの言葉に氣付かせてもらいました。」 童の後ろにいた母親は息子の肩にそっと手を乗せてつぶやいた。 「自分たちだけが幸せであれば 他の村がどうなっても関係ない。 恥ずかしいお話ですが、さっきまでそう思っておりました。 巫女さまも白龍さまも私たちのもんだ! よそに持って行かれるだなんて 悔しくてたまらない! そんな強欲なことを思っていたのです。 でももし、私たちの村がタカの村と同じような状況であったとき 同じ人間が助けてくれたなら こんなに心強く嬉しいことは

          龍神物語②:巫女と白龍

          龍神物語①:巫女と白龍

          天界には龍族たちが住む国がある。 その龍の国に一対の龍がいた。 二頭の龍は生れたときから 同じ時を過ごし、同じ感覚を共有し 同じソウルを持つ龍であった。 あるとき、片割れの龍がパートナーの龍にこう言った。 「私、人間というものになってみたいの。」 パートナーの龍は驚いてその龍に聞いた。 「なぜ人間になりたいのか? 人間になると龍の記憶が封じ込められ 不自由な肉体を持って過ごすことになるんだぞ。」 人間になりたいと言った片割れの龍は 「そうね。不自由な存在になる

          龍神物語①:巫女と白龍

          『龍と私と彼女の話 最終話』

          私たちは諏訪湖の観光を楽しむことにした。 昨日のオーガニックカフェも良かったけど 今日は遊覧船に乗ってみたりと 思う存分、諏訪湖の良さを満喫した。 夜。 食事も終わり またもや朱金と一緒に三人(?)で温泉に入り 身体をほぐしていた。 朱金は氣持ちよさそうに露天風呂で泳ぐ。 こらこら、温泉で泳いじゃいけないんですよ~。 なんて、龍は関係ないか(笑) 「はぁ~・・・・ いよいよ明日は東京へ帰るのね。」 私は湯の中に手足を伸ばしながら呟いた。 「なんだかあっという間

          『龍と私と彼女の話 最終話』

          『龍と私と彼女の話 その14』

          秋宮と春宮はそんなに離れていなかった。 こちらの社殿は秋宮よりも1年早く着工したのだけど 宮大工の意向がふんだんに取り入れられた社殿の作りは 秋宮と変わらず美しく荘厳で 見応えもバツグンだった。 「ここの注連縄も大きくて立派だね~!」 私は感嘆の声をもらした。 「秋宮もそうだけど、春宮も出雲大社の注連縄と 同じ作り方になってるらしいわよ」 さすが、沙織はそういう事情には詳しい。 そして私たちは弊拝殿で手を合わせた。 するとそこに美しい姿の女神さまが現われた。

          『龍と私と彼女の話 その14』

          『龍と私と彼女の話 その13』

          目が覚めるとまだ薄暗く日の出前の時間のようだった。 沙織はまだ寝ている。 どうしよう。 起こして一緒に温泉に入りにいこうか? と思ったけど そのまま寝かせておこう。 私はそっと部屋を出て まだ誰も入っていない露天風呂に ひとり優雅に浸っていた。 昨日のことが まるで夢のように感じられる。 いや、夢じゃないのはわかってるけど まさか私にこんなことが起きるなんて 一ヶ月前には想像もしていなかった。 湯の中から右手を出して伸ばしてみる。 私の右腕に朱金(あかがね)が いまも

          『龍と私と彼女の話 その13』

          『龍と私と彼女の話 その12』

          沙織の言葉はさらに続いた。 「もうあなたは、あなたの好きなように 生きていって欲しいのです。 水の神としてこの地に残るよりも あなたの生れた龍の国へ行く方が良いのではありませんか?」 龍は沙織の言葉の意味をくみ取ったようだ。 やがて 『私の命はもう尽きかけている。 もうこの地に留まる力すら残ってはいない。 龍の国へ帰ろう。 そしてもう一度、そのままの私で生きることにしよう。』 「そうしてください。 あなたは今までたくさんの人間のために働いてこられたのです。 もうただ

          『龍と私と彼女の話 その12』

          『龍と私と彼女の話 その11』

          本殿の裏に回ると 私たちは道の無い山を登り始めた。 落ち葉に足を取られて 滑って転びそうになりながらも なんとか登っている。 20分ほど登っただろうか。 結構上に来たと思ったけど 振り返ると最初の地点から そんなに離れてはいない。 「ふぅ~、ねぇ、まだ登るのかな」 私は日頃の運動不足が祟ってか 息を切らしながら、沙織に聞いた。 沙織は山の上を見ながら 「うーん。たぶんもうすぐだと思う。 ほらあそこ。 ちょっとだけ平らになってる場所があるでしょ。 あれじゃないかな。」

          『龍と私と彼女の話 その11』

          『龍と私と彼女の話 その10』

          スマホで調べてみると M神社はすぐに見つけられた。 しかもそんなに遠くない。 私たちは準備してあったお供え物を もう一度確認してM神社へ向った。 いよいよだわ。 いったい何が始まるんだろう。 ちょっと怖い氣もする. でも沙織とふたりならきっと上手く行く! 「そうは言うけどね」 沙織は私の氣合いに水を差すように言った。 「え?何?何か問題でもあるの?」 私は不安になって聞いてみた。 「これから行くM神社って 私も初めてのところだし どんな方がお祀りされているのか

          『龍と私と彼女の話 その10』

          『龍と私と彼女の話 その9』

          「お疲れ様でーす」 「お先に失礼しまーす」 会社の仕事を定時に終えて 私と沙織はそのまま真っ直ぐ自宅に戻り 2泊3日の旅の支度を整えて合流した。 いよいよ連休に入った。 明日から2泊3日の予定で 諏訪湖へ行くのだ。 いったいどんな出来事が起きるのか まったく想像も付かないけど きっと何とかなるんじゃないか。 そんな氣もしている。 なんたって、沙織が一緒にいるからね! 「ちょっとちょっと! 私に丸投げしないでよ。 今回の旅は、琴音 あんたが重要な役目をするんだからね!」

          『龍と私と彼女の話 その9』

          『龍と私の彼女の話 その8』

          「琴音、これからロープウェイに乗るわよ」 沙織はいったん駐車場へ戻り 車に荷物を置いて ロープウェイ乗り場へ向った。 たしかこの山の上には箱根元宮神社があるって言ってたっけ。 でもなんで? 「さっき、芦ノ湖で龍神さまがやってきて ちょっと頼まれごとをしたんだけど そのために上の神さまにお伺いしたいことがあるのよ」 そういえば九頭龍神社本宮へ向うとき 芦ノ湖の主が来たって言ってたよね。 いったいどんな用事だったの? と聞きたかったけど ロープウェイはタイミングよく 私た

          『龍と私の彼女の話 その8』

          『私と龍と彼女の話 その7』

          『よく来たな。 己の使命を受け入れたその覚悟。 しかと見届けたぞ』 私はどう答えていいかわからず ただ唖然と龍を見つめた。 あれはやっぱり夢じゃなかったんだ。 私、龍が視えるようになっちゃったんだ。 「琴音。 ここから先は私が話をしていくけど 分からないことがあったり質問したいことがあるときは 琴音から聞いてみたらいいよ」 「う、うん。お願い」 「龍さん。おいでくださりありがとうございます。 私は琴音の友人で沙織と申します。 まだ琴音は目覚めたばかりなので しばらくは

          『私と龍と彼女の話 その7』