見出し画像

身体教育と二重システム理論

前回、「やる気はどこから来るのか」という話の中で、二重システム理論について触れました。

二重システム理論を私なりに図解すると以下のようになります。

二つの判断力


System1=直感的判断力は無自覚に働き、System2=論理的判断力は自覚的に働きます。(どのようにして、二重システム理論が形成されてきたのかについては、元京都大学総長の山極先生の説を元にしたアニメーションを製作中ですので、出来たら、また投稿させていただきます)

さて、「人間は、何かを知覚すると、まず直感が働き、それを元に行動したり考えたりする」と前回お話ししました。

そして、直感即行動が9割以上で、直感を元に推論してから行動するのは1割以下らしいというお話もしました。
ダニエル・カーネマン博士は、「直感即行動でも9割方はうまくいくけれど、残りの1割は系統的なエラーを起こす」と言っています。

System2を使わなくても、ほとんど、上手くいくほど直感というものは優れているけれど、それだけでは同じ過ちを繰り返してしまう可能性も1割はあるよということなのでしょう。

直感的な食欲に任せて食べ続けていればダイエットはおぼつかないし、先入観に基づいた言動で失敗したという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

この系統的なエラーをなくすためには、System2を使うべきという結論に達するのは理解できます。

理性を働かせて、論理的に考えることはとても大事だと思います。だから論理的思考を身につけるために学校教育のカリキュラムが組まれているのも理解できます。

しかし、論理的な思考の訓練だけをしていれば、なんとかなるとも思えないのです

あらゆる知覚が直感のフィルターを通ってから推論の段階に運ばれるという事実を考えると、直感の質をあげていく必要があることは明らかです。

しかし、直感というのは自覚できない領域に形成された「感覚発動傾向」なので、「論理的にそう感じるのは間違っている。正しなさい」と言っても変わることはないと思うのです。

僕は若い頃、強度の鬱になってしまい、医学や薬、カウンセリングといったものに助けを求めました。

しかし、一切改善しませんでした。

僕は、運良く、身体教育の天才と呼ばれる師匠と出会うことができ、稽古を続けることで「鬱をやめる」ことに成功したのです。

入門したての頃、師匠に、「先生、どうやったら身体ってよくなるんですか?」と尋ねたことがあります。師匠はこう答えました。「簡単だ。自分の中に元気なところを見つけたらいい」
僕は食い下がりました。「先生、元気なところがあったらここにきていませんよ」というと、師匠は、「お前の心臓は止まってるのか?」と言います。「いえ、動いています」と言うと「だったら心臓は元気じゃないか」と言う。畳み掛けるように「もう、息してないのか?」と言ってくるので、「いえ、しています」と答えると、「じゃあ、肺も元気じゃないか」と言うのです。

ここまでなら、ポシティブシンキング

論理的に考えたら、心臓も肺も機能しているので、元気なところが身体の中に存在していると言うことになる。

しかし、それだけで鬱が解消しますかね?

「論理的に考えて、あなたは鬱をやめるべきだ」と言われて何とかなるなら、医者はいらんでしょう(笑)

僕が、30年以上、師匠の下で稽古を積んでいる理由は、「励ましてもらったから」という温かい記憶があるからではないのです。

師匠は言葉だけでなく、本当に身体の中に元気なところを見つける稽古法を僕が質問した直後に示してくれた

あの稽古の内容は忘れてしまいましたが、起こったことは一生忘れられないと思います

僕にとっては、身体というものに対する認識が一変した「大事件」でした。

師匠のやっていることを自分なりに説明しようと、努力してきましたが、やっとそれが図解できるようになったのは、二重システム理論のことを知ってからです。

下の図をご覧ください。上の図を僕なりに考えて編集したものです。

二つの判断力と型


System1の領域にも、「自覚できる領域」と「自覚できない領域」があると思います。そして各種のバイアスも「感覚発動傾向」の一部として働いている。

この「感覚発動傾向」を変容させるために、「論理」と「自覚できる感覚」を連動させるために編み出されたのが「型」であり、型を運用するのが「技」であり、技の体系が「術」であり、術が哲学化すると「道」になるのではという仮説が生まれたのです。

言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの連動。
自覚できる感覚の法則を論理的な思考を使って見出す。

こういうアプローチを続けることで、僕は鬱をやめることが出来たのだと思います。

「System2」と「自覚できる感覚」を連動させていくためには、論理的な思考能力を鍛えるだけでは、だめで、直感の質を高める「身体教育」が重要になってくると考えます。

これに関しては、少しずつ書いていきたいと思います。

あくまでも経験からきた私見ですが。ずっと私見しか書かないと思いますが(笑)

お付き合いいただける方は、引き続き愛でよろしくお願いします。


いいなと思ったら応援しよう!