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妖怪の棲む部屋

朝、米を炊こうと思ったら、いつも米びつのそばに置いてある1合軽量カップが見当たらない。そんな変なところに持っていくはずがないのに。あちこち探したけれど結局見つけられず、仕方なく湯のみ茶碗で目分量で計って米を炊いた。きっとキッチン周りの小物を隠す妖怪の仕業だ。

我が家には妖怪がたくさん棲んでいる。よくいるのは『靴下片一方隠し』だ。脱いだ靴下、洗濯して干しておいた靴下、何故か片一方だけがなくなってしまう怪奇現象。それは大抵、靴下片一方隠しの仕業だ。靴下片一方隠しは年老いてしわくちゃの老人の顔をした子どものような見た目で、僕が脱いだ靴下の片一方だけをどこかに隠してしまう、いたずら好きの妖怪だ。目を閉じ、耳を塞いで、「また片一方がなくなった」と3回唱えると、どこからともなく片一方の靴下が返ってくることもあるが、靴下片一方隠しが特に気に入った靴下は食べてしまってそのままなくなってしまうこともある。

仕事帰りに買おうと思っていた日用品をつい買い忘れてしまう、これも妖怪『ものわすれ』の仕業だ。替えのシャンプーやボディソープ、トイレットペーパー、ゴミ袋……。ストックを切らしてしまって帰りに買って帰らなきゃと思うものほど、ポコっと忘れてしまう。最寄り駅に着くまではちゃんと覚えていたはずなのに!妖怪ものわすれはそんな家主のところに飛んできて、頭をひとつポコンと叩く。すると買わなきゃいけない日用品のことだけ綺麗さっぱり忘れてしまうのだ。

妖怪『恋煩い』もよく出没する。ひとり部屋に帰ってきて、ベッドに入って眠ろうとすると、好きな人のことを想ってなかなか眠れない夜がある。あれが恋煩いの仕業だ。恋煩いは白い狐の面を被った妖怪で、目を閉じて眠ろうとする僕の頭の上に現れてはぐるぐると舞を舞う。恋煩いが舞を舞っている間は好きな人のことを想って悶々としてしまうのだ。恋煩いを追い払おうとしても、目を閉じている時にしか現れない恋煩いを追い払うのはとても難しい。こうして眠れぬ夜が増えてゆくのだ。

靴下片一方隠し、ものわすれ、恋煩い、そしてキッチン小物隠し小僧。たくさんの妖怪と楽しく暮らせるアパートは西武新宿線某駅徒歩7分です。ぜひ遊びに来てください。

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うえぽん
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