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おいしそうな月
「月が綺麗ですね」と僕は言った。「おいしそうだね」と君は言う。2人並んで夜を歩きながら、月の食べ方を考えた。
大きなおせんべいを食べるように、両手で持ってパキリとかじる。バリバリと音を立てて月を噛み砕いて飲み込む。まあるい月はかじる場所によって色んな味がする。こっちは甘いよ、こっちはしょっぱいね。2人であちこち食べ比べながら食べるのはとても楽しそうだ。
大きなおまんじゅうを食べるように、半分に割って分け合って食べる。ぎっしりとこしあんが詰まった薄皮の月。551の豚まんみたいに厚い皮に包まれた月もおいしそうだ。ほくほくと立ちのぼる湯気で遠くの星がゆらゆらと霞む。2人でハフハフ言いながら頬を膨らませて食べよう。
月と言えばうさぎの餅つき。月そのものが大きなお餅なのかもしれない。びよーんと伸ばしてちぎって食べる。うさぎたちも一緒だ。ふかふかのおいしいお餅を食べてご機嫌になったうさぎたちはやんややんやと舞い踊る。手拍子を打ってリズムに合わせて眺めるのもいいが、こうなったら一緒に踊ってしまおう。「楽しいね」と僕が言ったら、「死んでもいいわ」と君は言った。おやまあ、ここでそう返してくれるのね。2人手を繋いで月と踊る。楽しい夜はまだ始まったばかりだ。
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