秋はなんでもこい

朝外に出た時の空気が明らかに変わったなと思った。秋の空気。季節は恋のように唐突に終わり、新しい季節は恋のように突然やってくる。

今年の夏は灼けるように暑かった。暑くて苦しくてつらくて、でも心は浮ついてウキウキと出かけたくなる、それはまるで恋のようだった。僕は秋が好きだ。秋は恋人と過ごす時間のように穏やかで過ごしやすくて、秋は終わりかけの恋のようにアンニュイで物悲しく、時々台風がやってきて恋のように世界をかき回してゆく。僕は秋が好きだ。まるで恋人と会う日のように秋を待ち遠しく思っていたので嬉しい。

秋と言えば食欲の秋だ。好きな人と一緒にご飯を食べに行きたい。秋と言えば芸術の秋だ。好きな人と一緒に映画館や美術館に行きたい。秋と言えばスポーツの秋だ。好きな人と一緒にスポーツ観戦に行ったり、好きな人と共にスポーツで汗を流したい(性的な意味で)。秋の日は釣瓶落としだ。好きな人と一緒に釣瓶を落としたい。女心と秋の空なんて言葉もある。好きな人の女心が秋の空のように急激に曇ってしまう前にデートの約束を取り付けたい。

朝外に出た時の空気が明らかに変わったなと思った。それはまるで初めて好きな人と結ばれた日の翌朝のように晴れやかで清々しい朝の空気だった。僕は秋が好きだ。秋の空気に触れると、なんでもこい！という気持ちになる。いい秋になるように、まずは今日も一日頑張ろう。