あなたのいない世界

とても愛していた人だった。あなたのいない世界なんて考えられなかった。あなたの考え方や生き方に強く影響を受けた。尊敬していた。あなたが私の全てだったとまで言うと少し大袈裟なのかもしれないが、そう言ってもいいくらいにとても大きな存在だった。

あなたから離れて半年になる。私は驚くほど普通に、あなたのいない日々を過ごしている。美味しくごはんを食べて、友達と談笑し、テレビを見て笑ったり本を読んで泣いたりして過ごし、夜はよく眠った。あなたがいた頃には考えることさえ出来なかった、あなたのいない世界。それはただあなたがいないだけで、拍子抜けするほどに何も変わらない世界だった。

私はあなたではない人たちの考え方や生き方に影響を受け、あなたではない尊敬する人たちと共に時間を過ごすようになった。あなたではない愛する人だって出来た。いつかあなたと見た景色。とても綺麗だったなと思う。いつかあなたと語った未来。とても素敵だったなと思う。いつかあなたと笑った時間。とても尊い時間だったなと思う。でもあなたのいない世界もそう悪くない。それはとても寂しいことだけれど、同時にそれはとても素敵なことだ。

とても愛していた人だった。あなたのいない世界なんて考えられなかった。でも今、私の世界にあなたはいない。あなたはあなたの世界で元気にやっていますか？あなたはあなたの世界で笑っていますか？あなたはあなたの世界で、いつか私と見た景色を思い出して懐かしく思うことはありますか？そうであってくれたら嬉しいなと私は思います。でもそうじゃないとしても、それは私にはもう関係のないあなたの世界の話。私はあなたのいない世界を生きる。あなたはあなたの世界を生きる。それだけのことなのだと思います。