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ヒポグリフ考

昨日はコカトリスの話を書いたが、続けて幻想種(想像上の生物)について書いてみることにしよう。

グリフォンという幻想種がいる。鷲(或いは鷹)の上半身と翼を持ち、下半身は獅子という生物だ。空を飛び、馬を襲って食うとされるが、これは「順番が逆」だという説が僕は好きだ。古い時代、隊商を組んで旅をする一団、荷物を背負い人を乗せ馬車を引く馬は貴重な労働力であり財産である。しかし馬は時として逃げてしまうことがある。馬を逃がしてしまった世話係は、どうして馬を逃がしたんだと叱責されるだろうことは容易に想像がつく。「突然怪物が現れて、それに驚いた馬が逃げてしまったんです」だなんて言い逃れをすることもあっただろう。それでも馬を探そうとする一隊は、崖の下で無惨な姿となった馬の死体を見つける。鉤爪に裂かれ、クチバシでついばまれた痕がある馬の死体。これは爪とクチバシがある怪物の仕業に違いない、あの谷には爪とクチバシを持つ怪物が出て馬を襲って食うらしいぞ、それは伝説のグリフォンなんじゃないか……と、言わば伝言ゲームのようになってグリフォンという存在が具体化されていったという説である。どうしてグリフォンは馬を襲うのだろう?という考察から、グリフォンは天界では神の乗る馬車を引いていて、だから同じように馬車を引く役目を任された馬をライバル視しているのだろうなんて話もある。僕はこういう話が大好きだ。

さて、ここで表題のヒポグリフという幻想種である。ヒポグリフというのは、グリフォンと馬のハーフだ。グリフォンと同じく上半身は鷲或いは鷹、下半身は馬となっている。グリフォンは馬を襲って食うはずなのにグリフォンと馬のハーフ?と思うかもしれない。そう、ヒポグリフは元々、「有り得ないことの例え」として生まれた、想像上の生物以前の机上の空論の生物だったのだ。例えば僕が、「グラビアアイドルと結婚したいんだよねー」なんてことを言ったとする。するとそれを聞いた友人は、「そんなグリフォンと馬のハーフが生まれるようなことがあるかよ」と言って笑うのだ。これはグリフォンが馬を襲って食う生物であることが周知の事実である前提の、機知に富んだ例えツッコミなのである。やがてこの例えツッコミは一世を風靡し、みんながこぞって使うようになる。さま~ず三村さんの「○○かよ!」やフットボールアワー後藤さんの「高低差ありすぎて耳キーンなるわ」のようなものだ。そうこうしているうちに、「グリフォンと馬のハーフ」は独り歩きをするようになり、もし本当にそんなのがいるとしたら名前は何だ?どういう特徴をしているんだ?と文字通り尾ひれがついていく。更に年月を重ねるうちに、「有り得ないことの例え」だったはずの本来の意味は廃れて、尾ひれがついて具体化されたヒポグリフが残る。そんな変遷を経て生まれたのがヒポグリフなのである。

ドラゴン、コカトリス、妖精、河童、鬼、ネッシーやグレイに至るまで、古今東西問わず様々な幻想種は存在するが、大抵元ネタになる何かしらの現象や事象があるものだ。中にはヒポグリフのようにヘンテコな経緯で生まれた生物もいる。少し調べてみるのも面白いかもしれませんね。

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うえぽん
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