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時の支配者
フランスの古いアニメ映画がAmazonプライムに追加されていたので観た。1982年の映画、『時の支配者』。日本では2001年に渋谷のシネアミューズで公開されていて、その時に映画館で観て以来、実に23年ぶりの鑑賞となった。
同じ映画を20数年越しにもう一度観る、というのはとても不思議な行為だ。様々な経験を経て、価値観や人生哲学、映画の好みだって変わるものだ。20数年前の自分はもはや自分であって自分ではないと言ってもいいだろう。しかし若き日に観てそれっきりだった映画の思い出は、当時の若き自分の感性で感じた時のまま止まっている。その映画をもう一度観るということ。それは昔の自分にもう一度会いに行く行為でもあり、昔の自分を殺しに行く行為でもある。奇しくもタイムパラドックスを描いた作品である『時の支配者』を観ながら、何となくそんなことを思った。
20数年の時を経て観た『時の支配者』は、思い出よりも面白かったところとそうでないところがあった。異星の生物や風景、ひと目で地球のそれとは異なるのだなと分かるユニークで美しい造形は記憶よりもずっと際立っていた。一方でストーリー展開はと言うと、所々で冗長に感じたりキャラクターの言動の動機が見えにくいなと感じるところもあった。物語の核心となる時の支配者たちの登場も唐突だったように感じた。それでもラストはやっぱり涙が出た。20歳の自分がこの映画で感じた感動は、20数年の時を経た今の自分の心にも届く感動だった。それはまるで過去の自分が許されたような感覚で、それから20数年重ねてきた時間が肯定されるような、そんな不思議な感動だった。
思えばあの頃、人生で一番映画を観ていた時期だった。あの頃に出会った映画たちは、今の自分の人格形成に大きな影響を与えている。そんな映画たちにもう一度会いに行くのも悪くないかもしれない。あの頃感じた綺麗な思い出のままで残しておきたい、そんな映画もあるけれど。
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