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橋のこちら側あちら側⑤

橋を飛び降りた瞬間、ぶちっという音とともに、巨大な怪獣の一部から解放されたように思えた。橋の下では巨大な怪獣のぎっーというおぞましい声も聞こえずらい。そして橋のこちら側に向かって何とか泳ぎ始めることができた。急いで泳いだ。途中から何ものからも解放されていき、身体が軽くなってきた。橋のこちら側の岸に到着しそうなときには、一人で自分を曝け出して本質で居られる世界、そしてそれが許容される世界に戻ってきたように感じた。岸から橋の上に上がる。橋の上には誰か居るようだが、誰も助けには来ない。ここでは何もかもが独立していて、単独で光輝いているものに満ち溢れていた。誰も干渉しない世界だ。どこか寂し気で孤独。そしてなんだか自分と他のものとの境界線が曖昧であることに気づいた。

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