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今さらだけど、日本のものづくりの技術の強みって?
日本のものづくりのブランドが凋落してかなり経ちます。今は国としてというより技術を持っている企業が必要とされている、という感覚です。しかし敢えて「日本企業に共通と言えそうな強み」を考えてみました。
1.強みの誤解:「日本人は勤勉だからいいものを作る」は間違い
この誤解については、
①そもそも勤勉か
②勤勉だといいものができるのか
の2つのことを考える必要があります。
「①そもそも勤勉か」についてですが、まず勤勉かそうでないかで言うと、勤勉だけどそこまでではない、という気がします。発展途上国のブルーカラーと比べて勤勉と言いたいのでしょうけど、海外の人、特に優秀なホワイトカラーの方は、とにかく働きますね。クラスタを分けた統計がないので仮説にはなりますが。
日本人は怒られたり嫌われたくないから働く、という感覚という仮説を私は持ってます。村八分と言う言葉がありますが、他国から攻められることなく自然災害と戦って暮らしてきた民族なので、自分の村(職場)でのポジションを気にする結果、そこそこ真面目になるのではないでしょうか。
余談ですが、江戸時代の武士は働かなかったですし、明治初期の工場の欠勤率21%と書いている当時の外国人著者の本もあります。DNAで勤勉ということは少なくてもなさそうです。
「②勤勉だといいものができるか」は、勤勉の方がいいものはできるけど必須条件ではない、と考えます。私たちが日常使っているものの大半は海外で生産されています。特に問題ないことが多いですよね。多少壊れやすいという話は聞きますが、買うのを控えるレベルでしょうか。細かなこだわりが使い手の付加価値に表れることはあります。しかしちゃんとしたマネジメントシステムがあれば、要求品質を満たすものはできます。
2.下請け文化が強みに繋がる
下請け文化は弱みにもなりますが強みに繋がることもあります。日本のものづくりでは、ここの強みがものすごく重要なポイントです。
下請けは元請けと付き合いが長く、元請けのために契約外のことも普通にやります。しかも近年は元請けの技術力が低下したことにより、下請けが元請けの技術の肩代わりをすることが多くなっています。つまり良い意味で捉えると、
・上流工程の技術もわかり、技術開発を部分的には元請けと共にやってきた
・技術提案や仕様変更、生産変更などフレキシブルに対応してきた
と言えると思います。要は、契約で決まったことしかしないのではなく、設計や工程をアレンジする「アレンジ能力」が鍛えられてきたのです。80年代のものづくり世界一の頃の企業が残っていて、かつアレンジ能力が高い日本のものづくりが、海外の新製品開発には非常に大きな強みになると思います。
ただ、当然ながら強みと言えるか、強みとして活かせるかは企業努力によります。強みに変えられるよう戦略を立てて実行しなければ瞬時に陳腐化するでしょう。
※アレンジ能力は、東京理科大学大学院イノベーション研究科専任教員 岸本太一先生が日本製造業の強みとして提唱している。
3.なぜ下請け文化がある?
最後に、少し下請け文化ができた背景に触れます。
元々は争いの少ない村社会から、狭い関係が落ち着く文化だったことが前提としてあると考えます。
さらに経済が右肩上がりで作れば売れる時代は、大企業の都合で下請けに発注し続けました。その理由は以下の3つです。
①元請けの発注先変更の手間を考えると、相互理解がある企業に発注するのは合理的だから
②元請けにとって、下請けの方が給料が安いので自分たちが作るより安く作ることができるから
③下請けにとって、受注が見込めると設備投資がしやすいから
4.まとめ
アレンジ能力を強みと認識し、自社の技術力を磨きつつアレンジ能力を活かして「設計開発プロセス」「試作品製作」に入り込むことが重要です。下請けを脱却して、しかも今後は内需が見込めないことから海外に進出するのは、並大抵ではないと思います。下請けだったことを強みに変えましょう。
今回は下請け文化を背景から考えてみました。いずれ、強みの源泉は江戸時代にあり、という仮説を書きたいと思います。